禁断の肉祭り
19話
夕暮れ時、地響きを立ててカイルが帰還した。その肩には、丸々と太った「ロックバイソン」の巨大な腿肉が担がれている。
「聖女様! 聖鳥様! 仕留めて参りましたぞ、極上の獲物です!」
「わあぁ……! お肉だ、本当にお肉だ!」
ハルが目を輝かせて駆け寄る。メグミも生唾を飲み込んだ。
「よし、今夜は宴会だよ! ふくちゃん、火の準備をお願い!」
「ピョイイッ!」
ふくちゃんが湖の底から拾ってきた「真っ黒で窪みのある不思議な石」を、石窯の余熱でカンカンに熱する。これが天然のフライパンだ。
メグミは手際よく肉を捌き、脂身の多い部分を先に石板へ乗せた。
ジューーーーッ!!
立ち昇る暴力的なまでに良い香り。溶け出した透明な脂が石板に溜まっていく。
「この脂を使って……米粉をまぶしたお肉を投入!」
シュワシュワと音を立てて揚げ焼きにされるのは、黄金米の粉を衣にした「米粉の唐揚げ」
味付けは以前見つけたペッパー・ベリーと、妖精たちが湖の奥から運んできた結晶状の「天然岩塩」だ。
「さあ、召し上がれ!」
カイルがおそるおそる、揚げたての唐揚げを口に運ぶ。
「……っ!? ……な、ななな、なんという……!!」
サクッとした衣の中から、溢れ出す濃厚な肉汁。スパイスの刺激と岩塩の旨味が、バイソンの力強い味を引き立てている。
「お、美味しすぎる……! 王宮の晩餐会で出される熟成肉すら、これに比べれば泥のようです! 私は今まで、何を食べて生きてきたのか……。……もう、この味を知る前の自分には戻れない……!」
カイルは涙を流しながら、一心不乱に肉を頬張った。騎士としてのプライドは、今この瞬間、完全に胃袋に屈したのだ。
「あはは、カイルさん落ち着いて。ハルも、モモも食べ……あれ?」
メグミがハルの肩に乗っているモモを見て、首を傾げた。
「ねえハル、モモって……前よりちょっと大きくなってない? 毛並みもなんか、さらにモコモコしてるような……」
「えっ? そうかなぁ。モモ、ふくちゃんのごはん、いっぱい食べてるもんね!」
モモはふくちゃんの食べ残した「聖なるリンゴ」や「ハチミツ」を毎日つまみ食いしている。ふくちゃんの脂粉(お粉)もたっぷり浴びているせいか、普通のモモンガの成長速度を超えている気がする。
「ピョイ……」
ふくちゃんが「俺の子分だからな」と誇らしげにモモの頭を優しくつついた。
焚き火を囲み、最高のお肉とハチミツティー。
カイルはもう、王国のことなど一ミリも考えていない。ただ「明日の朝ごはんのパンは何だろう」という期待で胸を膨らませていた。
「(……これで門番も確保、お肉も確保。……平和だけど、なんだかどんどん賑やかになっちゃうね)」
メグミは、お肉を幸せそうに噛みしめる仲間たちを眺めながら、自分も二個目の唐揚げに手を伸ばすのだった。




