まさかの「白インコ」に転身!?
第27話
バターあんパンの衝撃から一夜明け、聖域の朝は今日も穏やかだった。
メグミがハルと一緒に、ルナ・シープの柵に溜まった「抜け毛」を丁寧に集めていると、背後から
「……ズイッ」と巨大な圧を感じた。
「ピョイ……。ピョイイッ……?」
ふくちゃんだ。彼は、メグミたちが自分そっちのけで「シープの白い毛」を宝物のように大事そうに抱えているのが、どうにも面白くないらしい。
「あはは、ふくちゃん。ヤキモチ? 大丈夫だよ、ふくちゃんの羽が世界で一番綺麗で温かいのは、ちゃん分かってるから」
「ピョイッ!」
メグミが撫でると満足げに喉を鳴らしたが、彼女が再び「この毛、本当にふわふわ……」と作業に戻ると、ふくちゃんは何かを決意したように、シープたちの小屋の方へと音もなく歩いていった。
数時間後
カイルが「聖女様、紡ぎ車の図面を引きましたぞ!」とロッジから出てきた瞬間、その場に凍りついた。
「な……ななな、なんという……!
聖域に……『雪山の巨大精霊』が現れましたぞーーっ!!」
「えっ、何!?」
メグミとハルが慌てて外に出ると、そこには目を疑う光景が広がっていた。
いつもの黄金色の羽はどこへやら。頭の先から尾羽の先まで、真っ白でモコモコした「ルナ・シープの抜け毛」を全身に纏い、三倍くらいに膨れ上がった「白い塊」がそこに鎮座していたのだ。
「ピョ……イ……」
重すぎる毛の重圧に耐えながら、ふくちゃんが
「僕もモコモコだよ! こっちの方が凄いでしょ!」と言わんばかりに、ドヤ顔で首を傾げている。
「ふ、ふくちゃん……!? それ、シープたちが柵にこすりつけた抜け毛を、全部くっつけたの!?」
「あははは! ふくちゃん、お空の雲が落っこちてきたみたい! まっしろだぁ!」
ハルが目を輝かせて、白い毛玉と化したふくちゃんに抱きつく。
「ピョイイッ♪」
褒められた(と思っている)ふくちゃんは上機嫌だ。だが、調子に乗って羽をバサッと広げた瞬間――。
ボフゥッ!!
静電気と脂粉でくっついていた大量の白い毛が、風に乗って辺り一面に舞い散った。
「うわぁっ! 目が、前が見えませぬ! 雪崩です、これは毛の雪崩ですぞ!」
カイルが毛に埋もれてもがいている。
当のふくちゃんは、一瞬で元の黄金色に戻り、「おっと、失礼」という顔で羽を整えている。その足元では、本物のルナ・シープたちが「何か面白いことしてるねぇ」とでも言うように、のんびりと反芻しながらふくちゃんを見上げていた。
「もう……ふくちゃん。そんなことしなくても、ふくちゃんが一番なんだから」
メグミが苦笑いしながら、散らばった毛を再び拾い集める。ふくちゃんは満足したのか、巨大黄金毛玉のモモを背中に乗せ、今度は「毛集めを手伝う」と言わんばかりに、クチバシで器用に毛を運んでメグミの足元に積み上げ始めた。
「(……平和だなぁ。お腹もいっぱいで、みんな仲良しで。……この毛が糸になったら、もっと幸せになれるね)」
メグミは、黄金の羽と白い羊毛が混ざり合う不思議な光景を眺めながら、冬への温かい準備を再開するのだった。




