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作者: たいうつ

鼻を衝く倦怠感。

収まらない頭痛。

足が折れたような絶望。

理由もなくあふれる涙を乗せて。

今日も少年は歪んでいた。



彼は最近何もかもうまくいかない。

学業では目先の足し算さえ答えられないのだ。

だから彼は泣いている。



彼は真っすぐ歩けない。

心が歪んでいるのだ。

歪まされているのだ。

ただ進みたいだけなのに。

まるで何かが彼を引き留めるように。

義務感の強い彼はそんな邪魔者にさえ心を開く。

そして気づいたときには泣いている。



とても痛いのだった。

心もそうなのだが、体が。

ふとした瞬間に胃が潰れそうになり激しい吐き気に襲われる。

背中をさすってくれる者は、もちろんいない。

頭も痛かった。

厄介な人間の相手をすると、それは周りにうんじゅうといるのだが。

いつも後頭部と、こめかみに、どんよりとした痛みが彼を困らせる。



彼はいつも眠かった。

辛くても戦うことを義務だと、信じて疑わない彼はどうしても身を削ることをやめようとしない。

泣いているのは、いつも風呂場か布団の中だった。



いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ



彼は自分が嫌いだった。

どうしても嫌いだった。

ボロボロになるまで頑張っても何も変えることも叶わない自分を恨む。

こんなに辛いものはないと、悲観をやめない。



何十人と友人がいるが、頼れる友人はいなかった。

大人とも話ができなかった。

怖かったのだ。

自分は上でなくてはいけないと。

自分で解決しなくては迷惑だと。

もはやつらいのは自業自得だと。

また、頭が痛い。



少年は死にたくなかった。

こんなになっても、生きたかった。

心の底から死にたいと叫んでも。

内心、目の前に刃があれば、自分を殺す度胸は無いと。

だから夢を見たかった。



誰もが幸せな夢を。

自分が、自分の心に丸い石のない世界を。

つらみのない、夢の世界に行きたかった。

また、殴られた後のようなふらつきが彼を襲う。



彼は夢を見たのかもしれない。


空に浮かぶ冷たい月の元。

ただ時計の音だけが響く狭い部屋の中。

自分の体の温度変化を感じながら。

ただひっそり、苦しみもなく死に絶える、幸せな夢を。


周りの人間のように。

自愛を尽くし、利益に生きる。

好きなことをし、好きなものを食べ、すべてが自由な。

痛みのない、明るい空の、幸せな夢を。


誰よりも秀でて。

誰よりも強く。

誰よりも優しい。

完璧な人間として。

周りの憧れの中生きることのできる、幸せな夢を。



どの夢も、彼の救いにはならなかった。

今日も彼は、泣いている。


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