音
巌の詰まった野原を抜けた。
殺風景に荒れた大地は目に触れるあらゆるもののなかで最も、少年の記憶に残った。少年は風景に妙な印象を捉えた。
はるか遠くに見える紫翠にくらべれば名勝や偉観には似つかぬものなのだが少年の頭にはこの情景が色濃く刻まれた。
ふと少年は振り返った。からからからと愉快な音がいくつも聞こえた。
気がつくと、何本もの風車が風に身を委ね、勇ましく立っていた。
くるくる回る風車は時間の流れを表すように、時折、緩みを含ませながらも快調にいく。
少年は自分がちっぽけな存在であると気がついた。
どうしてこれほどまでその考えにたどり着くまで、時間を要したのかはわからないが、そう思うとなぜか切なくなった。
孤独感には慣れたつもりではいたが、無性にひとが恋しくなった。
「ただ美しいだけなのか。この世界は。」
「俺はこの世界に必要なのか?」
「俺の存在価値は?ここにいる理由は?」
呟く必要はなかったが、誰もいない現実に目を伏せれない自分が醜く、また馬鹿に見えた。
少年は野原に転がった。
草の匂いがする。
少年は目を閉じた。それが少年の出来る精一杯の現実逃避だった。
風車の音も次第に小さくなっていった。
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