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土地域 同罪

暖炉から弾けような音がして薪が崩れる。


「今日はパウンドケーキを作りました」

「飲み物は、いつものでいいかな」


可愛らしいピンクのエプロンをつけた雀がパウンドケーキを切り分けて皿に乗せていく、その間に千歳が飲み物を用意していた。


煌には珈琲にミルクを多めのカフェオレを雀には砂糖を少なめのレモンティーを霧には沢山のハチミツをいれたハニーティーを千歳は自分にはブラック珈琲を入れる。


「今日も美味しいよ、雀、私の奥さんは可愛くて料理上手で」

「きゃ、千歳様」


ほんのり頬を赤く染め見つめ合う二人、ケーキよりも甘い雰囲気が二人の間に流れていく。


「……二人とも煌様の前でやめてください」


紅茶で曇った眼鏡を拭きながら霧がため息をついた。


「もう慣れたから平気だよ」


パウンドケーキをフォークで一口大に切ると煌は苦笑し頬張る。


「わ、私たっら」

「雀、君は悪くない……悪いのは私だ、雀が愛しすぎて私が悪いんだ!!」

「そ、そんな千歳様、私だって!!」


熱ぽっい瞳で見つめ合う二人、先程の雰囲気に蜂蜜のような甘さが加算され自然と互いの手と手が伸ばされ重なった。


「雀」

「千歳様」


「……千歳さん」

「ん?」


千歳は雀と手を繋いだまま霧を見る。


「き、霧」

「紅茶を、もう一杯いただけますか?」


空になったカップを差し出し向けた眼差しは冷ややかだった。


「っ、すみませんでした」

「何を謝っているんです……可笑しな千歳さんですねぇ」

「そうだね、あははは……」


引きつって笑いながら千歳はカップを受け取り紅茶を注いだ。


「ど、どうぞ」

「ありがとうございます」


紅茶を受け取って、また沢山の蜂蜜をいれる霧を見て千歳は微笑んだ。


「……」

「?、千歳さん、どうかしましたか」

「ん、なんでもないよ」


兄さんも酷い甘党だった、怒ると目で訴えてきて、いつも私が謝って……千歳は兄の面影を霧に重ねていた。


しかし、霧に兄、千里の話をすれば表情を曇らせるだろうと誤魔化すように珈琲で飲み込んだ。


そんなことを考えていたせいなのか、好んで飲んでいるはずの珈琲の苦味が増した気がして顔をしかめた。


「……千歳様、もう一つ、いかがですか?」

「ありがとう、貰うよ」


そっと雀が心配そうに千歳の手を握る。

妻の気遣いに感謝し、 頬張ると程よい甘さが口の中に広がった。


「ふぅ、お腹いっぱーい」

「煌様、これからどうしますか?」

「チェスで勝負しよう」

「はい、煌様」

「手加減しない、約束」

「かしこまりました」


煌と霧が楽しげに睨み合っい御馳走様でしたと告げ部屋から出ていく。


「……霧は本当に兄さんに似てきた、だからかな、考えてしまうんだ」


千歳は雀と二人きりになると先程、言えなかったことを口にした。


「霧は兄さんのことも殺しそうとしているのかな」


目の前で寵愛(血)を授かった自慢の兄、それを、とても誇らしく思った。


これで、きっと義姉も霧も蔑まれることはなくなる。


「憎んでいるなら寵愛を受けるのを止めなかった、それを誇らしいと思った私も……同罪だ……」


兄さんは忙しいろうから、義姉さんと霧に知らせに行こう……雀をつれ出向いた兄の屋敷、興奮ぎみにベルを押すが、いつもなら出迎えてくれる可愛らしい甥を待つが現れない。


それを不思議に思っていると扉が開き現れたのは兄、虚ろな瞳、感情のない顔をしていた。


「千歳様……でしたら私も同罪です、選ばれたのが貴方でなくてよかったと思いましたから」


名前呼んでも無視して歩いていく、片手に銃を持っているのに気づき嫌な違和感を覚え、開いたままの扉を雀の手を引いて入る。


見つけたのは義姉から流れでて出来た血だまりの中……自分の膝の上に母の頭を乗せて髪をすく姿。


「雀……もし霧が私を殺したら君は、あの子を」

「そんなことを……聞くなんて」


こちらを向いた義姉の瞳には黒い穴が空き、赤い涙を流していた。


「あの子は子供の産めなくなった私に出来た大切な貴方との子……貴方も同じ気持ちでしょう?」


私の夫と子供を奪ったなと、赤い涙を流して、こちらを見る虚無の瞳に責められた気がした。


「私たちは、あの子ためなら……死を厭わない……ぁ」


微笑んで言い切る雀は美しく同じ気持ちであることが愛しく、それを告げるため深く口づける。


「ん、だけど、あの子が千里様を殺したのなら貴方は、あの子を憎むの?」


唇を離し、二人は見つめ合う。


「……霧が、もし、兄さんを殺そうとしたなら……さきに私がやるよ、雀」


それなら霧が私を憎んで殺しても私たちは私たちの愛しい子を二度と失わずにすむ……そして、また二人の唇が重なった。


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