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土地域 攻防

煌が一人、屋敷から出て歩き始める。

白銀の中を歩む姿は黒いコートにブーツ、革の手袋と黒色で統一された出で立ちだ。


煌は少し歩くと屋敷を振り向き手を上げた、すると煌の部屋に位置している窓が開く。


部屋の中には狙撃銃を窓の外に構える千歳が立ち、視線の先に煌が手を振っている姿が見えた。


「……かしこまりました」


煌から視線を外し狙撃銃を構え直した千歳が引き金を引き始める。

銃の先端には消音器が取り付けられ銃声は響くことはなかった。


「煌様、いったか?」

「あぁ、白雪、今日はこの部屋から出ては駄目だよ」


煌のベットの上に座り白雪が頷く。

その姿は昨晩と違い無造作に伸びた髪が雀の手によって整われ、腰まで伸びる黒髪が絹糸のように()ややかに見え、クリーム色のワンピースは白雪の白い肌に、よく似合っていた。


「……」


鳥の囀ずりと何か重量のあるものが落ちるような音が聞こえ煌は笑みを深くし屋敷に背を向け歩みを進めた。


「はーい、いらっしゃいませ」


屋敷の中に来客を知らせるベルが鳴り、雀が扉を開くと身なりのいい男と女が頭を下げていた。


「……先日は息子が、ご迷惑をおかけして申し訳ありません……」


首を傾げる雀が詳しく聞くと身なりのいい男女は先日、罰せられた男の両親で煌と霧に直接、謝りたいのだと話し出した。


「霧ちゃんは今、手が離せなくって、煌様は留守に……よかったらお待ちになります?」


そして雀は二人を客間に通し温かい紅茶とお菓子を並べ、どうぞと微笑んだ。


「ところで、昨夜……変わったことはありませんでしたか?」

「変わったこと、特に思い当たりません……ところで、息子さんの具合はいかがです?、逃げ出そうとして怪我をされたんでしょう」


雀は男の問いに首を振り紅茶を一口、飲むと女の方へ視線を向けた。


「ッ!!、逃げろと貴方達が迫ったんでしょ!?、それを撃つなんて狂って」

「お、おい!!、やめないか、失礼だろう!!……も、申し訳ありません」


「いいえ、大切な子供ですものね……私こそ、あぁ、紅茶が冷めてしまいますから、どうぞ」


男と女が雀に促され、カップを持ち上げる、それに口をつけ喉が動いたのは同時だった。


「一つだけいいかしら……霧ちゃんは狂ってなんかいませんからね」


「……っ?」

「……ぇ?」


雀が女を見据え微笑む。

眉を細め、カップを置く二人の顔が歪んだ。


「大丈夫、この毒は残念ですが死ぬものでありません……煌様がお戻りになるまで、ゆっくり、お休みになって」


雀は席から立ち上がり、カップを片付け始めた。


「はぁ……煌様は、ご無事だろうか……」


懐から懐中時計を取り出し見つめ霧は溜め息をつきながら屋敷の裏口の方へ歩いていた。

何度、懐中時計を眺めても煌が屋敷を出てから差ほど時間は経っていない。


「……五、六人か」


進む方向から数人の足音が聞こえ霧は懐中時計を仕舞い、ホルスターから銃を取り出し走り出す。


「ちっ、見つかった、ッ」

「侵入してから差ほど時間は……!!」


霧は数分も経たないうちに足音の持ち主達を見つけた、その人数は六人いずれも男で武器を持っている。


しかし霧は走る速度を緩めずに近寄ると銃を撃つのではなく顔、鳩尾、後頭部と打撃に使い三人を気絶させた。


「全員は無理でしたか……動いたら死にますよ」


意識があるのは残り三人。

しかし、一人は霧に背後から捕らえられ銃口を、こめかみに付けられ安全装置を外す音に恐怖で顔を歪めている。


「くそっ、こんなところで死んでたまるかよ……ぁ」


一人逃げようと背を向けた男に霧は銃を向け一度、引き金を引いた。


「動いたら死ぬっていったでしょう」


男が前のめりに倒れ後頭部には一つ、穴が開いていた。

意識があるのは残り二人。


「さぁ、貴方たちはどうされます?……残念ですが今、逃げても私に殺され戻っても志郎殿に」


撃たれ倒れた男を呆然と見ていた二人は問われ、次は自分ではないかと体をびくつかせた。


「……逃げる気も戻る気もないのなら、この人たちを運ぶの手伝っていただけませんか」


その頃、煌は士郎の屋敷に前にいた。

楽しげに笑って、ベルを押し恭しく出迎えられる。


「っ……煌様、いらっしゃいませ」


煌は昨夜のうちに志郎へ、明日出向くとだけ連絡させていた。

しかし、煌の姿を見て動揺しているように見える。


「……驚きました、煌様……ご用があれば私がでむきましたものを何かございましたか?」

「あぁ、実は宴を開きたいんだ……その相談でね」


客間に通された煌がコートを脱ぎ使用人に手渡す。


「宴ですか?」

「そう、霧たちより志郎の方がそういったことになれていると思って来たんだ」


煌は引かれた椅子に深く座ると足を組んだ。


「あぁ、二葉と雨音も呼んでくれるかな?、二人にも相談があるんだ」

「……ええ、すぐに」


志郎は使用人に命じると煌の向かいの席へ座り微笑んだ。


「お、おまたせしました」

「お久しぶりです、煌様」


「二人とも遊びに来てくれないから……待ちきれず来てしまったよ」


頬を赤く染めた二葉と嬉しそうに煌を見る雨音も席についた。

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