山椒と、魔の「黄金石」
一方、ルルは朝からずっと、巨大化したモモを連れて森の奥を探索していた。
ルルは鼻をくんくんと鳴らし、木々の根元にある「特定の香り」を追いかける。そして、一本の低木の前で足を止めた。その枝には、緑色の小さな実がたわわに実っている。
「キュイッ!」
ルルが促すと、モモがその器用な前足で、実を傷つけないように一房ずつ丁寧に摘み取っていく。それはメグミが「いつかお醤油ができたら合わせたい」と切望していた、山椒にそっくりな香草だった。
だが、ルルの探索は、山椒だけでは終わらなかった。
彼女はさらに森の奥、切り立った岩壁の麓へと、モモを誘導した。そこには、見たこともないほど巨大で、黄金色に輝く、半透明の岩がそびえ立っていた。
「プィッ……?」
モモが不思議そうにその岩に触れると、指先がピリッとした。それは、ただの岩ではなかった。
メグミたちが以前住んでいた荒野で採れた、あの「ソルトベリー(塩の実)」の成分が、永い年月をかけて地中で結晶化し、魔力を帯びて固まった「黄金の岩塩」だったのだ。
ルルとモモは、この「美味しい岩」をメグミの元へ持っていきたかった。だが、あまりにも巨大で、二匹の力ではビクともしない。
「キュイイッ!!」
「プィ~~ッ!!」
二匹は森中に響き渡るような、切実な声を上げた。
ロッジで薪を割っていたカイルが、その声に気づく。
「……む? ハル坊、ルルとモモ殿の声が、森の奥から聞こえんか? 何か、手に余るものを見つけたような……」
「えっ? ホントだ! ……おねえちゃん、僕、カイルさんと見てくる!」
カイルは新しい作業着の動きやすさを確かめながら、ハルと一緒に森へと駆け込んだ。
声のする方へたどり着くと、カイルは目の前にそびえ立つ黄金色の岩を見て、目を見開いた。
「……これは。……まさか、伝説に聞く『魔の黄金塩』か!? ……王都の市場なら、この一欠片で家が建つほどの家宝だぞ!」
「カイルさん、これ、ソルトベリーの味がするよ! すごくしょっぱくて、美味しい!」
ハルが岩の端っこを舐めて、目を輝かせる。
ルルとモモは、カイルの服を引っ張り、「これを持って帰るの!」と必死にアピールする。
「ガハハハ! 承知した! ……だが、これは重いぞ。……ハル坊、モモ殿、ルル殿。みんなで力を合わせるぞ!」
カイルは腰の剣を抜き、黄金の岩塩の麓へ、慎重に剣を差し込んだ。
「(……ここだ。……ハァァッ!!)」
カイルが気合と共に剣を跳ね上げると、巨大な岩塩の一部が、「ゴォォン!」という音と共に、見事な「プレート状」に剥がれ落ちた。
「よし! ……モモ殿、その巨体、頼りにさせてもらうぞ!」
カイルは剥がれた岩塩プレートを、巨大化したモモの背中に、ハルと一緒に一生懸命に担ぎ上げた。ルルはカイルの足元を駆け回り、「こっちだよ!」と道を誘導する。
こうして、カイル、ハル、モモ、ルルの「2人+2匹チーム」は、黄金に輝く巨大な岩塩プレートを担ぎ、森の小道をロッジへと、ゆっくりと、けれど活気あふれる足取りで戻っていった。




