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砂地の敗者

作者: 連邦士官

砂漠の戦いも最早、終わりが近いのが分かっていた。


一つの国に対して、連携は取りづらいものの大量の兵員と武器を連合は投入して制圧作戦を各地で展開した。


「諸君ら我らが祖国は、今まさに取り戻そうとされている。かの国による不当にし…」

突如として、銃声が鳴り響き多くの人間が赤く染まった。


「演説をぶつのは、構わんが時と場合を考えろよ。」

銃を撃った方の隊長格がタバコをつけながら言った。


隊長は、部下が負傷者無しや反乱分子の……と言う声を聞き流しながら今後について考えていた。


この戦争、どう考えても負けるだろう。薄汚い異教徒とメッカを守る聖戦ならば勝てるだろうが、恐れすぎて死体にも銃弾を撃ち込む少年達ばかりに、この隊も成り下がってしまった。

初期は、屈強で凛々しく正に祖国の栄華を表した様な隊だったが、連合の攻勢に一人欠け二人欠け今や送られてくる兵員は、乳臭さも抜けない少年達ばかりで、後方に下がり反乱分子を始末する毎日に嫌気がさしていた。


いっそのこと、エジプト辺りに難民として潜り込むか……この鉄と硝煙の異臭漂うくそったれた場所からおさらば出来るならそれもいい。


タバコを新しいのに変えると部下の声に耳を傾けた。


「倉庫に調べに行った傭兵共の言うことでは、数百と言う武器が自由を語らう独善者からコイツらに渡されていた様です。」

死体を軽くブーツに当てると報告を終わりますと言い残し去っていった。


「アメリカか……奴らの上陸を許した時点で敗けは決定しているさ……。」

ゆっくりとタバコの煙を口内で楽しむとそう一人で呟き基地とは名ばかりの接収した家に帰っていった。


日が明ける前に、街に轟音が響いた。


「何だ!」

隊長は、銃を引き下げ走った。


無線から、南側で交戦状態、東側は戦線後退、北側は壊滅と報告が聞こえ司令部であるここに指示を仰いでいた。


おかしい……当番がいない。外から音が聞こえるが内側から音がしない。

十人ばかり詰めている筈だぞ。


気が付くと無線からの音が途切れた。


「くそ、こんなときに考えなんて……返答しろ、こちら司令部こちら司令部。」


返答は無い。


次第に無線が使えなくなっていった。ジャミングされているのだろう。


すっと体を半身ずらし銃を構えた。


「本国に報告するには、離脱するしか無いか。」

じんわりと額から汗が滲み出た。


壁際や角、階段に至るまで敵が潜んでいるかのように感じる。


残弾数を確認すると壁に付いた梯子から落ちるように降りていった。


まず近くに有った車庫に入ると床下から銃弾を取り出し、敵の目が此方に向くようにロケット弾や持ちきれない弾薬と車のガソリンを固めて時限爆弾を用意した。


絶対に無傷で撤退してやると心に決めて走った。


「ハッハッ。」

満身創痍の少年が武器を求めて車庫に駆けずり込んだ。


「うん?ジョン二等兵。コリンズ二等兵!確認しろあの車庫に動くモノが有った気がする。」

小声で伝えると赤外線ゴーグルをオンにした。


そして、吹き飛んだ三人とも。


街の形を利用し走り続ける隊長は、やっとの思いで北側に着いた。


ここに敵が居るのか?いや待てよ。後方で爆発音がこだました。


車庫が爆発したのだろうと思ったが違った。それは、アメリカ軍の砲撃が開始されたのだった。


「仲間ごと、吹き飛ばすつもりか!」

銃を持ち直すと再び北側を確認すると戦車と歩兵が此方に来ていた。


捕虜になるぐらいなら口に加えた銃の引き金を引いた。


不発だった。拳銃を捨てると銃をしっかりと構えて、神に祈りを捧げた。


「我が祖国に栄光あれ!」

手榴弾をまとめた物を投げて銃を撃った。


空に日が昇り始めた時、街を制圧した兵士が死体を片付けていた。


黒い雲が空を包んでいた。

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