黄金のミルクプリンと、忍び寄る「監視の目」
スピカが作ってくれた氷室は、魔法の冷気で満たされていた。
メグミはさっそく、ルナ・シープの濃厚な生乳と、ハチミツ、そして以前から大切に保存していた鳥の卵(ふくちゃんの親戚ではない、野生の滋養ある卵だ)を取り出した。
「よし、今日はこの氷室を使って、とっておきの『冷たいおやつ』を作るよ!」
メグミが作ったのは、滑らかな「ミルクプリン」。じっくり蒸し上げた後、スピカの氷室で一晩じっくりと冷やし固めた。仕上げに、ハチミツを煮詰めて作った黄金色のソースをたっぷりとかける。
「わあぁ……! おねえちゃん、これ、お口の中でとけちゃうよぉ! つめたくて、あまくて……しあわせだぁ!」
ハルが頬を落としそうな顔でプリンを頬張る。
「……むう。この喉越し、まさに冬の奇跡。冷たいのに、お腹の中がポカポカするような不思議な感覚ですな……!」
カイルも、騎士の威厳を忘れてスプーンを動かしている。
スピカは、メグミが特別に作った「凍らせた果実」をカリカリと美味しそうに食べていた。ふくちゃんは「僕のプリンの方が大きいよね?」と確認するように、メグミの肩で満足げに喉を鳴らしている。
食後、メグミとスピカが二人きりになった時だった。
スピカがそっとメグミの手に鼻先を寄せると、その再生し始めた角から、淡く清浄な光が溢れ出した。
「(……温かい。……この子の光、ふくちゃんの光と似ているけど、もっと『透き通っている』感じがする)」
その光に触れた瞬間、メグミの心の中に、遠い氷山の景色が一瞬だけ浮かんだ。そこはかつてスピカたちが平和に暮らしていた場所。だが今、そこには黒い影が差し込んでいる……。
「……大丈夫だよ、スピカ。今はここで、ゆっくり休んでね」
メグミがスピカの首元を抱きしめている頃。
聖域の結界のすぐ外側、枯れ木の影で、一人の男が奇妙な「魔道具」を雪の中に埋め込んでいた。
「……よし、設置完了だ。この『共鳴石』があれば、結界の波長を解析できる。……あの一角獣、王都の研究機関に引き渡せば、俺たちの出世は間違いなしだ」
男の胸元には、カイルが見つけた矢と同じ「双頭の鷲」の紋章が刻まれた銀のバッジが光っていた。
聖域の中の温かな笑い声と、外で静かに時を待つ監視の目。
美しい冬の景色の中に、少しずつ、抗えない「変化」の予兆が混じり始めていた。




