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#40.エンディング後に起きた大事件

「今日は? 一人で街にでも出て来るか?」

「え? 一緒にいられないの? 国王になったのに?」

「済まないが、昨日やっとこの王の間に引っ越したばかりでまだまだやることが残っている。暫く昼間は一人で過ごして貰うしかない」


 王になってもう一週間経つのに二ヶ月も待たせておいてまだ待たせるの? やっと寝室まで来たって言うのに王宮に入れただけでほったらかしだし、わたしをなんだと思ってるんだか。


「何の為に王宮に入れたの? 一緒に居られないなら学園の方が楽しかったのに」


 なんて嘘だけど。バカな同級生の相手とレベルの低い授業なんかもう飽き飽き。だから王宮に入れと言われて付いて来たけど、此処は此処で退屈なのよね。ラファエルが構ってくれないからお茶と散歩ぐらいしかやることがない。


「来週には婚約を発表する。そうすれば二人で何処に行っても咎め立てされることはない。それまでもう少し我慢してくれ」

「……分かった」


 エンディングまでは皆にちやほやされて最高だったのに現実の王妃って退屈なのね。アロイスは離脱気味だけどハイムルトはまだわたしを諦めていないみたいだし、逆ハーに戻りたいわ。婚約もしてないんだからハイムルトの所でも行こうかしら。


「まだ王宮の地理も把握していないだろう? 散歩がてらゆっくり見て回ると良い」

「普通そういうのは二人でやることじゃないの?」

「そう言われてもな。国王として地固めする必要がある今は些細な隙も見せるわけにはいかないんだ。理解してくれ」


 やっぱりちょっと変わった?

 エンディング前まではもっとわたしにベッタリで「離したくない」って感じがウザイぐらいだったのに今はなんか淡白。学園辞めて王宮に入るよう言って来た時は問答無用な感じだったから独占欲はあるみたいだけど、その時すら熱いモノは感じなかった。もしかして、ゲームが終わって“強制力”から解放されたってことかしら?


「……ラファエル様大好き」

「ああ、私もだ」


 クールな顔に少しだけ笑みを浮かべたラファエルはベッドに横たわったままのわたしのおでこに軽くキスを落として足早に寝室を出て行った。


 前はもっと嬉しそうにしたのに……ゲームが終わったら効果が無いってこと? 逆ハーエンドは原作でもリメイク盤でもマリアの奪い合いで終わるから目指してたのにこれでホントにおしまいなのかしら?


 ――刺激の無い生活なんて退屈なだけだわ――






 原作の拉致監禁イベントはどのルートに行けるかが判るイベントだった。ハロルドを歓迎する舞踏会で拉致されて、結果助けに来たのがレアンドラのグレンデス家。これでラファエルルートか逆ハールートが確定した。

 それから、聖霊祭では四人に迎えに来て貰ってテラスでラファエルとキスが出来たんだから逆ハーエンドが確定したようなモノだった。

 そしてエンディング。グレンデスの親父が処刑されたあとの卒業式。壇上で挨拶するラファエルがマリアにプロポーズする。ラファエルルートはそれで終わりだけど、逆ハーエンドの場合はハイムルト達が割って入る。現実にそんな事あり得るのかなって見てたらホントに起こった。だからこの世界が逆ハーエンドを迎えたことは間違いない。


 と、思う。


 確信が持てないのは、ラノベのこういう話だとゲームと現実の違いが浮き彫りになることが多かったけどこの世界も例外じゃなかったから。


 先ずはイベントの進展速度。ヤンデレイベを警戒して距離を置いていたアロイスは良く分からないけど、ハイムルトとオズワルドの攻略は異常な程簡単だった。原作の逆ハーはレオンハルトが居ない分簡単だったけど、六月中にベッドに誘われるなんてことは無い。“一人に”誘われるだけだってもっと時間が掛かってたし、ゲームとは比べ物にならないぐらい進展が早かった。

 それにしても、昼間敢えて騒ぎを起こして夜やってることを誤魔化すとかハイムルトはホント腹黒よね。まあわたしが入ったのはハイムルトの寝室だけじゃないけど。


 次にラファエルのイベント。彼は六歳の頃こんな噂を耳にする。


 ――ラファエル様はラルフェルト様の子ではない――


 同時にその根拠を耳にした彼は、母は勿論それを咎めようとしない父親にも不信感を抱いた。孤独な子供時代を過ごした彼は成長したある日悪魔の誘惑に負けて調べてしまった。噂の根拠となっていることが事実かどうか。そしてその結果、母親は妊娠した頃実家に帰って療養していたという事実を掴んでしまう。より一層孤独を深めたラファエルの前に現れたのが純粋に自分を守ろうとしてくれた女、マリア。

 って言う話を聞かされて、その後マリアが国王と話して誤解を解くイベントがあった。だけど、それらのイベントは全部丸々抜け落ちてた。他のイベントはレアンドラ柄みも含めて欠かさずあったのに、何であれだく抜け落ちてたの?

 もしかして、妊娠初期に魔力が枯渇すると出産が遅くなるなんてことは現実では起こらないから? いや、魔法が実在するんだからそういうこともあり得るわよね。実際起きたなんて話は知らないけど。


 最後にオズワルド。レオンハルトもあの取り巻きその二もリメイク盤のキャラだから原作には影響が無いだろうし、それ以外のイベントが全くそのままだったオズワルドが前世持ちとも思えない。そもそも拉致監禁イベントの犯人なんて逮捕されない。なのに有罪になって終身刑になるなんて……。おまけに収監された直後に脱獄して行方不明。無茶苦茶だわ。


 結局一度もわたしを抱いていないアロイスもなんか取り巻きその三に近付いているみたいだし、四人が二人に減るとかないわぁ。ヒロインに転生させといて意地の悪い神様。


 そんな事を言いつつも、ラファエルがわたしを大事にしてるのは間違いないし、ハイムルトはまだまだわたしを抱きたがってる。二人に減ったのは痛いけど、国王と宰相を手玉に取るなんて最高じゃない? ヒロインじゃなくて完全に悪女だけどぉ。ま、前世で借金地獄から風俗で働かされたわたしへのご褒美としてはありよね。

 まあ前世は前世で楽しかったけど。キモい男に抱かれるのは嫌だったけど、ちょっと本気っぽくみせるだけでコロッと騙される男なんて幾らでもいたし、金蔓掴んでホストで豪遊ってのは悪く無かったわ。ラファエルやハイムルトみたいな紳士で夜も申し分ないイケメンなんて居なかったけどね。


「マリア様」


 ん? 呼ばれた?


「マリア? どうしたんだい呆けて」


 え! 何であんたが此処にいるのよ。


「……ハイムルト。どうして此処に?」


 散歩していただけなんだから此処は王宮内でしょう? どうやって入ったの?


「君に会いに来たに決まっている。王宮なんぞに囚われた姫を助けに来たのさ」

「……わたしも会いたかったわハイムルト」


 どうにも胡散臭いのよねハイムルトって。本気でわたしのことを愛しているのかしら?


「ラファエル様とはどうだ? 上手くやっているか? まさかもう心を奪われたなんてことはないよな?」

「ラファエル様とは又従兄弟としてきちんとしたお付き合いを始めています。心を奪われるなんてそんな関係じゃないわ」

「又従兄弟としてか。ふっ」


 何よその笑い。気持ち悪い。


「まあ良い。マリアがそういう女だからこそこれからやることに意味がある」

「……これからやること?」

「君はやはり今行政府で起きている騒ぎを知らないようだね」


 行政府って王宮の端っこにある役所みたいなとこ?


「……騒ぎ?」


 エンディングが終わってから大きなイベントがあるわけ? 現実ってメンドクサイわ。


「明日には国中で大騒ぎだろうけどね。何しろ――――」


 ……勿体ぶってないで結論から言いなさいよ。悦に入った気持ち悪い顔のまんまだし。


「先王陛下が暗殺されたのだから」


 第三十一代ブラーツ王国国王ラルフェルト・グエン・ブラーツはその退官から僅か六日後、馬車で離宮に向かう途中で襲撃を受け三十七年の生涯を閉じた。

 退冠後とは言え先の国王の暗殺は国家反逆級の重罪である。ブラーツ王国は大いに揺れた。しかし、若すぎる国王の相談役が居なくなったところで先王の能力からして大きな問題にはならない。幸か不幸か王家は派閥とは関係ない。逃げ果せた襲撃犯を雇ったのが誰かというのは大きな問題だが一番の問題ではない。


 ブラーツにとって一番大きな問題は――――




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