[1]発見
寒い。頭が痛い。気持ち悪い。
なけなしの友人らと酒で日付を超え、俺はふらつく脚で家を目指していた。
日の差し込まない、生臭くて暗い、吐瀉物にまみれた裏道を進む。右にも左にも室外機、ガスメーター、換気扇。そして、一人の少女。
── 少女?
何度目を擦っても、頬を叩いても、たしかにそこには少女が倒れていた。アルビノの症状と思われる白い長い髪。二日酔いのせいで俺は頭が回っていなかったらしい。「ひとまず救護を」と、彼女を家まで連れていってしまったのが運の尽きだった。
「......名前は? 家は?」
沈黙。
「分からないのか?」
空白。
二日酔いには味噌汁。彼女にそれを分けつつ尋問するが、何度聞いても、言葉を変えても、一向に口を開かない。
「もうお手上げだよ! 俺には無理。それ食ったら警察行くぞ。」
「......だめ。」
何拍か遅れた、微かな返事。
「だめってなんだ。喧嘩して家出か? 思春期だな、お前。」
「違う。......家、ない。」
俺が呆気にとられた瞬間、彼女はその果てしなく深い青い瞳で俺を見つめた。
「名前、翠雨。ここにいたい。」
表情も姿勢も変えずに続ける。
「私、他の人と違う。危ない、''能力''、ある。」
「どんな......?」
「言えない。私もよく分からない。」
「でも、''能力''欲しい人、私を追ってる。」
いつもの俺なら、ただの厨二病の妄想だと鼻で笑っていた。しかし、その見た目からだろうか。本当かもしれない、もっと話を聞きたい、と思う自分がいた。
「よくわからんけど、つまりは匿えってことだな?」
返事の代わりに、彼女はふいと視線を外された。未だに状況を飲み込めていないが、いずれ自分も危険な目にあう、それだけは分かった。
まずは彼女の''能力''というのが本当に存在しているのか、それがなんなのか、知る必要がある。




