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監禁男  作者: 碧
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第九話 訪問

 

 歯磨きを済ませた後、二宮と共に家の荷物を取りに行く為に外に出た。…それにしてもローファーに私服ってだせえ。流石に靴は用意していなかったようだ。

 外から二宮の家を見上げると、立派な二階建ての一軒家だった。洋風な造りで、汚れのない真っ白な外装は築数年も経ってなさそうに見える。こんな広い家に二宮が一人暮らししてたなんて信じられない。


「じゃあ聡君は助手席乗って」


 二宮が車のロックを解除した。この車もかなり高級感が漂っている。おそらく有名ブランドの車なのだろう。……何か急に金持ちなった気分だ。

 助手席に乗り込んだ後車が発進した。二宮はなぜか俺の家の場所を知っているようで難なく向かっている。怖すぎ。

 しばらく車を走らせると、俺の通う高校が見えた。いつも学校を帰る時と反対側の道路。どうやら二宮の家と俺の家は学校を挟んで対極にあるようだ。


「ここ聡君の学校だよね?」


 俺の高校を二宮が指差す。


「そうですよ」

「どう? ここまでの道のり覚えられそう?」

「え⁉︎ 学校行っていいんですか…⁉︎」

「何言ってるの? 当然だよ」


 二宮がニッコリ笑う。こいつはおそらく俺に爆弾を埋め込んだ以上逃げられない自信があるのだろう。学校に行かせれば俺を行方不明にさせずに監禁を続けられる。…本当とんでもねー奴。

 でも外に出れる以上誰かに告発する事は出来るはずだ。問題は二宮に爆弾を起爆させることなく逮捕する事だが…起爆装置が何処かも分からないしどうすれば…


「…ここだね」


 20分程で俺のアパートに着いた。二宮と車から出る。…にしてもこうしてみるとやっぱめちゃくちゃボロいなこのアパート。


「聡君は確か二階のC号室だよね?」

「そうですけど…何で二宮さんは俺について色々知ってるんですか?」


 最大の疑問。


「何でだと思う? まあ教えないけど」


 二宮が意地悪そうに笑う。こいつめ…


 その後二人で階段を上がり俺の住むC号室のドアの前まで来た。


「分かってると思うけど…僕の事を話したらどうなるか…」

「は、はい! 分かってますって」


 大体二宮がいる前で話せるはずないだろ!


 ドアノブを回したが、鍵が掛かっていた為インターホンを押す。数秒後、はーいと母さんの声が聞こえドアが開いた。


「聡! …と二宮さんでしょうか?」

「はい。私が二宮です」

「あら、随分と大人っぽい方なんですね! びっくりしました。聡はご迷惑をお掛けすると思いますが、どうぞよろしくお願いします」


 母さんが一礼する。


「当然ですよお母様。あ、これ連絡先等を記入した紙です」

「あらどうも。…じゃどうぞ中に入って下さい!」


 母さんは二宮を疑う様子もない。母さん、こいつは俺を脅してるんだぞ!


 中に入ると、妹二人が険しい表情でリビングに立っていた。


「こんにちは」

「…こんにちは」


 笑顔で挨拶する二宮を観察するような目で見る二人。


「ちょっとお兄ちゃん…何でLIMEしたのに無視?」


 高2の妹の里菜りなが怪訝そうな顔で見つめてくる。おそらく急な別居に驚いて連絡を入れたのだろう。


「あー…ごめん。気付かなかった」


 スマホ取られてるの言ったら駄目だよな。


「気付かなかったって…」


 里菜が納得いかない様子で溜息をついた。


「てかさ、急過ぎない? 普通事前に言うでしょ」


 もう一人の妹、中3の優菜ゆうなが尋ねてくる。二人共急な俺の引越しに納得していないようだ。


「ああ…ごめんな」

「お二人共、聡君は凄く悩んでいました。でも悩んで悩み抜いて僕の所に来る決心をしたようです。彼の大学を絶対に合格するという気持ちは本気です。僕はだからこそ聡君の生活費を負担してまで居候させてあげる事にしたんです。どうか責めないでいただけないでしょうか」


 二宮がいつになく真剣な表情で話す。もちろん演技だ。……お前を今すぐ殴りたいよ俺は。


「ごめんなさいね二宮さん。ほらほら、聡は頑張ってるんだから応援してやりなさい」


 母さんが二人をなだめる。母さんはやはり生活費が軽くなる事を明らかに快く思っているようだ。完全に二宮を受け入れ擁護している。


「…はーい」

「…はいはい」


 二人はまだ納得していない様子だったが、その後何も言わずに二人の共同部屋に戻っていった。


「本当にごめんなさいね。じゃあ聡が部屋で荷物入れてる間、二宮さんはここで座っていて下さい。今お茶用意しますので」


 テーブル前に座布団を用意する母さん。


「いえ…僕は聡君と一緒に荷物入れ手伝います」

「え⁉︎ そんな…いいですよ! ねえ聡?」

「う、うん」


 どういうつもりだ二宮?


「僕は手伝いたいんです。聡君も一人じゃ大変でしょうし」


 二宮が俺を見つめてくる。拒否権なんてないよな。


「じゃあ…手伝ってもらおうかな」

「聡! …本当にいいんですか二宮さん?」


 母さんが申し訳なさそうに尋ねる。


「ええ」


 二宮が微笑む。こいつ…もしや俺が部屋で余計な事しないか監視するつもりなのか?

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