第五話 焦燥
目が覚めた。大分深い眠りについていた気がする……。目の前には見慣れない天井が広がっていた。
「あれ…?」
ここは何処だ?俺の部屋じゃない?……ってそうだ!俺はあいつに睡眠薬飲まされて眠ってたんだ!
寝ぼけから覚め、慌てて起き上がる。手足のロープはついてなかった。
「‼︎」
なぜか上半身が裸になっていた。しかも、腹部に縫い目が有る。
「何だよ…これ…?」
恐る恐る縫い目に触れる。まさか体の中に何かされたというのか!…あいつは何処行った⁉︎
一気に血の気が引き、明らかに鼓動が早くなった。二宮に一刻も早く問い詰めたい。が……やばい、その前にトイレしたい。一気に尿意が襲ってきた。
急いてドアの前まで走りドアノブを捻ったが、案の定鍵が掛かっていた。
「二宮さーん! 二宮さん聞こえますか!」
ドアをドンドンと叩く。早く…‼︎ 膀胱が悲鳴あげてる!来い二宮‼︎
「二宮さん‼︎ 二宮さーん‼︎」
無我夢中でドアをノックし続ける。本当にもうやばいって‼︎
「随分煩いな。待ってて今鍵開けるから」
二宮が来た!早く開けろ‼︎
ドアがゆっくりと開いた。
「目が覚めたようだね、おはよう。どうしちゃったの?そんな焦った様子で」
二宮が面白いものを見るような目で見ている。
「トイレ! 行かせてください‼︎」
「あ〜成る程ね」
何があ〜成る程ねだ‼︎しれっとしやがって!こっちはめちゃくちゃ焦ってるのに…‼︎
「じゃあ、案内するよ」
二宮は俺の両腕を掴んだ。
「逃げられると困るからね、一応」
少なくとも今の状態じゃ逃げられない‼︎演技だと思われてんのか?
廊下に出ると、奥の方にトイレが有った。意外と近くにあって良かった!
「じゃあ、僕はここで待ってるから」
トイレのドアの近くに二宮が立った。
「はい‼︎」
無我夢中でドアを開け、中に入る。
……ギリギリ間に合った。
「あー助かった…」
安堵し思わず小声で一人言がこぼれる。
一段落し冷静になってみると、窓から差し込む光が明るいのに気付いた。もう朝になっていたようだ。
「この窓から…や、無理だな」
窓から外に出られるんじゃないかと一瞬思ったが、ルーバー窓で外に出るのは不可能になっていた。二宮はそれも計算していたのか?
おそらくこの家は一軒家のようだ。もし二宮の要望に応えた造りになってたとしたら…
「聡君、まだ?」
ドアの外から二宮の声。
「あ、今出ます!」
窓に伸ばしていた手を慌てて引っ込め、水を流した。