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監禁男  作者: 碧
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第六話 衝撃

 

 トイレから出た後、やはりさっきの部屋に戻らされた。二人で並んでベッドの上に座った。


「良かったねー間に合って」


 二宮が他人事のように話す。


「本当に…二宮さんが眠らせたりするから!」

「うんうん、あんなに水も飲んでたし眠ってる間に漏らしちゃうんじゃないかと心配したよ。よく耐えたね」


 …苛つく。でもそうならなくて本当に良かった。そんな事よりこの腹部の縫い目について問いたださなくては。


「二宮さん。これ何したんですか?」


 腹部の縫い目を指差してみせた。


「ああ…それ何だと思う?」


 二宮はうすら笑みを浮かべて見下ろしている。質問を質問で返すって…ふざけんな!


「そんなの分からないですよ! 教えてください」

「”人間爆弾”って知ってる?」

「⁉︎」


 二宮がサラリと言った。

 そんな……まさか…嘘だろ?

 ──人間爆弾。よくテロのニュースなんかで耳にするがそんなのが現実に…こんな近くに…

 嫌な予感が一気に駆け巡る。突発的な恐怖に動揺を隠せない様子でいる俺に構わず二宮が顔色一つ変えず続ける。


「君の体に爆弾を埋め込まさせてもらった」


 嫌な予感は的中した。信じられないこいつ…!あまりの衝撃に言葉を失った。気が気ではいられなかった。


「大丈夫だよ。君が誰かに僕の事言ったり逃げたりしなければ起爆しないから…ね」


 腹部の縫い目を指先で伝うように触ってきた。気持ち悪い。


「や…めろ」


 二宮から遠ざかり立ち上がろうとしたが、がっちりと右腕を掴まれ引き戻された。


「離せ…」

「離さない」


 幾ら振り解こうとしても力が尋常じゃないくらい強い。本当にこいつ何者…!


「ちなみに起爆装置は常に僕が持ってるから」

「何処だ⁉︎」

「さあ何処でしょう?」


 また質問を質問で…‼︎いい加減にしろ!


「二宮さん…これは立派な犯罪ですよ。目を覚ましてください‼︎」

「僕は君を手に入れる為なら何でもするよ。もしそれが叶わないなら殺すだけ」


 やはりこいつは狂ってる。何で俺がこんな目に…


「にしても、この爆弾すごいんだよ〜こんな小さいのに立派に爆破してくれるんだもん」


 二宮は相変わらず楽しそうに話している。


「これが爆発しちゃったら近くにいる人間も確実に死ぬね。そうすると…君は人殺しになっちゃうけど」


 こんの…野郎‼︎


「二宮ァーーーーー!!!!」


 怒りが頂点に達し、掴まれていない左手で殴りにかかった。だが簡単にかわされ、それどころか腹部を蹴り飛ばされてしまった。


「ぐはあっ‼︎」


 尻もちをつき倒れる。あまりの痛みに身体を縮こめた。しかも腹って…爆発したらどうすんだよ!


「残念だったね」


 余裕の笑顔を見せ付けられながら容赦なく左足の膝を踏み付けてきた。


「いっあああ!!!!」


 昨日二宮の車を回避した際怪我した所だ。こいつ…わざと…!


「痛い? やめてほしい?」

「ぐっ…うう…‼︎」


 足に加える力が徐々に強くなってきている。もう限界だ…


「はい…頼みますから! すみませんでした!」

「…いい子だ」


 二宮が足を退けた。その途端俺は息を切らしながら膝を押さえうずくまった。


「ごめんね。でも君から手を出してきたのだから」


 うるせえよ。


「傷口見せて」


 二宮が制服の裾を捲り上げてきた。ここで抵抗してもどうせ無駄なのは分かっていた。

 裾を膝まで上げると、やはり血が出ていた。


「あー…血出ちゃってるね」

「…」


 最悪。


「ちょっと染みるかもしれないけど我慢してね」

「え? ……‼︎」


 二宮が突然傷口を舐めだした。


「ちょっ何すんですか‼︎」

「何って…消毒。知らないの?」


 きょとんとした顔で見てくる。

 傷口を舐めて消毒って…確かに耳にしたことはあるが、古典的過ぎるだろ‼︎

 二宮がまた舐める行為を再開した。傷がズキズキと染みる。


「いっ…ん…!ん」


 必死に痛みに耐える。二宮は伏し目がちになりながら傷口を舐めている。…やはりこいつは悔しい程に美形だ。思わずこのアングルに見とれそうになった。絶対モテるだろうに何で…


「二宮さん…もう大丈夫ですから」


 痛みに慣れてきたからか、段々くすぐったくなってきた。


「そう? 良かった」


 舌を引っ込め、膝から顔を離した。


「にしても聡君って…体毛薄いんだね」

「‼︎」


 ほぼつるつるの脚を見て思ったのだろう。コンプレックスなのに!恥ずかしい。


「み、見ないでくださいよ! 恥ずかしい」


 慌てて制服の裾を下げる。


「何で? 全然良いと思うけど?」

「だって男なのに…」

「僕は寧ろその方がいいな」


 そういやこいつ、前世の女がどうのって言ってたな。そりゃ薄い方が良いわけだ。俺はもう前世の女ではないのに…


「聡君」

「…何ですか?」


 改まった様子でこっちを見つめてくる。


「もう分かったでしょ。君はもう僕からは逃げられないんだ」

「…」


 俺の顎をすくう二宮。


「やはり男になっても綺麗に澄んだ瞳が変わらないね」

「何…言ってんですか…」


 思わず視線を逸らしてしまった。なんなんだよこれ…

 クスッと笑ったのが聞こえた。


「じゃあ、もう朝だし朝食にしようか。その後聡君家から荷物取りに行かないといけないしね」


 二宮が立ち上がり、部屋を出た。もちろん鍵を掛けて。

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