プロローグ4 日記は無理でした
1月 水の3日
【日記】
今日は魔法陣学の初日であった。
魔方陣の基礎について学ぶのである。やはりというかなんというかド基礎から講義が始まった。
魔方陣には必ず起動式及び接続式と手続式があること。そこからだ。
接続式では神への接続を行う。
火を扱うのが得意な神、水を扱うのが得意な神、様々だ。得意といってもその精度や威力は手続式にある程度は記述されるわけだから要するにコストである。
魔法を使用するには神への接続が必須であるので、その様々な神の中から一つを選択しなければいけない。
起動式に魔力を満たすことで魔方陣が実行される。
ただし事前準備が必要だ。魔力経路に魔力を流しておかなければならない。きちんと目視しておかないと、必要な手続式が実行されず暴発する。
魔方陣の起動
起動式に注入された魔力が接続式に流れ、接続される。この際起動式に注入された魔力量に対して、神の要求コストが多かった場合、全魔力は霧散し魔方陣は消滅する。
余った魔力はそのまま起動式に残り、魔力経路を満たされた魔力が各手続式を通過しながら手続を取り込んでいく。
手続コストに耐えられない魔力量では魔力経路を流れないため、複雑な手続式を描いた場合、経路はそれなりに広くなければいけない。
経路が狭い箇所はより強く魔力が流れ。経路が広い箇所は弱く魔力が流れる。
その経路を描く線の太さが魔力に耐えきれない細さだった場合、そこで魔力は溢れ出し暴発する。
最後に再度接続式に魔力は流れ込み、余った魔力と一緒に神へ届けられる。その対価として魔法が発現する。
いやぁ書いて覚えなきゃ無理だ。
っていうかそんなに暴発すんのかい。
市販の符は暴発しないように最新の注意を持って販売されているらしい。
魔力経路は一定の太さを保ち、全魔力経路に魔力が満たされた時に魔方陣が光るように処理してあるようだ。その魔方陣を光らせる処理も簡易な魔法らしいのだがよくわからなかった。
その後、絶対に暴発しない程度魔力を起動式に注入することで魔法が発動する。コスト的にはとてもレスが多いが、暴発はしないらしい。
こんな仕組みを知らなくても経路に魔力さえ満たした状態で、起動式に魔力を注入すれば魔法は発動する。
魔法などという便利なものを作りたもうた神はなんと素晴らしいのだろう。魔方陣を行使できる魔力があってよかったとつくづく思う。
魔方陣学とは
要するに魔方陣学とは暴発しない魔方陣を学ぶ学問である。
それは一般人が使用するような、誰でも使用できる魔方陣から、天才魔法使いのみが起動できる超絶魔方陣まで様々だ。
であるからして専属魔方陣学者というものがいるらしい。魔法使いと共に行動し、その癖にあったオーダーメイド魔方陣を描画するというのだ。
ただし、そんな魔法使いは稀であるため、ほとんどは研究職か設計職、もしくは記述者となる。
というか、記述者は理論を知っている必要があるのか甚だ疑問だ。書くだけだもんな。卒業後の進路として記述者にはならないぞ心に決めた。
設計者に必要なのは、デザインセンスと論理的思考である。どの手続きをどの順番で組み立てるのか、どうすれば省スペース、低コストな魔方陣となるのか、無駄な魔力経路を作らないためにはセンスがいるらしい。
センスでする仕事。かっこいいなぁ。
「芸術家っぽい。」
誰かがそう声を上げたときシークエル講師は苦笑いしていたのできっと何か裏の特徴というものがあるのだろう。
だって、市販されている神がかった魔方陣というものはたいていが研究者の名前で出ている。設計者という職業自体を私が知らなかったのもそれが所以である。結局設計者であっても、記述者の延長でしかないのかもしれない。
初日にして既に交差記述とか訳わからないの出てきてるけど見たことないぞ今まで。
というか今日はノートに書くことが多すぎてもう手が痛いのでここまでだ。毎日こんなにノート書かなきゃいけないの?
もう挫折しそうなんだけど……
明日の講義は……魔方陣学である。
【ノート】
魔方陣の記述方法
起動式
手続式
接続式
の3分類
どこから書き始めても構わない
3個の式は必ずそれぞれがつながっていなければならない。
起動式に注入された魔力は
・神への接続
・手続きの行使
の2つに使用される。
魔力経路に満たされている魔力は単純な情報として扱われる
起動式に魔力が満たされた瞬間
神への接続が開始
魔力量が足りない場合はその場で起動式、魔力経路内の魔力が霧散する。
神への接続が完了した場合
起動部に接合している箇所から手続式が読み込まれる
最後まで読み込みができると、組み立てられた魔法が再度接続式に投入され
起動式に残った魔力と共に神に供される
対価としての魔法が実行される
接続式
種々の神の中から一つ選択する
本来神は何百もいると言われているが
現在解析が進んでいる神はせいぜい十数柱
火、水、土、風、光、闇、空間、雷、鉱物生成が得意な神等々
通常火の魔方陣で使われている神が
水の魔方陣で使えないかというとそういうわけでは無い
ただ、コストが悪い、威力が低い、精度が悪い等
光の神
風の神
火の神
水の神
木の神
金の神
土の神
闇の神
雷の神
空の神
癒の神
守の神
剣の神
同じ魔法でも
手続式が超面倒くさい代わりにコストパフォーマンスが良い神とか
コスパ最悪だが超絶威力が出るとか様々
起動式の記述
最後に必要コストを投入する式の記述
ここに魔力を注入することで魔法が発動する。
魔力を流す際の経路について
多く流れるところは広く、少なくても良いところは狭く描くことで
使用魔力の軽減が見込めるが経路に流す際の魔力コントロールは難しくなる
カリッカリにチューニングすると経路魔力量は少なくて済むがその分コントロールが難しい
線を太くしておけば、幅が狭くてもOKだがスペースを取ってしまう
基本的には後ろに行くほど広さが必要となる。
魔力コントロールについて
全経路に魔力が満たされていない状態で発動箇所に必要魔力を注入してしまった場合、不完全発動する
多く流れる、強く流れる箇所の経路を構成する線が細い場合、決壊暴発する
全経路に魔力が満たさいに魔方陣全体を光らせる処理を入れておくのがトレンド
また、線の交差記述が確立されたため、
同じ処理を2回描かず、使いまわしをする記述法が最近注目されている
しかし、記述スペースの問題でそれほどメリットが無いとされている
市販されている符はすべての経路が同幅で描かれているため
使用は楽だが、魔力コスパは悪い
行使魔法の手続式を記述
単純な火球の魔法で言えば
火種の作成
-火力の設定
-現出地点の設定
-射出方向の設定
-移動距離の設定
等の設定を記述する
最後のコストとしての魔力はこの処理に充てられるのだが、
火力の設定を50として必要魔力が50
移動距離の設定を40として必要魔力が40だった場合
残存魔力を接続式に流し込んだ際、その魔力量が70しか無いと
火力50、移動距離20の火球が発現する
記述順番が逆だと
火力30、移動距離40の火球が発現する
起動式の魔力注入部のコスト計算は厳密に。
例えば途中で火球を曲げる場合には
火種作成時に
射出方向と移動距離を2つ記述する方法と
一度作成した火種に対して、射出方向と移動距離を変更する命令を追加記述する方法と
2種類の記述が可能
魔方陣を記述し、そこに魔力を通すことで魔法を行使することができる
魔力を通すのは2回、
魔力経路と呼ばれる、手続き同士を結ぶ経路に流すためと
魔法発動箇所に対する注入




