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影無高校オカ研部!  作者: 宮居 莉雨奈
オカ研部始動!
3/18

影無高校オカ研部始動!

季節は春。天候、快晴。

入学式日和とか校長が話しそうな天気。なんだ入学式日和って。

体育館なら関係ないって。

「雲1つのない月曜日」

そっと呟いて、写真を撮る。

「さて行きますかぁ」

本日は影無(かげな)高校の入学式。

目の前にいる少女が津久和屋(つくおや) 瑠唯(るい)

今日から影無高校の生徒になるのだ。

「るっっいーっっっ!!」

「うわっっ!」

女子学生─声で誰かはわかってる─に後ろから飛びつかれた。

「零雨っなにすんだよあぶねぇだろ」

「おっはよんっ同じ高校で嬉しいよ!私は!!」

「人の話を聞けや……オレは嬉しくねーよ……」

天草(まあくさ) 零雨(れいう)。中学からの仲。影無高校を受験したらしく、受かった。

同中の影無高校受験者の中では1番のバカ。

そして煩い。

「制服可愛いよねぇ」

受験の決めては制服らしい。

影無高校の制服は、赤のチェックスカートに同じ柄のベスト、紺のブレザーだ。

「人の話を聞けって言ってんのになぁ……」

「ん?私都合の悪い──」

「知ってる、言わなくていい」

都合の悪いことは聞こえない、という零雨のよく言うセリフを遮り、歩き出す。

「折角だから一緒いこーよ」

と零雨が隣にくる。

それに返事を返すことなんてしない。どうせなに言っても無駄だからだ。

「あ、部活決めた?」

「オレ、部活の為に影無に決めたんだけど」

「そうだったけ?なに部?」

「オカ研」

「あーそうだったね。ってかこの高校謎すぎるよね。人数いれば1年でも部活作れるんでしょ?」

影無高校は5人で創立可能。

長と副がいて、顧問がいて、部員が3人いれば、誰でも部活を作れて、部室もくれる。

「だから志望したんだって。零雨、部活は?」

「オカけーん」

運動系の部活に入ると思っていたので予想外の名前が飛び出し驚く。中学はバスケ部だったはずだ。掛け持ちで卓球もやっていた。瑠唯も卓球だったのだ。

「は?」

「いや、だから、瑠唯と同じ」

指を1本立ててそれを振りながら答える。

「はぁ?」

同じ部活だと……またこいつと?

「だってだって、人集めからやらなきゃじゃん?私いたっていいじゃん??」

「お前、オカルト興味あったっけ?」

「え、うん。好きだよオカルトもん。知らなかった?」

こいつがオカルトに興味があっただと……意外や意外……勿論のこと、

「初耳だ」



「えー、本日はお天気に恵まれー、入学式日和となりましたー…………」

影無高校の体育館。

予想通りの言葉を吐く校長。長ったらしい話。

とりあえず、今は聞いても仕方ないであろう話は聞き飛ばす。

「さて、本校の部活動の話ですが……」

やっと部活の話しがやってきた。

新入生で、新設希望者はあらかじめ、書類を提出する必要がある。

「今年は3つ、新設を希望するところがあるようです。毎年のことですが、珍しい部活動のようですね……。人が集まったら新設決定。うちの部として正式に認められます。先に提出された書類の内容から、顧問は決めてあります。提出者はあとで学年室の方へ行くようにしてくださいね。さてではー……」

今年は3つもあるのか。というかこの学校、いくつ部活を持っているのか……謎である。

毎年、1つは足されるらしい。

顧問を探す手間は省けた、が、余計なことを言ってくる奴じゃなければいいのだが……ハズレ教師は帰るべし。

校長の長ったらしい話しが終わり、教師に戻ってHRを行なうそうだ。

それが終わったら、沽榴を連れて学年室に行こうかな。

紀月(きづき)沽榴(こりう)

小学生からの仲で、男子で1番仲が良い。

小、中、高と同じ学校で、家も近く、登下校を共にしている。

オカ研部を作ると言ったら入部する、と言ってくれた。

昔から可愛くて、女子力が高い。

とにかく言わせてもらえば、可愛いのだ。

そして優しい。常に自分のことより相手のことを優先する。

そんな沽榴とは同じクラスになることが出来た。これでまぁ色々と楽になりそうだ。

あとは副部長予定の四櫛(よしくし) 麻里凪(まりな)。かなり大人びている彼女とも同じクラスになれた。

1年F組。東側階段から1番近いクラスだ。

零雨はA組らしい。

「零雨大変そう。今年の1Aの担任、厳しい人らしいのよ」

「え、そうなの?」

話しかけてきたのは麻里凪。中学からの仲で、オカ研に入り副部長をやる、と言ってくれた子。もうこいつ、本当に高校生かと疑うほど大人っぽい。色っぽい。

そして先輩と仲が良いらしく、2,3年に知り合いがいるとのこと。

「そうなの。授業中の態度とか、SHRの受け方とか。席替えもあまりしないらしいよ。去年受け持ってたクラスは1回もしなかったとか」

長い髪を後ろに払いながら言う。

「はー、大変そうだな……お、沽榴っ」

校舎内廊下で沽榴の背中を発見。

「あ……瑠唯。先に行ったと思ってた」

「ちっとね」

と麻里凪の方に首を振る。

「成る程」

3人で歩く。

「F組の担任ってどんな感じ?」

沽榴が聞いた。

「えー、優しいけど、クラスのことあんま見てない人。生徒だけでやってくれって感じかな」

少々、めんどくさいタイプのようだ。

文句を言われなきゃなんでもいいが。

そんなこんなでクラスについた。

担任の亀井(かめい)は麻里凪の言った通り、優しいって感じだが、生徒に興味がないように見える。

今日はLHRをやって終わりらしい。

簡単でいいから自己紹介をしよう、ということになった。

出席番号順に、名前、元中、入部予定の部活を言っていく。

沽榴がこちらを見た。

「オカ研のこと言う?」

と口が動いた。オレは首を横に振る。

まだ、明かさなくていいだろう。沽榴は頷いた。

麻里凪の方を見る。遠いので指で指示を出す。

3つ目、×。

……通じたようだ。麻里凪も頷く。

全員の自己紹介が終わり、今日は解散となった。



「沽榴ー、麻里凪ー」

2人を呼んで学年室に行く。

「1年F組、津久和屋です。主任はいらっしゃいますか」

主任の名前を知らなかった為、そう呼ぶ。

「んー?あぁ、オカ研な」

そう言って手を上げた男の先生の元へ行く。

「顧問、B組の担任の吉澤(よしざわ)先生だ。教科は国語。お前ら全員F組だな。多分まだクラスにいるから会ってこい」

「わかりました。失礼します」

学年室を出て、B組に向かう。

「アレが主任かー、好かない」

麻里凪が言う。それに同意する。

「オレも。第一印象が最悪だった」

入学前に、書類提出の為会ったのだが……その時は最悪だった。あいつとはあまり関わり合いたくない。

「態度も気にいらないわ」

「僕も好まないな………吉澤先生は、良い先生だといいね」

ここ3人はみんなして主任のことが好きでないらしい。

さて、こちらはどうかね………

「こんにちは。吉澤先生ですか?」

B組の扉を開けて目が捉えた人物に話しかける。

「あぁ、待ってたぞ」

まぁそこに座れと、席を指差す。

素直に従っておくことにする。

「わたしが、オカ研の顧問だ。これでも昔は視えたんだぞ。お前らどうなの?あと人数と長と副、決めて」

この学校では珍しく若い女性。

しかし男性っぽさがある。

「………長はオレです」

手を上げて言う。

「副はこっち」

と麻里凪の方を指差した。

「あと2人は今週中に」

「ほー………で、お前、視えるの?」

「オレとこいつは。一応」

とまた麻里凪を指差した。

「ふーん………じゃ、名前教えて」

嫌いではないが、好きにもなれないタイプ。

オカ研なら顧問なんていなくても活動できるから設立したら正直どうでもよくなりそう………

3人が名乗る。それを吉澤はメモった。

「みんなF組かー…宛てあるの?」

「A組の天草が入部予定です」

「あー、あの子ね。天草零雨」

「知ってるんですか?」

「A.B.C組の間じゃもう有名人だよ」

その言葉には首をかしげるしかなかった。



「あっまってたよーん」

吉澤の話が終わりB組から出て、校門前。

「零雨、いたんだ」

「だから待ってたんだって。顧問誰?」

「吉澤」

「え、嘘嘘うそウソっマジで⁉︎」

「マージで」

嫌なのかなと思ったが、違った。

「やったっっっ!あの人なら楽しくなるよーっ」

とくるくる回り始める。

「あの人昔は視える人だったんだよーっ今はあまりって感じらしいけど」

「………知人?」

麻里凪が聞いた。

「え、うん。言ってなかった?」

勿論のこと、

「初耳」

3人がハモった。

A.B.Cの3クラスで有名になった理由を聞いてみると

「会った瞬間抱きついちゃって☆」

だそうだ。

引っ越し前の家が近くで、時々お茶会を開くような仲だったらしい。

吉澤が引っ越して、連絡が取れなくなっていたが、受験日に他先生から吉澤の話を聞きまさかと思っていたと。

そして今日再開。

同性でしかも生徒と教師となればまぁ話題にはなる。





次の日。

登校すると早速声をかけられた。

「ん?」

振り返ると見覚えのない男子。

「津久和屋さん、ですよね?」

「そうだけど誰」

「オカ研に、入部希望しますっ!」

と入部届けを出して来たんだから驚いた。

話を聞くとB組で、零雨が騒いでいるのを聞いたらしい。

あいつ………っ

吉澤も挨拶時に"オカ研の顧問を予定"なんて言ってたみたいだ。

それで、部長であるオレのところに届けを出しに来た……と。

吉澤にはもう渡したので。なんて言ってくるこいつ……守屋(もりや) 海斗(かいと)は視えないがオカルト話は好きらしい。

さらにちょっと去年オカルト的体験をしたと言う。

今でも時々起こる現象──……解決できないか、と聞いて来た。

「活動できるようになったら、考える」

ともあれこれで人数は足りるわけだ。

今日から活動とか出来るのだろうか。



暫くは授業がなく、学校見学や部活動見学等ができるらしい。

勉強したい奴は、自習室があるのでそこで、とのこと。

はじめ1週間は午前帰りだそうだ。緩い。

学校見学が終わり、オレは沽榴と麻里凪を連れ吉澤に会いに行った。

「吉澤先生ー、人数集まりました」

「おぉ?早いな。もう1人誰よ」

吉澤が名簿にチェックを入れながら言う。

「ここのクラスの守屋ですよ」

「おーぉ、あいつな、あの特徴ないけど優しそうな奴。よしおっけ」

顔を上げ、こちらを向く。

「んじゃま、部室行きますか。んで、部員で校長室行くぞ」



と言うわけで、部員を急遽集め──偶然にも守屋は零雨のところにいた──とりあえず、部室を見る。

「ここだ」

鍵を取り出し開けた。

他の部室とは離れてる1室。

電気をつけ、部屋を見渡す。

「………掃除されてなかった部屋を、与えるんですか」

目の前に広がった光景は凄まじかった。

蜘蛛の巣はかかってるし、埃まみれだし、物は散らかってるー…

「………」

ちらりと吉澤の方を見る。

「校長に挨拶行って、掃除だな」


校長室の扉を吉澤が開け、校長と対面した。

「今年も無理かと思ってたんですがねー」

聞くと何年か前にもオカ研を作ろうしていたところがあったらしい。

「人数がいるので、認めましょう。部長は?」

「自分です」

と手を上げる。

副は?と聞くので麻里凪を示した。

「はいはい、決まってるみたいだねおーけー。んじゃオカ研のみなさん、よろしくお願いしますっと」

書類にスタンプが押される。

これで、正式な部活として認められたことになる。

「それ、部室に置いといて。失くすなよ」

「了解です」

「んじゃ、掃除、頑張れ」

と校長室から出て言う。

吉澤は掃除をしないと……

背中を見つめ呟いた。

「じゃ、口出し禁止で」




「掃除用具何処にあるのさー」

「隣の借りてこよう」

「雑巾とバケツーっ」

「とりあえず今日中に全部片付けるよ」

と汚い部屋の掃除を始める。

とりあえず綺麗にしないと活動出来ない。

「活動方針とかあるの?」

「そこらへんは後で考えるー」

「決まってんじゃないの?」

「みんなの意見も聞きたいじゃん?」

口を動かしながら手も動かす。

流石オカ研のメンバー。話題はオカルト話だ。

「ポルターガイストとか?」

「あれは体験したことあるわ」

「幽体離脱とか……」

「戻って来れなくなりそう」

楽しい話をしながら掃除を進める。

要らない物は全て袋に詰め、新たに零雨が持ってきた本棚や沽榴が持って来た本、守屋はラジオを持って来ていた。

「こんなもんでしょ」

「おつかれーい」

ざっと90分くらいかかって掃除は終わった。

「さ、部長、あれ書きましょうか」

長めの板を引っ張り出し机の上に置く。

「書くかー」

墨汁と筆を用意する。

「綺麗にねー」

「いつも通りで、いいよね?」

零雨が言ったのに返す。

「うん、いつもので大丈夫」

と沽榴が言ってくれた。

書き始める。

「えー…もしかして部長さん、字上手いんですか?」

「いや」

「全然」

「あたしの方が上手いわよ」

その他部員が次々に否定の言葉を並べる。

予想外の答えに守屋は戸惑っている。

「えー………」

「ただし、習字は別」

「そうそう」

「ねー、いつもあぁやって書けばいいのに」

「おい書けたぞ」

他部員達があーだーこーだ言ってる間に書き終わった。

「あんな、毎回あんな風に書けると思うのか?疲れんだぞ」

「知ってる知ってるー、わぁやっぱり違うわぁ」

「流石だね、瑠唯」

「どーも。じゃこれもう掛けていいかね」

「掛けよ掛けよ!!」



部員全員が部屋の外に出る。

前扉のすぐ横に、それを掛けることにした。

「いい感じじゃない」

「おーお前ら掃除用具終わったのか」

吉澤がやって来た。なんというタイミング。

「綺麗になってんなー……で、これは看板か」

吉澤が掛けたものを指で示して言う。

オレは頷き、


「影無高校オカ研部っ始動!!」

と高らかに宣言した。



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