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20 第8話 レインズへ 後編

 ビルとビルの間の川と化した道をさらに進むこと6時間。やっと視界の奥にソニアの言っていた"一箇所だけ晴れ間が差している場所"らしき光が見えはじめた。

 大雨のせいでフロントガラス越しにはぼやけて見えるが、周囲の薄暗さの中で目立つほど嘘のように明るく光っている。もう30分ほど行くと、その晴れ間の中へと入ることができた。


 スカイの水陸両用車のタイヤが久しぶりに土の感触に晒される。周囲との境目の土は当然ながらぬかるんでいて車はズブっと汚らしい音を立て陸地に乗り上げた。

 なかなかの田舎だ。道路も舗装されていない。車は乾いた砂利道に泥の跡を二筋引きながら進んでいく。


 これだけ周囲を雨雲に囲まれているというのに不思議と雨の匂いがしない。それどころか腰の高さくらいまでの草木に囲まれて空気が澄んでいた。まるでスイッチがオフからオンに切り替わったように全ての景色が真逆になった。

 だだ、いくら田舎でももう少し行けば海という位置。流石に山は一つもない。稲の畑のようにほっそりした弱々しい草本ばかりが生い茂って風に揺れて、遠くのほうに少しだけ森が見えている、平坦で長閑な場所だった。


「この辺りなのか。ってか、レインズって寂しい国だな。ほとんど横断したのに人っ子ひとりいなかったし、この晴れ間の中でも同じなんだな。あの雨だし、あっち側は仕方ないにせよ、晴れてても人がいないのか」


 ようやくすっきり見えるようになった窓の外を眺めながら呟いた。

 スカイが応える。


「山にこもって修行とかありきたりだけど、山ではないにせよそんな感じのガチさだな。それにしてもこの辺はホントに師匠しか住んでないのか。師匠の屋敷しか無いから建物があったらそれで間違いないってソニアから聞いたけど、どこだ? 草ばっかじゃねぇか」

「あ、あれじゃない?」


 11時の方角をフィジーが指差した。確かに、もう少し行ったところに建物らしき陰が見える。この距離からでも屋敷のように大きな建物だというのが見てとれた。

 じゃりじゃりと砂利道に音を立てて近づいていってみれば、このヨーロッパ地方には珍しく日本の建築物のように何故か木造の屋敷が構えられていた。

 砂利の音があれだけうるさかったのだ。こちらに気づいた、子供のように背の低い、ハゲた頭で白いカイゼル髭を蓄えた優しそうな老師がサンダルを履いてよろよろ危なっかしく出てくるところが見えた。

 ギアスたちもすぐに挨拶しようと車を適当なところで停めて降りる。


「おお、そのオレンジのがギアスじゃの。話はソニアから聞いておるぞ」


 近くでみればなお優しそう。恵比寿様を痩せた小人にしたような風貌だ。


「ああ、どうもこんにちは。お世話になります。すいません、わざわざ出迎えていただいて」

「いやいや、堅苦しい挨拶はいいんじゃ。わしがここの主でこれからお主の面倒をみる師範の一人、フラウズじゃ。よろしゅうのう」


 口ぶりからして師範は数人いるらしい。流石に元デウマキ兵であるギアスの修行に一人で付き合うということはなかったようだ。

 フラウズはスカイとフィジーとも軽く挨拶を交わし、屋敷に上げてくれた。

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