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DUSTER  作者: 703
10/13

消失した紅蓮

「はぁ…はぁ…ぐっ…ッ」


視界は白い。出煙破臭剤の煙幕がボクの周りを

満たしている。この煙幕の外は…『地獄』だ。

外に生きてる人はいない。あるのは……なんだ?

あの一瞬では、なんなのか完全にはわからない。

わからないが、良くないものなのは間違い無い。

ボクはアレから逃げなければならない…。

体に力を入れよう…!立って走る……歩くでもいい!

酸素凝縮紙の酸素量はまだ余裕がある。アレの

位置も覚えてる。だから、ただ反対の方向へ進めば

良いだけなんだ…!体、動け…ッ動けよ…!



「うッ…おぇ……ぐッ…カッ…ぐぅぅぅぅ…ッ!!」


…全身から水分が出て行く…。涙で前が見えない…。

汗が出て体の力が抜ける……。ダメだ!ダメだ!

少しも外気を吸うな!死臭を吸うより、窒息する方が

まだ寿命を延ばせる…!目も開くなッ!何かに

ぶつかっても、外へ…外へ走るんだ…ッ!!






「ッ…ッ………くッ……ぅう!……はっ…はぁッ!」





走った…。どれくらい走ったかはわからないけど。

でも、少しだけ…少しだけ楽になった…。相変わらず

前は涙で見えない…。でも通常のDUSTERくらいの

死臭に変わった…。この死臭で安堵してる自分に

少し驚いた…。とにかく…まだ生きてる…。




「うぁッ!」


また地面が鳴った。死臭の元凶がまた少し、地面から

姿を現したようだ。腕をさらに空に伸ばし、

人で言う所の肩の辺りが露出している。

さっきの一瞬では細部までよく観察できなかったが、

体色は赤紫色。それ以外は今は掴めない。ただ、

ヤツに近づけば、忽ち正気が抜けてしまう…。

まるで大量のDUSTERが合わさったような…。



「ッ…」


ここも安全じゃない。まだ走らなくては…!

…少なくともC地区辺りまで遠ざかりたい。

町の人達はどうしてるだろうか…。NDSは消滅した。

そういえば、警報も鳴ってない…。周りは死体だけ。

きっと…もっと増えていくんだろう…。




「ハジメか…?」


「…!」


泡を吹く死体で意識が虚になりかけていた体が

後ろから届いた声で震えた。ボクの後ろに2人の姿。

ガスマスクを着けているが、こんな所に来る者は

2人しかいない。



「長官……。視報長官も…」


「他に生存者は?」


「…………わかりません…。あ、カレ…ッ」


言いかけて、やめた。生きている保証は無い。

どこにいるかもわからない。助けられるかも

わからないし、助けて欲しいのかも、あの人の場合

わからない…。



「とにかく車に乗って。死ぬから」


視報長官は短く言うと、ここまで乗ってきただろう

自動車のエンジンを掛け、長官とボクが早く

乗り込むのを待っている。


「そういう事だ。お前しかいないなら仕方無い。

E5まで走る。行くぞ」


「…。」


最後にもう一度、後ろを確認した。空へ伸びる腕を。

…もしかしたらいるかもしれない彼女を。




-A4地区→E5地区-



「ゴッ…ゴッ…ゴッ…」


長官に水を渡され、一息で飲み干す。落ち着いて

身の回りを確認してみると、制服は汗で透けるほど

濡れ、頭は金槌で打たれたみたいにズキズキと

痛んでいた。



「白都にいる生存者は、もう我々3人だけだ」


「…えッ?」


「C地区より離れた市民は、正門や地下通路を通って

白都の壁を通って外界に出た。もう、この都市も

終わりという事だ」


「…ぁぁ、そうですか」


どうやら、これ以上の死人は出ないらしい。いや…

もし、あの怪物が壁を抜け出ればその限りじゃ無い。



「あの腕…テラスよね?」


「……はい」


視報長官が運転しながら問い掛けてきた。思えば

この数分で全てが変容した。NDS消滅、巨大な

DUSTERと思われる腐乱した腕。…それと

…ボクの父親の存在。



「長官…。人型のDUSTERっていたんですよね」


「…ああ、いた」


「…。」


「その顔を見ると、知ったようだな。お前の父親が

どういうものになったか」


「教えてくれませんか?ボクの両親の事を」



車内の空気が少し澱んだ。長官は一呼吸置き

口を開いた。



「ヤツは進化の糧を白都で見出したと思ったらしい」



-2年前-


ボクの父親は数年前に借金を作り蒸発した。

残されたボクと母さんは、それなりに大変だったが

細々と生活していた。

ある日、住所に『白都』と記載された封筒が届いた。

中には数万円の現金。蒸発した父からの物だった。

…それから数ヶ月、生活は少しだけ豊かになった。

いろいろあったが、両親にも感謝した。

…でも。





「無理しないで…。お母さんより長生きして…

こんな事、気にしなくて良いから…」



目の前で母親の命は途絶えた。

ボクが帰って来た時だった。窓から入る夕日の光が

血の色を隠していたから、一体そこで何があったのか

一瞬わからなかった。ただ、母さんが絞り出した言葉

引きつった笑顔、そしてボクに背を向け、

返り血を滴らせながら立っている男…。それを

理解して、初めて体が凍りついた。



「カコ…ッ!キキ…キキキキキキ…!」



「父さんッ…!?」


久しぶりに見たボクの父親は、もう人間では

なかった。変わり果てていた。腐った顔、吐瀉物を

垂れ流す口、目玉の消えた孔、人を殺める死臭の

吐息…。生ける公害、DUSTERになっていた。



「あ…ああぁあああッ!!」


歯がカチカチ震えた。逃げたいという本能と

それでも父親を信じたいという思いが行き違って

足が動かない。動けない間にも、徐々に死臭が

鼻を抉り始める。意識が朦朧とした。震えて

体は冷え始めているのに汗が止まらない。

吐き気が湧き上がり、嗚咽が出る。


「ぅ…おえ…ッ、かッ…ふ……ぁああッ」


逃げられない。気持ち悪い、死ぬ…マズい。

死ぬ、死ぬんだ…。ダメだ、ああ、くッ…ぅ…。



「た…すッけて…………」




「ガアアアアァアアア!!」


父は咆哮をあげた。ボクはその場にへたり込んだ。

もう終わったと思った。でも、終わっていなかった。



「はァッ!!」


突如、部屋が真っ白な煙幕に包まれ、同時に

突入してきた乱入者は、父に突撃し、窓を突き破り

父ごと外へと飛び出したのだ。



「はぁ…はぁ…ッ」


出煙破臭剤が晴れるまで、息を荒げて震えた。

理解が追いつかなかったのだ。初めての命の危機。

突如現れた怪物ダスター。それを狩る狩人エヌディーエス。家族の崩壊。

ボクは何も知らなかったのか。それとも、知る必要は

無い世界だったのか。今考えても運命だった、としか

言いようは無い。そして、その運命が膨れ上がり

また、今、ボクに降りかかっている。




-現在-


「ボクの父はあの後…どうなったんですか」


「…。」


ボクの身に起きた事、感じた事を包み隠さず吐いた。

父を相手取ったであろうNDSの社員は、その後、姿を

見せず消えて行った。当時のボクはパニックで

それどころではなかった。死んでしまった母のこと。

自分の今後。不思議とそんな現実的な事ばかりを

考えていた。

それから事が一段落した後。父の事を考えた。

結局あの後、父は死んだと思っていた。

しかし、しばらくして白都の事を細かに調べた。

その中で見たNDSという存在と、都市に居るという

怪物ダスター。それを調べていく内に

…父が死んだという事に疑問が現れた。



「ボクはNDSを調べた時、違和感を感じました。

どうして、こんな会社があるのか? DUSTERが

ただの害悪なら徹底的に排除すれば良いのに、

なぜか被害が常に出ている。国の機関なのに

なぜ対策が追いついていない。なぜか白都の外では

これほどの事が一般的に知られていないのか」


「待て。話が混乱している」


「あ…すいません」


勢い余って、NDSの存在と自分の事が一緒に

なってしまった。


「話を整理する。まず、NDSがなぜ存在するのか。

それは、もう知ったんだな?」


「はい。…本当に少し前に」




-白都異変[直前] Dr.テラスの流した映像-



《10年ほど前、各国は溢れるゴミ問題に

苦悩していました》



Dr.テラスが用意した映像は、街の至る所にある

画面をジャックした。音声合成ソフトで作っただろう

無機質な音声と共に映されたのは、特に発展途上国で

著しい大量のゴミの映像だった。


《しかし、それからの研究でゴミを圧縮する手段が

確立。実用化し始めました》


肉眼では見えないような物質が映される。

話の流れからDuダストニウムだと言う事は推測できた。

………白都の市民は反応に困っているようだが

この辺りで、ボクは話を推測する事ができた。

…つまり、この街のDUSTERは……。



《汚染物を急激に吸収できる物質Du。それは、

後の研究から元となる器が大きければ大きいほど

ゴミの吸収率がある事がわかりました》


淡々とした声から、実験の映像に切り替わる。

実験室には、モルモットにDuを注射する実験が

映される。注射されたモルモットは暴れ回ると

設置されたゴミに頭から飛び込み、吸収を始めた。


《これによりDUSTERを発生させますが、大量の

ゴミを消化する事ができます》


モルモットはDUSTERへと変わり果てた姿で

ゴミ山から現れた。白都の至る所で嗚咽の音が

聞こえた。そうだろう。ボクだって心構えが

無かったら、見てられなかった。

…この白都に現れているDUSTERは皆、処分寸前の 犬や猫、害獣扱いのネズミなどから出来ていた…。

たとえ、もう殺すしか無い命だとしても

流石にあんまり過ぎる…。



《さて、発生したDUSTERは白都に投棄しています。

白都には社会に不要となった人間が多数います。

現在はDUSTERの処分を主としていますが

これから作られる様々な生物の実験場として

大いに利用できるでしょう》


「…ッ?」


ボクも始めて目を見開いた。画面にはDUSTERに

勝るとも劣らない異形の生物の姿や、それをこれから

生み出すでだろう設計図が代わる代わる映った。

…そして。




-現在 E5地区-


無事、E5地区に到着することができた。

ボク達3人は外に出ると、まだ新鮮な外気に当たり

呼吸を整えた。


「この後すぐに、腐乱した腕が現れました。街の人は

ボク以外…逃げることもできずに、そのまま…」


「…そうか」


長官は短く返答すると、視線を外に移した。

そして、重々しく説明の補足を話し始めた。


「その放送の通り、DUSTERは溢れるゴミを

処分寸前の動物に喰わせて処理しようと

生み出された研究の成果だ。そして…NDSは

国が生み出したゴミの処理部隊」


「つまるところ、自作自演マッチポンプ。自分達で怪物を

生み出しておいて、それを処分する。ゴミの処分と

怪物退治の両方から信頼を得ようとしてるわけ。

面白いことを考えるわよねぇ…」


視報長官が口を挟んだ。確かに言う通り、外界の

上部の人間は無関係なモノを至る所から巻き込んで

自分の名声にしているんだ…。


「まったく…、NDSなんてのも格好だけ。今まで

存続している事が予想外だって言っていたわ。

DUSTERの量を抑えてくれれば、もっと無事に

やってこれたっていうのに…ッ」


視報長官が珍しく言葉を荒げた。DUSTERの量?

DUSTERの製造量の事?発展途上国のゴミが

多い事は知ってるけど…。そんなに急いで

作っているのか…?


「白都に送ってくるDUSTERの量だ。初期の

取り決めでは本来、1日1体が原則だった。だが、

最近ではDUSTERの改造。それどころか、失敗した

異形へいきすらDUSTERにして白都に送って来たんだ…!」


「…ッ!?」


それじゃあ、本来の廃棄物処理を超えて、外の世界の

怪物も処理させてるってこと…!?じゃあ、最近の

規格外のDUSTERって…。



「本来、DUSTERが1回に複数体現れる事は

規則違反。多種を取り込んで進化したりする事は

従来ではあり得ない。…ハジメ、お前どころか

私達以外知らない事だが、外はこの白都以上に

異形がひしめいて混沌を極めている。そして、白都と

DUSTERは文字通り見捨てられたゴミと

それを入れられる『ゴミ箱』だ」



-E5地区-


遂に白都の壁地点。E5地区に到着した。ここと

外界を隔てる壁【除菌壁】が空を突くほどに

そそり立っている。


「…ハジメ。最後に言い忘れた」


「…はい」


「お前の父親をDUSTERにし、さらにそれを

外界に解き放ち、時間を起こさせた後、捕まえたのは

ただ一人…あのテラスだ」


「!…全部、あの人が…!?」


「全て無断でな。恐らく、テラスがああなったのは

お前の父親をDUSTERに改造した時に何かを

見出したからだろう。それが何なのか…もう、

人格が消えたヤツに問う事は出来ないがな…」


長官は車を降り、白都の中心部を見る。地中から

伸びるDUSTERは腕を出し切り頭、胸までを

露わにしていた。



「アイツ…笑ってるわ…。気色悪い」


視報長官も続いて降りると小さく呟いた。

DUSTERの顔は人のものを形取っているが

腐っている。…だが、確かにその表情は笑って

いるように見えた。


「まだ、ヤツは動くのに時間がかかるハズだ。

今の内に準備を急ぐぞ」


長官は車の中から大きなケースを取り出すと

視報長官に投げ渡す。視報長官はそれに少しだけ

不快な顔をしたがケースを地面に置き、開くと

なんらかの準備をし始めた。





-A1地区 DUSTER内部-



「…。」


生きている…。楽になれるチャンスを逃したらしい。

…あの時。DUSTERが現れる直前、研究室にあった

出煙破臭剤やら酸素凝縮紙やらを掻き集めたのが

功を奏したらしい。…しかし、ゴミに埋もれて

動けないか…。体に痛みはないが、どうにも

ゴミの中に生き埋めって感じみたいだ。

外はどうなってる?新入りは………しぶとく

生きてるか…。私と違って危険な綱は渡りそうに

ないしね。長官と視報長官は外界へ高飛びして

そうだ…。じゃあ、白都ここには私だけかな。

なら…とっとと自爆でもする準備を…。

爆発しそうな薬品は、動かなくても近くにある。

火種は、私の両手にある…!

このクソ野郎に…引導を渡してやるッ!



-ピピピピッ!ピピピピッ!-


「ッ!?」


なんだこんな時に!着信…か!クソッ…!

うるさい、頭に響く…!…くッ、上着の中か。

止めるのも、一苦労だ…!


『カレンさんッ!良かった生きてるんですね!?』


うるさい音を消そうと思ったら、より騒がしい

音が出てきた…。そういえばアイツの携帯に

私のアドレスが入っているのか…。それに…

新入り、アイツ白都ここから逃げてなかったのか。



『カレンさん、聞こえますか!?…大丈夫ですか?

どこに…』


『あのDUSTERの内部にいるなら、呼吸もできない

ハズだ。返答はしたくてもできないだろう』


『ッ…ですね。…あぁ…なにか、確かめる方法は…』



笑えてくる…。長官までいるとは…。何をしに…

いや、DUSTERの排除か。責任感の強いヤツ等。

私に任せればいいのに…。畜生、ちょっと

ホッとした自分にムカつく…ッ!!




-E5地区-


「カレン、生きてるみたいよ!」


「あ…!」


人型巨大DUSTERの心臓あたりの部分。そこから

赤い炎が噴き出した…!いつもと変わらない、

恐ろしいほどの勢いで。

カレンさんは生きている。心臓あそこにいる。



「カレンさん!」


-ツーッ、ツーッ-


切れてた。




「だが…これでDUSTER排除の難易度が上がった」


興奮するボクとは逆に、長官の声は苦々しく曇った。

そして、曇った顔のまま視報長官を見る。


「ええ…。カレン救出を視野に入れるなら、

コレも使い物にならなくなるわね…」


パソコンのような装置が備え付けられたケースで

準備していた視報長官だが、一言呟くと立ち上がり

足先で軽くケースを蹴る。溜息を吐いた顔は

打開策を潰された事を表し、長官と同じように

曇った。またボクが問題を大きくしたみたいだ…。



「ああ、コレ。白都の除菌壁やら地面やらに

仕掛けてある腐散霧グレーミストのスイッチなのよ。

腐散霧は簡単に言えば、生物を溶かすスプレー。

白都の最終防御策で一度使えば理論上、全生命体が

死滅するわ。当然、人間には即死級の毒よ」


「…ッ」


ボクの視線に気付いたようで、装置の内容を

簡単に説明してくれた。長官達は、その腐散霧を

放ちに白都に来たのか…。

確かに、あんな巨大なDUSTERを倒すには

それぐらいの兵器が必要だ。でも、それを放ったら

カレンさんが…。



「どうする長官。カレン無視して撃っちゃう?」


「ッ!」


体に寒気が走った。そうだ、この人達は別に

所員の命なんて考えてない…!ダメだッ!

でも、ボクに…。止めさせられるか…。



「そうだな」


長官は短く賛同した…。どうやら、この事件は

ここで終わるみたいだ。また、何も出来ないで

誰かの事前の対応で終わるみたいだ。この人達の

やっている事は間違ってない…!…でも、少しは

なにか…。なにか、考えてくれないのか…!



「腐散霧は最終手段とする。あのDUSTERが

E地区に入った瞬間、発動。その間の対応は…」


肩に手が置かれた。どうやら長官はボクを

見ているようだけど、俯いたボクは顔を上げるまで

気付かなかった。長官は別段、熱を帯びている

わけでもなく冷静にボクを見ていた。



「ハジメ。死ぬ気でどうにかしてみる覚悟はあるか」


「ッ…はい!」


作戦なんて、もちろん無い。体はまだ寒い。

筋肉は固まって震えている…。でも、心臓だけが

上機嫌に高鳴った。

…なんとかする。なんとかしたい。

目の前の、大切な人を、今度こそ、助けたい!




「熱くなってるとか悪いけど、アレを単身で

破壊とか無理よ。ゴミが皮膚に鎧みたいに

引っ付いてる。Sリングの全力でも火傷しか

つけられないわね」


横からの溜息交じりな声に我に帰る。確かに

やると決めたなら、具体的な案がいる。

あの巨大DUSTERをボク一人で倒すのは

言われた通り不可能だ…。ボクが出来る事と言えば

黒手袋コレを使って表面に亀裂を作るくらい…。いや…

それなら、もしかすれば…!




「………火傷は、つけられるんですね?」


「…なにするつもり?」


ボクに全てはできない。だったら…。






- DUSTER内部-


………………なるほど。

助けられるのは癪だけど、助かる目処は

たったみたい。まさか、こんな時になって

コレが役立つ事になるなんてね…。

さて、酸素凝縮紙の酸素量が尽きる前に、

来るなら来い。…新入り……!


【わたしにまかせろ】



-E5→A1地区-


「カレンから返事は?」


「来ました!何か方法があるみたいです!」


長官は除菌壁に残り、視報長官とボクは

死臭の中をまっすぐ進んでいる。車内はギリギリ

消臭効果が働いており、会話もできた。

さっきカレンさんにメールを送った。


【カレンさんを助けることはできそうです。

その後、巨大DUSTERは腐散霧で倒す予定です】


しかし、カレンさんはこれに対して、何か方法が

あるような返信をしてきた。ハッタリではないと

思う。それ以上にカレンさん自身が決着を

つけたいと思っているのではないか、とも思った。

…とにかく、ボクはやる事をやるだけだ。

この後"初めて"ボク1人の仕事が始まるんだ…!




-A5地区-


巨体は大地を一歩、踏みしめていた。

ボクを乗せた車はA5地区で止まった。これ以上は

簡単な消臭では近付けない。巨大DUSTERの身体が

地面から抜け出しA2地区に足を掛けていたからだ。

Dr.が変化した巨大DUSTER。全長は間近で見ると

30mは超えている。肉と言って良いかはわからないが

人間だった頃のDr.に比べてゴミで武装した身体は

体格が良い。きっと、ボクくらいなら腕の一振りで

粉々に出来るだろう。




「思ったより皮膚のゴミが硬質化してるわ

Sリングの普通の力じゃどうしようもないわね

…ハジメ君、ちょっと手貸して」


「え…?」


双眼鏡で巨大DUSTERを確認した視報長官は

ボクのSリングと自前のタブレットをコードで繋げ

作業をし始めた。


「アイツがここに来る前には終わらせるから…」


「なにを…?」


「旧型Sリングにだけ出来る裏コード。コレ

ヨシノのSリングでしょ?一昔前のヤツは

弄ればリミッターが解除できるようになってんの…

…よし、あと10秒くらいで出来るわ」


「ヨシノさんのだって知ってたんですね」


「こんな状況になるとは予想できなかったけどね。

思えば、ヨシノだけはこんな状況を予想していた

ような気がするわね…」


「…?」


あの時のヨシノさんの記憶が蘇る。あの人は確かに

必要になる人に必要になる物を渡していたような…。



「さ、できたわ。リミッターが切れてる分

出力は凄まじいけど、負担も段違いよ。普段より

更に短期決戦を重視してやりなさい。頼むわよ」


「はい!」


視報長官は車内にあった、非常用の出煙破臭剤と

酸素凝縮紙を力強くボクの手に叩き渡した。

酸素凝縮紙の一つ口に含み、車を出る。

視報長官は一目、最後に向けるとこの場を退避した。

それを確認し、出煙破臭剤を地面に叩きつけた。




「…っ…っ!」


嗅覚を潰して、外気を遮断しても不快感が身体を

押し潰そうとする。涙や汗が全身から吹き出し

居ても立っても居られない…。でも、

当初のボクとは違う。打開策は見つけてきた。

それに、カレンさんはもっと酷い状況にいる…!

全てを解決するには、ボクの速さが何よりも

要なんだ…。やるしかないんだ…!………行くぞッ!

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