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魔物討伐!……と遠足準備




【7月 風の1の日】



 勇者探し、魔物駆逐に続いて、今度は討伐隊の募集だ。

ジャイニーや、イスト兄さんはさぞ忙しいことだろう。

ブラッドは、ふと幼馴染と次兄の顔を思い浮かべる。

そういえば、イスト兄さんは最近あまり家に帰ってきていないようだ。


 勇者が誕生してから、国として、まず行われたことは討伐隊の募集であった。

腕に覚えのある者は、王城で試験を受けられるらしい。

合格すれば、討伐隊に入隊だ。

なんと人数による足切りは無いらしい。

締切は定められているが、上限無く入隊が許される。

要するに期間内であれば、いつ行っても、何人でも、試験に通りさえすれば、入隊できるらしいのだ。



 ブラッドは、冒険者ギルドに向かっていた。

新しい依頼を受けるためだ。

パーティ募集の期限は8月末となっている。まだひと月以上ある。

であれば、経験を積んでから試験を受けたほうが合格の確率が上がるであろう。

ブラッドはそう考えた。


 

[生物に対して魔法を打ったことのない魔法使いだっていいじゃないか。

そういう、治癒士として活動している魔法使いだっている]

そう思っていたブラッドであったが、誰かとパーティ組むわけでない以上、自分が攻撃できなければいけないのでは?と思い直した。

しかしブラッドは戦闘経験もない。前述の通り生物に魔法を打ったこともない。

ここらで、討伐系の依頼くらい受けておくべきなのではないか?

というか、戦闘経験は必要だろう。そう考えたのだ。

兎にも角にも討伐依頼だ!とブラッドは冒険者ギルドに向かったのである。



 ※※※



 冒険者ギルドは一時の混沌とした状態は脱していたが、未だその熱気は続いており、隣の酒場に至ってはまだ陽が天頂にたどりつく前から満員御礼の様相である。

ギルドに入ったブラッドは、ギルド内に張り出されている依頼情報を確認する。

基本的に依頼はギルド内の掲示板に張り出されている。腕利きの冒険者の中には、はこうした依頼は受けず、直接ギルド職員の元で依頼を受けるものもいるが、ブラッドは間違っても腕利きでは無い。


 薬草採取E1、薬草採取C1、商人護衛E6、魔物討伐E4、魔物討伐D6 ……

依頼カテゴリの横にある記号はランクと人数の目安である。

Eランクの冒険者1人を含む4人パーティで達成できるレベルの難易度であれば「E4」と記されている。

ちなみに、ブラッドはこれまで2回薬草採取の依頼を受けているが、難易度はいずれも「E1」である。

魔物も、猛獣も何も出てこない薬草採取であった。


 その後、ブラッドは掲示板を隅々まで探したのだが、ソロで依頼を受けられるような討伐依頼は張り出されていなかった。

まぁ、大人がひとりで討伐できる猛獣であれば、それは依頼など出されないであろうし、当然と言えよう。

これはアセプトに相談してみるか……

ブラッドはアセプトの前に座っている冒険者がいなくなるのを少しだけ待ち、その前に座った。


「やぁ、アセプト。こんにちは」

「いらっしゃい。ブラッド。今日はどうしたの?」

いつもの営業スマイルでアセプトが応える。


「いやーそろそろ俺も討伐系の依頼を受けようと思ってさ。」

「なるほど、討伐系ね。そのひょろひょろの腕で猛獣と戦うつもり?」

「いや、これでも筋肉ついたんだぜ?見てよ」

悲しいくらい小さな力こぶをアセプトに見せる。


「無理でしょー。ご飯食べてるの?」

「食べてるさ!食べてるけど、ひと月やそこらでそうそう体格は変わらないよ」

「そうね、ひと月やそこらで人は猛獣を倒せるようにはならないのよ」

なるほど、まぁ、そうだろう。

だが、それは戦士などの近接戦闘者であればだ。


「俺は頭脳系だからね。力で猛獣を倒す必要なんてないのさ。どんな猛獣だって魔法で一撃だよ」


「魔法使い。それも駆け出しの魔法使いは、みんなそう言うわね」

「充填、起動中に守ってくれる者がいない魔法使いなんて、いい的よ。悪いことは言わないから仲間を探しなさい。」


「いや、だから俺は勇者パーティに入るんだから、どこかのパーティに入るわけにはいかないって」

「簡易パーティ組めばいいじゃない。そのためのパーティ募集よ?」

「……何故か入れて貰えない」

「何故かじゃないでしょ、痩せ過ぎだからでしょ。」

「くっ」


「わかった。もういい」

ブラッドはそう言い席を立つ。

「ちょっ ブラッドっ!」


「ありがとう。アセプト。心配してくれるのは嬉しいけど俺は自分の腕を試さなきゃいけない。そして、足りないようなら鍛えなきゃいけないんだ」

そう言いながら、ブラッドは出口へと歩き出す。


「だから、まずは」

体力作りと言ったアセプトだったがその声がブラッドに届くことは無かった。



 もちろん、ブラッドは諦めたわけでは無い。

ギルドには掲示板による依頼と、ギルドからの斡旋の他に、もうひとつ依頼の形態がある。

それは常時依頼だ。

これは依頼を受ける必要なく、成果物を提出することで報酬が支払われるというものだ。

例えば化膿止めや傷薬に使用する薬草の中でも足が早いものや、希少なものは常に報酬の対象になっている。

これまでは、こういった薬草採取くらいしかなかった常時依頼だが、最近は魔物駆逐系が増えているとのこと。


 完全に人間に害しか与えない魔物の中なんかの討伐依頼はこの対象になっている。

討伐の証として特定部位を持ち帰ることで、依頼達成となり報酬が支払われる。

掲示板による依頼なんかに比べると、報酬は少なめだが、いつでも稼げるため冒険者のいい小遣い稼ぎになっているらしい。

逆に言えば、魔物駆逐系のほとんどは小遣い稼ぎ程度の報酬しか貰えないものになっているとも言える。



 たまたま出会った魔物であっても、討伐し、その特定部位を持ち帰れば報酬が出るのである。

そして、イスタブルの外には魔物が闊歩している。

都市部の周りには強い魔物がいないことから、これは絶好の腕試しとなる!はずだ。


 緑鬼や犬鬼は集団で行動する、オオカミ系の元から集団行動していた魔物も同様。

集団に囲まれるのは危険すぎるので、単独行動かつ弱い魔物がいればいいのだが……

ウサギ系かな?一角兎と大兎とか。その辺ならやれそうな気がする。

蛇でもいいけど蛇はちょっと苦手だ。意外と早いし。

よし。明日行こう!

ブラッドは、そう心に決め家路へとついたのであった。



 ※※※



 帰宅したブラッドは、明日のための荷造りをしている。

まずは、先月買った冒険者セットを再確認する。

冒険者セットというのは、冒険者用に冒険に必要なものがまとめて売られている物である。

冒険者ギルドでも売っているし、道具屋でも売っている。

その中身は国によっても、店によっても異なるらしいが、大体

背負い袋、水袋、毛布、たいまつ、マッチ、ロープ10m、ナイフ、コップ、皿、寝袋、小型ハンマー、くさび、オイル、ランタン……等々である。


 ただ、ブラッドは魔法使いであり、冒険時には便利屋とも呼ばれる職業である。

持っていくものは、背負い袋、水袋、たいまつ、ロープ、ナイフ、コップ、皿、鍋、寝袋のみで他は魔法で何とかなる。

今回は平地を行く予定であるし、野営する気は無いので、

背負い袋、水袋(出発時に2割ほど入れる)、ロープ、ナイフ、と携帯食を2食分ほど持っていけば良いだろう。

ロープだけは必須らしい。アセプトが以前そう力説していたので、持っていくことにしている。くそ重いけど。



「よし!オーケー」

「これで明日は魔物討伐!兎系の魔物の肉は美味いらしいし!持って帰ってこれる分は持って帰ろう。」

「あ、じゃぁ大きめの皮袋も持っていこう。」

うきうきわくわくのブラッドはこうして明日の準備を終えると、明日に備え早々にベッドに潜りこんだのである。



続く



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