第21話 酔っ払い
俺達は酒場で散々飲み食いし、四人で20000リアスも使ってしまった。
そこまで高いお店でもなく、日本でいう普通の居酒屋ぐらいだったのにな……
これじゃあ明日も旅を再会せずに依頼をせかせかこなして金稼ぎだな……
あぁ、休息がほしい……
俺はただでさえローブを買ったせいで薄くなったのに、今回の出費でさらに薄くなった財布を見て、虚しい気持ちになりながら宿への帰路につく。
はぁ、前世でも金がなかったのに今世でも貧乏かよ……
神様、流石に今世ぐらい裕福にしてくれよ……
「おいフェルビン、飲み過ぎだぞ」
アカが、酒場で飲み過ぎて今にも倒れてしまいそうに歩くフェルビンにそう言う。
「大丈夫ですって……ヒック……全然飲んでない、飲んでないです……」
「おい、嘘つくな。俺の10倍以上は飲んでただろ。それよりも起きろフェルビン。ここは宿じゃくて道だぞ」
酔っ払って道端に座り込み、寝だしたフェルビンをアカが起こそうとする。
流石にあんだけ飲めばこうなるよな……
周りの冒険者らしきお兄さん達のコールのせいでまさかフェルビンがこんなに飲むとはな……
「フェルビンって意外と乗せられやすい性格なんだね!」
「何をいうんですかイリル!私は……ヒック……そんなことないですよ……ヒック」
大丈夫かこれ?急性アルコール中毒かなんかじゃないのか?
なんかフェルビンが厄介な酔っ払いおじさんに見えてきたな……
まじで仕事途中に絡まれるのだるかったな……
ほんといい加減にして欲しい
「おいフェルビン。いいから立て。アカも言ってる通りここは宿じゃないぞ。起きろよ。ずっといってた何とか族の誇りとか捨ててきたのか?」
「ちょっと、私の誇りと……ヒック……種族を馬鹿にしないで……ヒック……もらえます?」
アカがフェルビンを引っ張り起こそうとしている横で俺もフェルビンを宥める。
いや、宥めるというより煽るの方が正しいか。
俺が頑張ってフェルビンを起こそうとしていると、アカが急に立ち上がって俺の肩に手を置いた。
「もういいやアルマ。一旦こいつに水でもぶっかけて目覚ましてやろうぜ」
「名案だなさすが俺の相棒」
俺達は互いにグットマークをし、俺は魔法の詠唱を始めた。
俺の詠唱が進むに連れて、フェルビンの頭上にある水の玉はどんどん大きくなっていく。
「ねぇアルマ?ちょっと大き過ぎじゃない?」
「イリルはそう言ってるけど構わん!やっちゃえアルマ!」
俺は水をフェルビンの頭からぶっかけた。
「ちょっと!何するんですか!」
水に驚いたフェルビンが正気へと戻り、立ち上がって俺の胸ぐらを掴んできた。
やめてくれよ、新品のお高いローブなんだから。壊れちゃうだろ。
「落ち着けフェルビン!お前が起きなかったからアルマに頼んで水をかけてもらったんだよ!」
アカが俺とフェルビンの間に入り、喧嘩を仲裁する。
フェルビンはまだ納得していない様子だったが、俺達は宿に向かって足を進めた。
その晩、俺は、ちょっと頭いいやつを気取るために日課にしようとしていた読書をしていた。
「……読解力がないからさっぱりわからん……」
俺は本をカバンの中に戻し、ベッドに潜り込んだ。
ベットに入ってから十分ほど経っただろうか。だんだんと眠くなり、目が半分しか開いていなかった。
もう寝落ち寸前。そんな時に俺も部屋のドアが叩かれた。
「誰ですか……」
俺が扉を開けると、そこには見慣れた銀髪ロングの少女がいた。
「どうしたイリル。こんな夜遅くに……」
俺がイリルにそう聞くと、少しモジモジしながら話し始めた。
「少し話があるというか……アルマと話したいの」
イリルがそう言うので、俺はイリルを部屋へと上げた。
「そこに座って」
俺は備え付けの椅子を指差し、イリルに座らせる。
「それで……話って何?」
俺がそう聞くと、イリルは少し黙ったが、口を開いた。




