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何気ない日常が、ふとした瞬間から非日常に変わる事もある。
例えば、余所見をしていて工事中のマンホールに落ちちゃった時、とか。
気付いた時には真っ逆さま。
私は、悲鳴を上げる間もなく落下した。
「あれ、あんまり痛くない?」
痛みに備えて固く瞑っていた目を、そろりそろりと開けてみる。
目の前には、端正な顔を不機嫌そうに歪める男の人が居た。
と言うより、その彼の上に落ちたみたい。
「重い」
「ひええ、ごめんなさい! 直ぐに退きます」
慌てて飛び退くと、その男性は服についていた葉っぱを叩いて立ち上がった。
マンホールに落ちたのに、どうして森の中に居るのだろうか。
私のすぐ後ろには、赤い鳥居が一つ建っている。
何だか、神々しい雰囲気を感じる場所だ。
「お前、名は」
男の人は眼帯をしていない目でこちらをじっと見つめ、問い掛けてくる。
無言の圧力に耐え切れず、私は恐る恐る名前を告げた。
「天音彩葉」
「そうか、俺は伊達政宗だ」
「…………え?」
さらっと聞き流すところだったけど、伊達政宗ってあの独眼竜の伊達政宗だよね?
こんなに男前だったんだ……、って違う違う!