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壁の向こうのB  作者: カカオ
第4章
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繁盛する金物屋

 小鈴と大は両親探しを打ち切り、スラムから馴染みのあるサンザンロードへと帰ってきた。

 それは本当の意味で『打ち切り』だった。

 もう<ゾーン・B>は隈なく捜したことになる。

 だが小鈴は何か引っかかるものを感じている。

 ――なんかちょいミスがあるような気がするんだよねぇ。

 小鈴は学校のテストでも名前を書き忘れたりすることがある。そんなような、些細だけど致命的なミスをやらかしているような気がしてならない。

 大はというと、何も進展はない上に増山啓造に以前も尾行されていたことがショックらしく、彼にしては珍しく無口だった。

 ――でもサンザンロードに戻ればきっと元気出すよ、大さんは。

 小鈴のその読みは甘かった。

 そこは馴染み深いサンザンロードではなかったのだ。

 人が多いのはいつものことだが、特定の店の前に行列ができている。金物屋だ。

 その長い列はサンザンロードの入り口近くまで続いているようだ。列に並んでいる人々はどの顔も沈鬱な様子で、いつもの笑顔は窺えない。

 ほかの店はというと、ほとんどがシャッターを閉めている。シャッターの上から長い板を十字に打ち付けているところもある。

 サンザンロードお馴染みの賑わいは、今や塵ほども感じられない。

「みんな、なに買ってるんでしょうね」

「――同じだ」

 大が行列を見ながらつぶやく。彼の目は行列を見ているようで、実はもっと遠くを見ているようだ。

「同じ?」

「ああ。<ゾーン・B>がバーサーカー症候群の対処法をまだ見つけられなかった最初の頃と同じなんだ。あの頃もみんな武器になりそうなもんを買いまくってたよ」

「武器って……金物屋だと…………」

「どうせ包丁だろ」

「包丁って、戦うつもりなんですか。化物と」

「それはないだろ。ただいざってときのため、ってことじゃないのか。とりあえず持っておけば少しは安心できんだよ」

「大さんは買わなくていいんですか?」

「買わねえ。なんか嫌なんだよ。あんなふうに怖がってるのがさ。楽しくないだろ?」

「まあ、楽しくは――あ」

 小鈴はそこで思い出す。バーサーカー症候群になる原因、それは……。

「楽しく生きないと、バーサーカーになっちまうぜ?」

「……そうですねっ」

 小鈴と大は、行列の横を通り過ぎ、『BAR無菌室』へと帰っていった。

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