聖夜の灯火と、黄金の「贈りもの」
第31話
昼間の雪合戦で「アワアワ!」と叫びながら雪まみれになったカイルも、雪だるま作りに精を出したハルも、今はロッジの薪ストーブの前でゆったりとした時間を過ごしていた。
窓の外は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返った銀世界。一年で最も夜が長い、聖なる夜がやってくる。
「ねえ、二人とも。私の故郷ではね、この一番夜が長い時期に、大切な人に感謝を込めて『贈り物』をする習慣があるんだよ。今日はそれを、この聖域でもやってみない?」
「おくりもの……? おねえちゃん、ぼく、なにも持ってないよ……」
ハルが不安そうに、自分の小さな手を見つめた。口減らしで捨てられた彼にとって、「誰かに何かをあげる」という経験は未知のものだった。
「いいんだよ、ハル。買ったものじゃなくて、自分で作ったものや、相手を想って用意したものが一番なんだから」
メグミの言葉に、ハルはパッと顔を輝かせた。実は、数日前からみんな「内緒の準備」をしていたのだ。
ついに始まった聖夜の晩餐。
食卓には、保存しておいたお肉のロースト、搾りたてミルクの濃厚シチュー、そしてデザートには、こんがり焼いた「あんバターパン」が並んだ。
「はい、これは私からのプレゼントだよ」
メグミが差し出したのは、カイルには「ルナ・シープの毛で編んだ丈夫なマフラー」
ハルには「モモとお揃いの小さなニット帽」だった。
「……おお! なんという温かさだ……。聖女様の慈愛が、首元から全身に染み渡りますぞ!」
カイルは感極まり、あんバターパンを頬張りながら、ボロボロと涙をこぼした。
「誓いましょう……。このカイル、この温かなパンと、聖女様が守るこの平穏のため……生涯をかけて盾となり、剣となることを!」
ハルも「おねえちゃん、これ、ぼくが作ったの!」と、不器用ながらもシープの毛を丸めて石鹸の香りを移した「香り玉」をメグミに手渡した。
その時。
「ピョイイイイイッ!!」
ふくちゃんが、黄金色の腹巻きを揺らしながら、ロッジの扉を抜けて夜空へと舞い上がった。
メグミは改めて思う。本来、寒さに弱いはずのオカメインコが、こうして雪夜を悠然と飛んでいる。温泉を楽しみ、石鹸の泡にまみれても平気な姿……。
「(……やっぱりふくちゃんは、私の知ってるインコの常識を超えた、この世界の特別な『聖鳥』なんだね)」
空高く昇ったふくちゃんが大きく羽ばたくと、その黄金の羽から光り輝く脂粉が雪の結晶と混ざり合い、聖域全体に降り注いだ。
昼間に作った「黄金の冠羽を持つ雪だるま」も、光を浴びて神聖に輝いている。
「……綺麗。……これが、ふくちゃんからの贈り物なんだね」
メグミは、ハルの膝の上で「キュイッ!」と誇らしげに鳴くモモを撫でながら、黄金色に染まる銀世界を見つめていた。
厳しい冬の真ん中で、これほどまでに温かい夜を過ごせている。その幸せを、メグミは静かに噛み締めるのだった。




