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魅惑の「ジビエ」交渉

第18話


 お腹がいっぱいになり、ふくちゃんの脂粉(お粉)で傷も完治したカイルは、居住まいを正してメグミの前に正座した。


「聖女様! このような奇跡の地、そして聖鳥様がいらっしゃることを、すぐにでも王国へ報告し、大軍を率いて守護を固めねばなりません!」


「えっ、ちょっと待って! 絶対にダメ!」


 メグミは食い気味に拒否した。


「大軍なんて来たら、この静かな湖も、ふくちゃんのお昼寝タイムも台無しになっちゃうでしょ? 私はここで、のんびり暮らしたいだけなの。……だから、カイルさん。悪いけど、元気になったら帰ってくれないかな?」


「な、なんですと……!? この荒野を一人で帰れとおっしゃるのですか!?」


 カイルはガーンとショックを受けた顔をしたが、すぐに食い下がった。


「ならば、私をここで使役してください! 門番でも、草むしりでも何でもいたします! どうか、あの黄金のパンをもう一度……いえ、この聖域を守らせてください!」


「うーん……でも、門番なんて必要ないし。ふくちゃんが怒れば大概の魔物は飛んでいくし……」


 メグミが渋っていると、カイルが必死に「自分の売り」を探して叫んだ。


「お、お肉! お肉なんてどうですか!?、聖女様! この近くの岩山には、極上の肉質を誇る『ロックバイソン』が生息しています! 私は騎士、魔物を狩ってお肉を献上することならお茶の子さいさいです!」


「……お肉?」


 メグミの動きが止まった。

 そういえば、ここ数日。黄金米、リンゴ、ハチミツ、米粉パン……。どれも最高に美味しいけれど、「ガッツリとした動物性タンパク質」には飢えていた。


「(……厚切りステーキ。……肉汁たっぷりのローストビーフ……)」


 メグミの脳裏に、欲望にまみれたビジョンが浮かぶ。横で話を聞いていたハルも、「お肉……じゅるり……」と口角を拭っている。


「ピョイイッ!」

ふくちゃんも、なぜか「肉なら俺が焼くぜ!」と言わんばかりにやる気満々だ。


「……わかった。カイルさん。一つだけ条件があるよ」


「ははっ! 何なりと!」


「絶対に、ここの場所を誰にも教えないこと。そして、二日に一度……いえ、毎日でもいいけど、美味しいお肉を調達してくること! これができるなら、門番として居候を許可します」


「……お安い御用です!!」


 カイルは歓喜の雄叫びを上げ、さっそく腰の剣を握り直した。

「聖女様、そして聖鳥様! 今夜は最高にジューシーな肉祭りにして差し上げましょう!」


「(……ああ、私のスローライフが、肉欲に負けてしまった……)」



メグミは少しだけ反省したが、カイルが颯爽と荒野へ駆け出していく後ろ姿を見送りながら、すでに「どんなソースを作ろうかな」と考え始めていた。


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