捕らわれの姫君
季節は秋へと移っていた。
けれど、少女の生活に変化はない。
「今は、秋。次の季節が冬。その次は春と続いて、夏。そしてまた秋」
この間ダーナが持ってきてくれた暦を見つめながら、歌うように言った。
「季節は全部で、四つ。月は十二カ月。それぞれの季節が三つ分」
お復習いをして、くすくす笑う。誰も何も言わないから、独り言を言うのがすでに癖になってしまっている。そして、それを癖だと、あまり感心できることではないことも、彼女は知らないでいた。
「月は……空にあるはずの月ではなくて、暦の月、ね。一月、二月、三月、と。そして、今は十月。秋、だわ」
秋は収穫の季節だという。そして、少女が食べている食物が取れるのも、ほとんどこの季節か春のものだと、ダーナは言った。
ダーナ。その彼女はしばらく来ていない。この間きた時、しばらく忙しくなるから、あまり来られなくなると言っていた。少女にとっては、淋しいことこの上ない。特に暦をもらい、見方、使い方を知った今では、よけいに待つ時間が長くなったような気がした。おそらく、毎日日付を見、もう何日来ていない、次来るのはいつなのかと、しょっちゅう数字とにらめっこをしているせいなのだろう。
お復習いもそのうち飽きてしまった少女は、仕方なしに最近読んだもののうちで、一番気に入った本を取り出してきた。
高い塔に住んでいる女の子の話だった。
何より、あの歌にぴったりだと思った。確かなことを知る術はないが、けれど、彼女の中では、あの歌のこの物語そのものだった。
「……あの人が来る」
ぽつりと、声を落としてつぶやく。ダーナに禁止された時から、彼女はあの歌を口ずさんではいなかった。かわりに、心のなかで歌っていた。思い出すな、とはダーナは言わなかったから。そんな理由を付けて。
でも、と思う。
でも、今はダーナはいない。そして世話する女も、ここに来てはいない。ならば、歌っても構わないではないのか。誰が聞いているわけでもないのだ。
しばし躊躇した後、少女はすうっと息を吸い込んだ。
いとしいあの人が来る
私に逢いにやってくる
服を整え
長い髪を梳き
あなたを迎えるの
いとしいあの人が来る
私を救いにやってくる
髪を編み
紅をさし
あなたを迎えるの
少女が歌ったのは、ここまでだった。けれど、答える声がある。
いとしいあの人が来た
私を望んでやってきた
声は聞こえ
長い髪を垂らし
あなたを迎えるの
彼女はハッとして、声の方を振り返った。そして開かれた扉の所に、二人の男が立っているのを見つけた。
「ラプンツェルだな」
少女の歌に答えた声も、彼女の声ともダーナのそれとも質が違う、男のそれだった。
いつの間に、鍵を開けたのか。おそらく彼女が歌に夢中になっている時に違いない。でなければ、その開けられる前に気付いたはずだ。
男たちは、片方は非常に若く、もう片方は壮年に差しかかっているだろうという歳に見えた。
「あなたは……何?」
目をパチパチと瞬かせながら、彼女は尋ねた。ダーナと世話の女以外に、始めて見る人間だった。そして、彼女たちとは、何もかもが全部違っているようだった。
彼らは背が高く、体つきもがっしりとしていた。髪は長くない。動きやすそうな服を身に着け、長い棒状のものをそれぞれ腰にさしていた。それは剣だった。
若い方が声を上げて笑った。魅惑的な声だ。そして、この声こそが、さっき少女の歌に答えた声だった。
「聞いたか、シャル。誰とか何者とかじゃなくて、何、ときた」
何がおかしいのだろう。対する歳をいった方も、苦笑いを浮かべている。少女は首を傾げた。
「では、どう言えばよいの? 誰、と言えば? それとも、何者ですか、と言えば正しいの」
「いや。……そうだな、それが正しい。だけど、何、でもかまわん。けど、あの女に対しては使うなよ。そんなことしたら、ヒステリックにわめかれることになるからな」
「あの女?」
「そう。お前も知っている奴だ」
そして、何がおかしいのか、再び笑う。少女は唖然として、男たちを交互に見つめた。
突然の闖入者はしばらくクックッと喉を震わせて笑った後、気をとりおなしたように、少女のいる居間の方へと歩いてきた。
少女は驚いたものの、恐れはしなかった。そもそも恐れという感情自体、彼女は知らなかったのだった。目の前に立ち、しげしげと彼女を見つめる若い男の方に、もう一度尋ねる。その男の方にしたのは、何となくこちらの方が上だと思ったからだった。
「あなたは……誰? 何なの?」
「俺? 俺はラバール。こっちの男はシャルといって、俺の従者だ」
「外、から来たの? どうやって? どのようにして?」
どうして、とは聞かない。今まで三人の人間にしか出会っていない彼女には、外にも何人もの人間がいて暮らしているということは、知っていても実感はない。だから、ここが人けのない荒野に建っていること、そしてそこに訪ねるのには何かしらの用件と理由があるのだとは、考えもしなかった。
若い男――ラバールは、彼女の言葉に目を丸くした。そして、傍らにいるもう一人の男、シャルに声を落として言った。
「どうやら、すべてが事実らしい。……彼女は、何も知らないで、ここに閉じ込められているんだ。扉の外の頑丈な鍵がその証拠だ。なお悪いことに、この姫君にはその自覚もないようだな」
「……酷なことをしますね」
「全くだ」
ラバールはうなずく。それから、きょとんと彼らを見つめる少女の方を振り向いた。
「俺たちは、ここまで馬で来た。馬は知っているか?」
少女はうなずく。前にダーナに聞いた、騎乗用の動物のことだろう。
「どのようにしたってのは、簡単だ。開けてもらったのさ。ここのもうひとりの住人に」
世話役の女のことだ。
「それで………」
何を思ったのか、ふと言葉を途切れさせる。そしてぐるりと部屋を見回したかと思ったら、次は少女の前の椅子にどかりと座り込んだ。
「今度はこっちから、質問だ」
シャルの方は坐らない。ラバールの後ろで立っている。
「お前の名前は?」
「……え? 名、前?」
「そうだ。名前くらいあるだろ? 何てあの女に呼ばれてた?」
あの女、とは、どうやらダーナをさしていたらしい。ようやく理解した少女は正直に言った。『幸運の姫』だと。
男たちはびっくりしたようだった。そして、その顔に憤慨したような表情を浮かべた。
「名前さえつけていないのか!」
怒りは、特にラバールの方に強い。シャルの方は、眉を不快げに潜めただけにとどめている。
「たいした親子ですね」
男たちの目に、少女への憐れみのような、柔らかなやさしいものが表れたのは、その時からだった。興味深げなのは変わらなかったが、それは幾分やわらぎ、かわりに何か強い決心みたいなものが浮かんでいた。少女の為、そして半分はここにいない女性とその一族への、憤りの裏返しでもあった。
少女は知らない。まさに、この瞬間から、彼女に係わる全ての運命が、動きだしていたことを。そして、その鍵を握るのは、まさしく目の前にいる男であったことも。
何も知らされず、世界の何事も理解することもなく、小さな館の中で生かされていた少女は、目の前で怒りをあらわにしている男たちに、不思議そうな視線を向けていた。恐れもしらない彼女は、当然怒るという感情も、知らなかったのだ。少なくとも、この時まで見たことすらなかった。
「よし、俺がお前に名前をつけてやる」
けれど、ラバールが憤慨もあらたに、宣言するようにそう言った時は、少なからず驚いてしまった。
「……付ける? 名前、とやらを?」
「そうだ。名前は個人を指す固有名詞だ。その人間だけの大切なものだ。名を持たぬ者ななど、いやしない。例外は、いるけどな」
なんだか、すごく不機嫌そうに言う、と少女は思った。驚いたのは、名前をつける、という内容だけではなく、怒りや憤りといった強い感情の表れにもびっくりさせられたためだった。世話役の女は怒るどころか喋らない。ダーナはやさしくしてくれていて、怒ったりなどしない。当然、彼女自身も何かに怒ったり、大声上げて笑ったりなんてことは、したことがなかったのだ。
不思議な、人。
自分とはそうたいして歳は離れていないように見える顔を、じっと見つめる。その彼は、彼女の名前をどうしようか、と思案しているようだった。と、男は急に顔を上げた。
「決めた」
にっと笑う。思わず引き込まれそうな笑顔だ。ダーナの上にも見たことがない、明るく華やかな裏のないものだ。
「お前の名は、フェリアだ。どうだ、いい名前だろう」
後半は、後ろで控えているシャルへ。その言葉を受けて、シャルは静かな微笑みを浮かべた。
「ええ。妖精、という意味ですね。姫君にはぴったりです」
「俺もそう思う。いいか、『幸運の姫君』? 今から俺たちはお前をフェリアと呼ぶことにする。それが、お前の名前だ。お前だけの名前だ。『幸運の姫君』というのは今日で止めにしろ。自分の名称だとは思うな」
少女――たった今フェリアと名付けられた彼女は、きょとんとラバールを見返した。わけが判らなかった。どうして『幸運の姫君』ではいけないのか。どうして、名称だと思ってはいけないのか。
……ダーナがそう呼んでくれているのに。
けれど、フェリアという響きが、なぜか彼女の胸にやさしく染みてくる。
「妖精って……お話の中に出てくる、不思議な力を持つ人達でしょう? それが、わたしの名、になるの? フェリア、とこれから呼ばれるの?」
「そうだ。伝説や民話の中に出てくる、美しい容貌と無垢な魂をもつ人外の者たちだ。これほどお前に相応しい名はあるまいよ」
フェリアはにっこりと笑った。褒められた気がして、嬉しかった。それに、どうしてだか『幸運の姫君』と呼ばれるより、フェリアの方が喜ばしい気もした。
だが、反対にラバールとシャルは、汚れのないその笑顔に表情が曇った。
「……どうかしたの?」
「シャル……。殺すのは取りやめだ。俺には出来そうもない」
「わかっております。私も同じですよ」
「……殺す?」
聞き慣れない、けれどどこか不吉な響きのある単語に、フェリアは首を傾げた。そんな彼女をまぶしそうに目を細めて見つめ、ラバールは言った。
「……俺たちは、お前のことを知った。そして見に来た。あいつらの幸福の象徴である、お前を。そして、もし噂が本当なら、お前を殺してしまおうと思っていた。……怖いか、俺たちが? でも、お前がラプンツェルを歌っているのを聞いた時、そんなことにはならないだろうとも、思った」
「ラプンツェル? では、やはりあの歌はこの本のことを歌っていたのね……?」
フェリアの顔がぱぁっと明るくなった。そして、手に抱えていた本を二人に差し出してみる。彼女にとって、二人がどんな目的でやってきたのかは、問題ではなかった。彼らは彼女の知りたいことを、教えてくれたのだ。
その本の題名を見た男二人の顔に、どういうわけだか、苦笑が浮かんだ。
「捕らわれの姫君が、ラプンツェルを読んでいるとはね……」
「ねえ、さっきわたしの知らない続きを歌っていたでしょう? この歌は、どういう時に歌うものなの? そして、ほかに続きはもっとあるものなの?」
ソファから身を乗り出して、フェリアは尋ねた。そんな彼女には、先程のラバールのつぶやきなど聞こえてはいなかった。
「お前はさっきから、質問ばかりだな」
苦笑まじりの声。
呆れられた? フェリアはしゅんとなって、視線を落とした。
「……だって、ダーナは教えてくれなかったんですもの……」
「そりゃ、言いたくもないだろうな。生まれた時から塔に閉じ込められている乙女が、自分を救ってくれる男を待つ歌のことなど。……ことに、自分がそうやって物語の魔女よろしく閉じ込めている娘が、民衆の間で男の求愛を待つ歌として慣習になっている古謡を、何気なく歌っているなんて。何も知らないとはいえ、あの女には面白いはずなかろう?」「……あなたは、ダーナが嫌いなの?」
彼のダーナを言う時の言葉と声音は、冷たさと嘲笑を多分に含んでいた。フェリアには判るはずもなかったが、憎々しげでもあった。
「嫌いだ」
即座に言う。困って思わずシャルの方を見上げたフェリアは、視線が合った彼が、小さくうなずくのを見た。それで判った。シャルも、ダーナを嫌っているのだと。
「どうして? ダーナはとてもやさしいわ。いろんなことを教えてくれるのよ?」
彼女を嫌う人なんて、想像できない。そう言うフェリアに、ラバールは皮肉げに笑った。
「お前には、そうだろう。何しろ大事な『幸運の姫君』なんだから。何も知らない、けれど好奇心旺盛な女を懐柔するのには、適度にものを教え、適度にやさしくて、信用を勝ち得るのが一番だ。お前は、あれの言うことを一度として疑ったことなどないだろう? そして、あれの言葉を絶対だと思っている。間違ったことを言うわけがないと」
フェリアは、彼が何を言いたいのかわからず、戸惑いながらも、うなずいた。ダーナは、だって彼女に唯一ものを教えてくれた人だ。今ここにいる彼らを除けば、話すことのできるただ一人の人でもある。それを、どうして疑うことなど出来よう。ダーナはフェリアの世界の半分を占めているのに。
「それが、あいつの目的だ。お前を、自分一人に引きつけておくための。だから、お前の世話をしている女にも、話すことも、笑うことも、当然お前の質問に答えてもいけないと、禁じているんだ。破ったときは、命がないと脅してもいる。……どうだ? これでも、あの女を信頼するのか?」
フェリアは答えない。びっくりして、口も聞けない状態だった。そして、到底、信じられないとも思っていた。彼が何を思ってそんなことをいうのかも、さっぱり理解できなかった。
「寝耳に水か。まったく、うまく手なずけたものだ」
ラバールはため息をつきつつ、その顔に皮肉げな笑みを浮かべた。
「……ならば、お前にある物語を教えてやろう」
「物語?」
「そう。捕らわれの姫君と、生き恥をさらしている王子の物語さ。
――今から二十年も前のこと。
ウィナジットの国の王は、王妃が死んでから二年の後に、若い貴族の娘と再婚した。娘には恋人がいたが、周囲に無理矢理別れさせられて、王に嫁いで王妃になった。そして、結婚して一年後、二人の間に王子が生まれた。王はすでに年をとっていたが、前の王妃との間には子供がなく、この王子がただ一人の息子だった。
だが王には腹違いの弟がいた。妾腹のため、王位継承権を与えられずに臣下に下り、有力な大臣として政治に深く係わっていた王弟には、けれど野心があった。王位につくという野心が。
そして王弟は、すでに娘もいたが、妻が亡くなっているのをいいことに、王妃に近づいてきた。もちろん、王位を狙ってのこと。そして――いろいろ忙しい王に顧みられなくなり、孤独であった若い王妃は、愚かにもそれにのってしまったのさ」
淡々と言うラバールの横で、シャルがふっと苦しげな表情で視線を落とした。
まるで影のようにラバールに付き添っているシャルは、まだ三十代半であろう。よく鍛えている騎士らしく、威風堂々としている。けれど、その静けさと深い瞳に浮かんでは消える苦しみが、そして何より、すべてに疲れ切ってしまっている表情が、彼をもっと年に見せていた。
「それで……どうしたの?」
そんなシャルを視界の端に留めながら、フェリアは先を促す。
彼女の目の前にいる二人は、何も彼もが対照的だった。それでも、二人とも途方もないものを内に抱えている点だけは、同じなのだ。種類の違う、けれど似通った情念を……。そして、どうしてか、そんな二人を見ているとフェリアの胸は小さな痛みを訴えるのだ。
「王子がまだ二歳にもならないうちに、ある日突然、王が亡くなった」
再びラバールは話しだした。淡々と。けれど、その瞳はフェリアを映してはいない。遙か、遠くの方を見るように……。
「階段から足を滑らし、頭を打ったのが死因だった。本当のところはどうだかわからないが、少なくともそう発表された。そして、次の王位には当然王子がつくはずだった。けれど王子は幼く、母である王妃には代行する能力はない。そこが、王弟の狙い所だった。まず彼は王妃と再婚した。そして、王子の後見であり王妃の夫、つまり王子には義父という立場を利用して、王子が王位を継ぐのに適した年になるまでという名目で彼が王位についた。……これからが重要だ、フェリア」
ラバールの目が、鋭くフェリアの目を貫いた。そこには、静かな怒りと憎しみがあった。それらが、なぜか自分に向いているような気がして、思わずフェリアは震えた。
「当然、彼が王位につくことを反対した者は沢山いた。だが、それらのうち有力な貴族たちが、どういうわけか相次いで死んだ。いずれも死因は病死か偶然の不幸な事故でだ。彼には幸運の女神でもついているのではないかと、もっぱら噂だったそうだ。彼の幸運はまだ続いた。王妃が死んだのだ。こうして、たった一つを除いて、邪魔はいなくなった。王弟は、それから約十年間ウィナジットの国を支配し、そして最後には残っていた邪魔を排除した。彼は、病弱を理由に王子を王位継承から外し、代わりに自分の娘を次の王に指名したんだ。この時も反対者は出たがな、なぜか前と同じようなことが起きた。……どうしてか、判るか? ……彼にはな、確かに幸運の女神がいたんだ」
フェリアは再び身体を震わせた。彼の刺すような視線が怖いと思うより、これから彼が口にすることの方が、怖いと思った。
「それより、前に、ある夫婦の間に女の子が生まれた。それで、夫婦はどういう縁故があったのか、国でも高名な占い師に、娘の将来を占って貰ったんだ。そして、占い師は言った。『この娘は、彼女を得た者に限りない幸福をもたらす不思議な星の元に生まれた赤子である』とな。そして、王弟がまだ大臣であった頃、ある日、自分の娘を占ってもらうために、その占い師が屋敷に呼ばれた。そこで、占い師は娘の不吉な将来とともに、不思議な運命の元に生まれた赤子のことを、王弟に言ったらしい。次の日、占い師と若い夫婦が死体となって発見された。だが、その幸運を呼ぶ娘の姿はどこにもなかった」
そこまで言うと彼は一旦言葉を切り、それから再び言った。
「王弟は彼女を荒野にぽつんと立つ小さな屋敷に幽閉していたんだ。そして、そこで誰の目にも止まることなく、彼女を生かしておいた。彼が死んだ後、次に王位についた王弟の娘は、父親からその話を聞いて『娘を得た者』という下りに思案した。これが彼女の心なのか、肉体のことをさすのか、判らなかったのだ。男であったなら、間違いなく肉体を得る方をとったであろうが女であるし、少女が大人になってくるに従って、自分の状況に不信を抱くかもしれないからな。そこで、女王は彼女の絶対の信頼を得ようと思い立った。彼女の好奇心を適度に満足させ、自分の存在以外に心がいかないように、世話役には沈黙を命じた。そして、それはある程度は成功しているようだ。彼女は何も知らず、何も知らされず、そして自分が閉じ込められているという事実すら把握しないまま、彼らに幸運をもたらしているのだから」