第17話 召喚獣?
休憩を終えた俺達は、ベルセリムに向かって歩き始めていた。
数分経った頃に、いつも恒例の襲撃が来ていた。
「またかよ、アカ、イリル、行くぞ」
どうせ雑魚ばっかりだ、余裕だろ余裕。俺は敵の前に歩いて行き、ハンデとして杖を捨ててやった。
「少し舐めすぎではないか、小僧よ」
少し年老いた、魔法使い風の男がそういう。どうせ魔法使いと言っても第五魔道士ぐらいだろ。今までの経験からそれ以上高位の魔法使いだなんて絶対にありえない。
このときの俺はあまりに油断しすぎていた。
「別に?どうせ奇襲にくる奴らなんて雑魚だしな」
俺はニヤけながら相手にそう言う。この構図を見たらどっちが悪役なのかわからないな。
「奇襲にくる奴らだと?我々はこれが初だが…まぁ良い」
男はそう言って魔法を唱え始めた。
男が唱える度に魔力は杖さきへと集まり、やがて巨大な魔力の塊となった。
「……!イリル!アカ下がれ!」
俺は後ろを向き、そう指示を出す。
この男が使っているのは第二魔道士クラスの魔法。俺たちなんかでは歯が立たない。
俺達は急いで逃げるが間に合わなさそうだ。
「クソ!こうなったら…!」
俺はアラベストの街で買った、召喚魔法の魔道書を取り出す。
俺はページを開き、詠唱を始めた。
「出よ!我が従僕よ!」
俺の詠唱が終わるのと同時に、向こう側も詠唱が完了したみたいだ。
男から俺に向かって魔法が飛んでくる。だが、俺の前に姿を現した、一つの光によってその魔法は弾かれた。
「…召喚魔法か…」
男はそう呟いて姿を消した。
一瞬でいなくなったことから、どうやらテレポートを使える第一魔道士クラスだったようだ。
「逃げたのか…」
後ろで剣を構えていたアカがそう言う。
「なんですか、もう逃げてしまったのですか」
聞き覚えのない声が俺達の耳に飛んでくる。
「だれ…?」
イリルがポカンとしながら声がした方を見る。そこは、俺の目の前だった。
そこには煙と光に包まれた、見た目は17か18歳ぐらいの高校生っぽい銀髪の女の人が立っていた。
「うわ!びっくりした…」
どうやら、俺の召喚した生物のようだ。
「申し遅れました。私は、フェルビン。至って普通の召喚獣です」
召喚獣…?どうもそうには見えないが…
「召喚獣な訳がないと?ほら、ここにケモ耳と尻尾があるじゃないですか。なので私は獣です」
確かによく見ると、犬というか狼のような耳と尻尾がある。
「なんで人型に…?」
俺がそう聞いた。どうやら、フェルビンによると、見た目は召喚者の好みで変わるらしい。俺は心の奥底で、獣人の可愛い女の人がいいと願っていたのだろう。
「じゃあもう敵はいなくなったから帰っていいぞ」
俺がそういうと、フェルビンはキョトンとし、口を開いた。
「帰るも何も、召喚されたら帰ることなんてできませんよ」
帰れないだと?じゃあどうする気で…
「皆さんと一緒に旅をするしかないじゃないですか」
「いやいや、これ以上人が増えても出費が増えるだけだし…」
俺がそういうとフェルビンはニヤッと笑った。
「まさか、命の恩人をそこら辺に捨てていくわけないですよね?まさかそんな薄情な人、というわけでもないですよね?
クッ…それを言われたら…
「仕方ない…か…」
召喚獣ってもっと従順なんじゃないのか?
仕方ないので、俺達はパーティーにフェルビンを加えて、旅を進めることにした。




