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監禁男  作者: 碧
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第一話 監禁

 

 一人の人物が写る写真をじっと見つめていた男がいた。


「やっとだね」


 写真の表面を伝うように撫でる。

 彼の顔は喜びに満ち溢れていた。

 

 

 

 

 ──4月。高校三年になった槙島聡まきしまさとるは受験生としてそこそこ大変な日々を送っていた。


「あー今日も1日疲れた」


 学校の帰り道、思わず一人言がこぼれる。

 毎日放課後に自習室で勉強してから帰る日々。今日は18時半まで勉強した。外は暗くおまけに向かい風が吹いて若干寒い。早く家帰って寝てえと思いながら人気のない路道をひたすら自らの住むアパートに向かって歩いていた。


 細い路地に入った時、視界の向こうに大きめの車が止まってる見えた。その車はエンジンが付いたまま停車していたが、聡との距離が20m程に縮まった時に急発進してきた。


「あぶねっ⁉︎ わっ」


 車が2台通るのがやっとの路地だ。車道と歩道の間にはガードレールも何も無い。危なく轢かれそうになったところをぎりぎりで回避しバランスを崩して倒れてしまった。

 聡は路面に打った左足の膝辺りを押さえながらうずくまっていた。

 するとその車は停車し、運転席から人が出てきた。


「すみません、大丈夫ですか?」


 男性の声。その男が聡をかがみこんで見つめる。


(大丈夫じゃねーって! イっテぇ)


 内心では決して快く思わなかったが、運転手を責める勇気はない。


「あー、大丈夫です」


 作り笑いをしながら、顔を上げ男の方を見た。


 細身で長身の20歳くらいの青年。頼りない街灯の下でも認識出来るキリッとした端正な顔立ちに黒のスーツはどこか知的で大人な印象を感じさせた。

 背は低い方でよく童顔だと言われる聡にとっては正反対のように見えた。


「なら良かった」


 顔に合った落ち着きのある低く優しい声で微笑む男。


「でも足、怪我してるよね? 手当しようか? 僕医療関係の仕事してるんだ。たまたま救急箱も車に積んであるし」

「いや、大丈夫です」


 さすがにそこまでする怪我ではなかったので即答で断りをいれる。が、しかし


「大丈夫じゃないでしょ。ほら、おいで」

「本当に大丈夫ですから……って、え!⁉︎ ちょっ…‼︎ いたたたた」


 男が優しい表情を保ったままそこからは想像のつかない程の握力で突然聡の腕を掴み後部座席のドアを開けそこに放り投げた。思わぬ痛みにぐはっと声を上げる。続けて男も後部座席に乗る。


「な、何するんですか⁉︎」


 一瞬の出来事に激しく混乱する聡。


「叫ばないで。動かないで。殺すよ?」


 男は聡の眼前にポケットナイフを突き付けた。


 聡はパニックに陥った様子で慌てて自分側の車のドアを開けて逃げようとしたが、すかさず腕をがっちり掴まれ後ろ向きのまま男の腕の中に引き寄せられた。


「つっかまーえた」

「ん……ぐ……」


 首の下は男の左腕に通され、右腕に持ったナイフは聡の顔前に向けられていた。


「聡君、殺されたくないなら僕の言う事聞いて」

「⁉︎」

(こいつ、何で俺の名前知ってんだよ⁉︎)


 そんな疑問を呈している精神的な余裕もない。男は優しい声で続けて言った。


「いい? まずはここに横になって」

「は、はい!」


 恐怖に怯えながら後部座席シートに横になる。男はフッとかすかに微笑みながら足元に置いてある袋から目隠しを取り出し、聡に装着した。

 その後同じ袋からガムテープとロープを取り出し、ガムテープで口を塞ぎ手足をロープで縛られ、聡は完全に身体の自由を奪われた。


(これどう考えたってヤバいよな⁉︎ どうなるんだよ! 死にたくない……誰か、お願いだから!)


 必死に願うも、人気のない夜の道路は一層静まり返っていて誰も来そうな気配にない。

その後、男は運転席へ移動し車を発進した。

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