第四話 睡眠
「これで君もついに僕とずっと一緒に居れるね」
二宮がさぞ満足気な表情で言った。
電話後俺は二宮からは解放され、手足は相変わらず縛られた状態でベッドに座っていた。二宮は目の前で嬉しそうに立っている。どうやら正真正銘の大馬鹿のようだ。何が成績トップだよ。笑える。
「……あの、水飲ませてもらえます?」
本当喉カラカラなんですけど。
「ごめんね。今度こそちゃんとあげるから」
二宮が床のコップを持ち、ストローを軽く押さえながら俺の口元に近付けた。それを逃すかとばかりに一気に吸い込む。
──美味い!
水自体は若干ぬるくはなっていたが、カラカラの喉が潤いを取り戻していく感覚は最高だった。ほんの数秒で飲み干してしまった。
あまりの飲む勢いの速さに二宮は驚いた表情をしていたが、ふっとかすかに微笑した。
「凄い飲みっぷりだね。そんなに喉渇いてたんだ」
「ああ…はい」
誰のせいだと思ってるんですか?と大声で言ってやりたい。
「いやーびっくりした。…そういや聡君、トイレは大丈夫かな?」
「今の所大丈夫です」
そういやトイレや風呂の時もこいつは監視するのか?なら最悪過ぎなんだが。
「なら、いいんだ」
「え?」
「いや、寝てる時に漏らしちゃったらヤバいでしょ?」
「や…でもまだ寝るって時間帯じゃないし…? 寝る前にはさせてほしいですけど」
「そっか」
部屋に時計がないから正確な時間は分からないが、おそらくまだ20時前後だ。てか、トイレの心配をしてくれるって意外と良い人…?
「……でも君はもうすぐ寝るはずだよ」
「え?」
まさかと思った。嫌な予感が一瞬で頭を過った。さっきの水もしや……
「目が泳いでるよ。気付いちゃったかな?」
「‼︎」
二宮が満面の笑みで言う。嘘だろ⁉︎まだ意識は有る。まだ大丈夫!大丈夫………?いや…何か急に眠くなってきた………
「ぐっ……」
突然くる激しい眠気。
苦しんでる目の前で二宮がニヤニヤしてるのが見える。
こいつはやっぱ悪い奴だった。何をする気だ?……あー駄目だ…もう……
一気に意識が薄くなり前方に倒れ込んでしまった。倒れてきた俺の腹辺りを二宮がすかさず腕で捉えた。
「おやすみ、聡君」
そう聞こえた後、完全に意識が途絶えた。
聡の寝顔を眺める二宮。
「やっぱりエマは生まれ変わっても可愛いな」
聡の頭をそっと撫でた。
二宮は聡をベッドに移動させた後、自身のスマートフォンを取り出しある人物に電話した。
「……上手くいきましたよ。後は例の件頼みました」