不確定未来図
「うーん、特にすることないね」
誘っといてこの言い様だ。とんでもねぇと思うのは俺が陰キャだからだろうか。
常に相手がどう思ってるか考えてしまうからだろうか。
どっちにしろ優が特に行きたい場所がないようなら、せっかくだしあそこに寄りたい。
「なら、本屋よっていいか?」
「欲しい漫画でもあるの?」
「漫画より、小説」
「文化人だ!」
酷く驚かれた。優の中の男のの子像がだんだん分かってきた。きっと、わんぱくで、小説なんか読まないで漫画ばっかで、部屋が汚いとかそんな感じじゃないかな。
それはいいとして、失礼な物言いを言われた気がする。
「なんだよそれ、優だって本くらい読むだろ?」
「…………」
ムッとなり、優に文句を言えば、優は押し黙ってしまった。
平積みされた本を手に取ってペラペラ捲ってそっと本を置いた。
目を固くつぶってしまった。
「読書始めてみない?」
「うーん、俺ってさすぐ飽きちゃうんだよ。漫画だって途中で読むの辞めることの方が多いし、習い事はなんか賞とか取れたら満足してやめちゃうわけ」
漫画が途中で飽きるってあるんだな。
なんか別の理由ありそうに感じるな。
王子様キャラがずっと続いてたっぽいし、そういうイメージの押しつけが障害になってんのかね。
なんにしろ、
「サラッとすごいこと言ったな。賞なんて取れない人の方が多いだろうに」
「ま、才能ってとこかな」
キラッと笑ってみせるけど様になっててもう発光してんのかってくらい眩しい。
ほら見ろ、通りがかった女子高生倒れたぞ。
「磨けば光るのに、もったない。で、今はなんかやってんの?」
才能があるのにやらないのも勿体無いと思うが、まあ、他人だし関係ないことか。
なんでも出来るなら部活とか入るのかと思って聞いてみる。
「今は特にかなー」
あっさりした返答だった。
「高校入ったんだし、なんかしたらいいのに。部活とかは?」
「やんなーい。え、野薔薇姫は入るの?」
頭の後ろに手を組んで面倒さそうに言う。
その後にじーっと見てくる。俺はバツが悪そうに、そっぽを向きながらボソッと言う。
「俺運動できないんだよね」
「そん感じはしてた」
卑下を肯定されると余計惨めになるだろうが。
悪意がないのが分かるのが余計に来る。
真面目に受け取ると挫けそうだからふざけて流すことにする。
「なんだとぉ!……まあ、それは置いといてどうスっかなー」
「追追だな」
「だなー」