鏡の少年[#4]
「とりあえず海斗、話を聞かせてくれる?」
「あぁ、はい。えっとー……」
隣の千夏の視線を気にしながら海斗が語ってくれる。
その話は、聞いたのとはちょっと違った。
更に仮説とも大きな隔たりがあった。
「祖父は癌で祖母は自殺でした……2人の子供は押し入れの中にいました。タオルでくるまれていて、血と涙の後が目の周りにあって……1人じゃ、なかったんです。そこには2人……双子、だったんでしょうか……」
「2人……?1人しか視えなかったけど……」
麻里凪が呟く。
瑠唯がそれに答えた。
「1人はあまり好かれてなかったんだ、親たちに」
後ろからの声は、想いは、もう1人を呼んでいたのだけど。
「2人産むつもりはなかったんだろうね。もう1人は早くに押し入れの中に入れられてたんだ」
「あのちょっと待って?」
零雨が手を挙げて言う。
「祖父祖母たちの話してるのよね?その2人の子供は、海斗の親たちになるんじゃないの?なんかちょっとおかしくならない?」
瑠唯が口を開くが海斗が先に
「養子、なんですよ」
と言った。
「俺の母親、祖父祖母の養子なんです」
「はぁ?」
「子供は欲しい。だけど赤ちゃんから育てるのは面倒くさい。なら少し成長している少女を養子に、そういうわけです」
細く息を吐いてから瑠唯は再び口を開いた。
「2人の子供を産んだはいいけど、2人には赤ちゃんを育てられなかった。育児に疲れた2人は子供を押し入れの中に入れ、放置。その後、祖父に癌が発見される。で突然言ったんだ。『やっぱり子供が欲しいって』。で祖母が動いて養子をとった。今の海斗のお母さんがそう。子供が高校生になった頃、父親は死んで、母親はその2年後に自殺。残されたお金で海斗のお母さんは生活して、バイト先で1人の青年と会う。それが今の海斗の父親」
「なんだか複雑ね…って瑠唯、なんでそんなこと知ってるのよ」
麻里凪が問う。
海斗も目を見開いて聞いていた。
他人……部外者が身内話を知っていたんだから当然ともいえる。
「聞いた……というより流れてきた」
「なるほど……」
「映像化して流れてくるってことは相当だね。忘れられたくなかったんだって」
海斗の方を見て伝える。
「鏡に向かって『忘れない』って呟いてみ?」
視線が鏡に、海斗に集まる。
1度深呼吸をしてから、言葉を放った。
鏡は光を放って──……
「んー、とりあえず解決ってことでいいのかしらー?」
麻里凪が背伸びしながら言う。
海斗の家から帰ってるところだ。
「そうなんじゃない?あとは海斗次第だよ。にしても不可抗力とはいえ踏み入ったこと聞いちゃったなぁ……」
「あの」
後ろにいた千夏が声を出した。
「んー?」
「あなたたち、一体なんなんですか。何者何ですか」
麻里凪が口を開きかけたので制する。
まぁその疑問もわからなくはない。
「会った時に言わなかったっけ?オレたちは──」
新設した部活の名前を、部長である瑠唯が千夏に放った。