第19話 気をつけるべきは仲間
翌朝、俺達は資金集めのために冒険者ギルドへ行くことにした。
「それにしてもアルマ、ギルドの建物だけでもこの街に三つもあるってすごいな……」
俺とアカ、イリルは田舎の方の出身なので建物がたくさんあると言う光景にまだ馴染みきれていないのだ。
「とりあえずここから一番近いところでいいんじゃないですか?」
フェルビンがやけに艶のある髪を撫でながらそう言う。
「なんかフェルビン髪綺麗じゃない⁉︎」
イリルが興味津々で聞くと、フェルビンは待ってましたと言わんばかりの顔でペラペラと説明し出した。
「やっぱり最高級の部屋というだけあって石鹸もすごくいいものだったんです!」
いいな。これだから高い部屋は。羨ましい……
無理矢理奪い取ってやろうかな。
俺達は雑談をしながら冒険者ギルドへと向かった。
宿から五分ぐらい歩き、冒険者ギルドへと到着した。
「えっと、いい感じの依頼は……」
「アルマ、これなんてどうだ?」
俺が依頼を一通り見ていると、横からアカが割り込んできた。
「なになに?えっと、狼の群れが付近に発生。群の壊滅で十万リアスか……悪くないな」
狼というのは地球にいるようなものではなく、体長2mほどの巨大なモンスターだ。
この時期になると、森から人里へと来て、道を歩いている人を狙って食べてしまう。
かなり危険な生物だ。
悩んだ末、俺達は依頼を受けることにして街の城門前へときていた。
「身分証明証の提示を」
城門の兵士にそう言われ、俺達は冒険者登録の時にもらった冒険者カードと魔道士カードを提示した。
「よろしい」
城門の兵士はそう言って、俺達に街に出る許可をくれた。
街を出た俺達は、冒険者ギルドにもらった基本情報を元に、群の位置を探していた。
「なかなか見つからないね〜」
イリルが辺りを見回しながらそうぼやく。
探索を初めて二時間ほど経つが、俺達はいまだに狼の群れを見つけられていない。
「一旦、ここで休憩にしよう」
俺はそう言って、持参していたシートを地面に敷く。
「早く休憩しましょう」
フェルビンがそう言ってシートに座った。その時だった。
「キャー!!!!!」
後ろからイリルの悲鳴が聞こえた。
俺達が後ろを振り向くと、そこには狼の群れがいた。
数は二十匹弱というところだろうか。
「イリル!下がって後ろから支援魔法!」
「わかった!」
俺とアカがイリルの前へと出て、お狼に向かって武器を構える。
「アカ、右から頼む」
「了解!」
アカが大きく右に逸れ、一番右側にいる狼に斬りかかる。
「フェルビン!お茶淹れてないでとっとと戦ってくれよ!」
俺が後ろを向くと、そこにはシートに座って、魔法を駆使して優雅にお茶を淹れているフェルビンの姿があった。
「狼程度、アルマ達で十分じゃないですか。私は昼食の用意をしてますよ」
もう、フェルビンのことは諦めよう。
俺はそう思って、魔法を唱え始めた。
「イグニス・アークフェルド!」
俺の杖から放たれた炎の球は、狼の群れ目掛けて突っ込んでいった。
「ちょっと待てよアルマ!まだ俺が……」
……あ、そういえばアカがいたんだ……
俺の魔法を防ぐために、アカは防御魔法を詠唱し始めた。
だけどこの速度じゃ間に合わない……!
「本当にもう」
後ろからそんな声が聞こえた。直後、俺の後ろから青白い光がアカに向けて飛んでいった。
「俺……生きてるのか?」
アカが驚いたようにそう言う……
「全く、気をつけるべきは相手じゃなくて仲間でしたか……」
「ごめんなさいフェルビンさん……」
「おい、謝るなら俺だろ」
「ごめんごめんアカ」
まぁ、なんか任務も達成できたしよしとするか。
戦闘が終わった俺達は、ひとまず昼食を摂ることにした。




