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銀世界の贈り物と、妖精たちの「冬じたく」

第29話


 ついに、聖域にも本格的な冬がやってきた。

 一晩のうちに、ロッジの周りはふわふわの雪に覆われ、見渡す限りの銀世界へと姿を変えた。


「うわぁ……! まっしろだぁ! おねえちゃん、お空が全部落ちてきたみたい!」

 ハルが窓に張り付いて目を輝かせている。


 そんな中、ロッジの薪ストーブの周りでは、しばらく姿を見かけなかった妖精たちが、総出で「ある作業」に没頭していた。


「ちょっと! そこ、編み目が飛んでるわよ! もっとピシッと締めなさい!」

「分かってるわよ! 聖女様のために、最高の『羊毛の絨毯』を仕上げなきゃいけないんだから!」


 実は妖精さんたち、ルナ・シープの毛が手に入ったあの日から、自分たちの魔法の指先をフル稼働させて、ロッジの床に敷くための大きな絨毯や、窓の隙間を埋めるための厚手のカーテンを編み上げていたのだ。


「ごめんね、妖精さん。みんなで内緒で準備してくれてたんだね」

 メグミが温かいミルクを差し出すと、妖精たちは「ふんっ、聖女様が寒がってたら魔法のノリが悪くなるでしょ!」と照れくさそうに羽を震わせた。


 そんな賑やかな室内で、カイルもまた、自分との戦いに挑んでいた。

「……できた。……この、黄金の毛糸で作った『特製腹巻き』。これぞ、聖鳥様に捧げる至高の防具ですな!」


「ピョイ……? ピョイイッ!」

 ふくちゃんだ。寒さで少し羽を膨らませていた彼は、カイルが編み上げた黄金色の(ふくちゃんの羽の色に合わせた)巨大な腹巻きを巻いてもらうと、満足げに喉を鳴らした。

 腹巻きを巻いてさらに丸くなったふくちゃんは、もはや「動く巨大な金色の鈴」のようだった。


「よし、今日のご飯は、この雪景色にぴったりの『濃厚クリームシチュー』だよ!」


 メグミは、搾りたてのルナ・シープのミルクに、以前作ったバターと米粉を混ぜて「ホワイトソース」を作った。そこへ、保存しておいた干し肉と、妖精たちが雪の下から魔法で掘り出してきた甘い根菜をたっぷり入れる。


「(……ミルクのコクと、お肉の旨味が溶け合って……最高に温まる)」


 その時、外で雪遊びをしていたカイルが、雪に埋もれた「不思議な枝」を持って帰ってきた。


「聖女様! 雪の中から、宝石のような実を見つけました! 凍りついていますが、得も言われぬ甘い香りがしますぞ!」


 それは、寒さで糖度が極限まで高まり、天然の氷に包まれた「凍り果実」だった。

 温かいシチューの後に、シャリシャリと冷たくて甘い果実を食べる贅沢。


「……あはは、お口の中が温かくて冷たい! おねえちゃん、これ、ふしぎだね!」

 ハルが頬を赤くして笑う。


 外は極寒の銀世界。けれどロッジの中は、妖精たちの編んだ絨毯と、温かいシチュー、そしてふくちゃんの腹巻きの温もりに包まれていた。


「(……みんながいるから、冬も怖くないね)」


 メグミは、ハルの膝の上でシチューの匂いに誘われて鼻をひくつかせる「毛玉の要塞」ことモモを撫でながら、静かに更けていく聖域の夜を楽しむのだった。


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