表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/54

目が覚めたら愛鳥が巨大化してた件

1話


「……んん……重い。

ふくちゃん、まだ朝じゃないよ……」



日和ひより) めぐみ)

いつものように愛鳥が顔の上に乗ってきたのだと思い、寝ぼけ眼で手を伸ばした。


だが、指先に触れたのは、シルクのような羽毛ではなく、丸太のような太い脚だった。


「…………え?」


「ピョイ?」


耳元で響いたのは、鼓膜を震わせるような重低音の鳴き声。

 あまりの違和感に、メグミは跳ね起きた。


「ぎゃあああああああ!?」


パニックで飛び起きようとしたメグミの視界に、その怪物の「顔」が映る。


 鮮やかなレモンイエローの羽。そして、見覚えがありすぎる、オレンジ色のほっぺ……。



「……え!?待って!?

ふ、ふくちゃん!? ふくちゃんなの!? 

なんでそんなにデカいの!? てかここどこ!!」


目の前にいるのは

軽自動車ほどもある巨体のオカメインコ


慌てて周りを見渡すが、そこはワンルームの自分のアパートでは断じてなかった。


大きな穴があいた、かろうじて「かつては屋根だったもの」が乗っかっているだけの、ボロボロの石造りの家。壁は崩れかけ、床はひび割れた赤茶色の土


「な、何このボロ家!?事故物件!?

私、自分の部屋で寝てたはずじゃ――!?


ていうか、ふくちゃん、動かないで! 

危ないからステイ! ステイイイ!!」



「フシュッ、ピョ、ピョイイイイッ!!」


メグミの悲鳴に、ふくちゃんの方が驚いてしまった。



 魔の「オカメパニック」発動である。


バサバサバサッ!! と巨大な翼がひと振りされるたびに、凄まじい突風が巻き起こる。


次の瞬間、頭上にあった「屋根であろう物体」が、紙飛行機のように空の彼方へ飛んでいった。



「あああああ! 飛んでったぁぁ! 

……あ、壁も崩れた! 

全壊!? 一瞬で全壊したんだけど!?」



ボロ家一瞬にして全壊。

メグミの目の前には、屋根も壁もない

「開放感すぎる」荒野の景色が広がった。


だが、ふくちゃんがパニックで暴れるたび、羽の間から大量の「黄金の粉(脂粉)」が猛吹雪のように舞い散る。


その粉が地面に触れた瞬間、地割れが塞がり、見たこともないほど瑞々しい緑の草が爆発的に生え揃っていった。


「……は? えええっ!? 植物が……生えた!? パニックで緑化……!?」



ようやく落ち着いたのか、ふくちゃまは「ピィ……」と大きなため息をつくと、のそりとメグミに近づいてきた。

 そして、巨体を低くかがめ、メグミの目の前に大きな後頭部を差し出してきた。


(……パニックで怖かったから、カキカキして!)


いつもの「撫でろ」のポーズだ。


「……あ、もう。デカくなってもやることは一緒なんだから」


メグミがパニックのまま、丸太のような首筋を指先で「カキカキ」してあげる。するとふくちゃまは気持ちよさそうに目を細め、幸せそうに喉を鳴らした。



「……ああ、なんという奇跡だわ……!」


突如、聞き慣れない黄色い声が響いた。

 草むらからガサガサと、手のひらサイズの羽の生えた小人たちが這い出してきたのだ。


「ひっ!? 喋る虫!? それとも宇宙人!?」


「失礼ね! 私たちはこの地を司る風の妖精よ!」


「よ、妖精……!? 本物の? CGじゃなくて!? ていうか、喋ったぁぁ!!」


メグミは悲鳴を上げて後ずさった。

 巨大化した愛鳥だけでもキャパオーバーなのに、伝説上の生き物まで現れたのだ。


脳内は「夢だ、これは悪い夢だ」という現実逃避で埋め尽くされる。


 しかし、妖精たちはメグミの混乱などお構いなしに、巨大なふくちゃんの前にひれ伏した。


「伝説の『黄金の聖鳥様』が、この死んだ荒野の大地を蘇らせてくださった……! そして、その聖鳥様を指一本で撫で回して手懐けるなんて……間違いない!

あのお方は伝説の『聖女様』よ!」



「聖鳥様は『ふくちゃん』とおっしゃるのね……!  なんて高貴で愛らしい響きかしら……フク様……素敵……!」


「……はあぁ!? いや、ただのカキカキなんだけど! てか聖女って何!? 妖精って何なのよぉぉ!!」


メグミの叫びが、蘇ったばかりの緑の草原に虚しく響き渡る。


知らない土地

巨大化したインコ

喋る妖精

身に覚えのない「聖女」という肩書き

そして家なし



メグミの「最高のスローライフ」への道は

キャパオーバーのパニックから幕を開けたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ