第16話 イリルの本音
一部改正を行いました。
翌朝、俺達は予定通り街を出て、ベルセリムに向かっていた。
とりあえず、イリルに怪しまれないために、昨夜のことはなかったように振る舞った。
「やっぱりこの魔法いいね!」
俺達は空中浮遊の魔法を使って、歩きの三倍ほどの速度で移動していた。
「これ、もっと速くできないのか?」
アカが俺にそう聞く。残念だが、俺達の魔力ではこのスピードでないと長距離移動ができなくなってしまう。これ以上の速度を出すと、魔力切れを起こしてしまう。
「なんだ、無理なのか」
アカはそう言う。でも、この魔法を全員習得したおかげで、かなり速く移動することができた。
俺達は、予定していたのよりもかなり多くの距離を移動することができた。
今日は近くの森で野営をすることにした。夜は危ないと言うことで、一人一人が交代して見張り役をすることになった。
最初は俺、次にイリル、アカという順番だ。
テントを張って夕食を終えたイリルとアカは眠りにつき、俺は見張を始めた。
見張を始めてから一時間後、イリルが起きて俺の方へと寄ってきた。
「どう?調子は?」
イリルが横でそんなことを言う。
「いい調子だ。何も出なくて絶好調だ」
俺はイリルにそう返す。目の前では焚き火が燃え盛り、コオロギのような虫の声が聞こえてきた。
「それはそれは」
なんかイリルの口調というか雰囲気が少し違うような…なんかお姉さんっぽいというかエ◯い。
俺達は空を見上げ、星を見ていた。俺はここだ!と思い、前世から一度は言いたかったセリフを口にした。
「あれがデネブ。アルタイル。ベガ。有名な、夏の大三角ね」
俺は指を指しながら空を見上げた。
「どうしたのアルマ?急に口調が変わって?それにそんな星も星座も聞いたことないよ?」
「いやなんでもない、気にしないでくれ」
やっぱり通じるわけないか…いや通じたら逆に怖いな……
少しの間沈黙が続く。その沈黙をイリルが打ち破るように口を開いた。
「私ね、アルマが好き」
イリルは俺に向かって微笑みながらそう言う。
「…は…?」
俺は状況が飲み込めずまだ混乱している。
俺があたふたしていると、イリルはニコッと笑いって「時間じゃなけど見張り変わるよ!」と言ったので、ここはお言葉に甘えることにした。
横になったが、やっぱり状況がわからない。
俺は、一睡もできずに結局は一晩中起きていた。
その後も俺達の旅は順調に進み、アラベストとベルセリムの中間ぐらいまで来ていた。
「ここまでアラベストから三週間か…長かったな…」
長かったと言っても魔法のおかげで一週間も速くつけたのだ。かなり早い方だろう。
俺はあの後も、アカから恋愛相談をされていた。経験のない俺に言われてもって感じだがまぁラブコメとギャルゲで培った恋愛力でアドバイスをしてやった。イリルとの件は、あれから音沙汰がない。多分雰囲気とかムードとかでポロッと言ってしまっただけだろう。
とりあえず俺達は近くの街の冒険者ギルドに寄って金がなくなり始めたので依頼を受けることにした。
「街までもう少しだからな」
俺は士気を上げるため、イリルとアカにそういう。
「ちょっとアルマ、待って…休憩、させて…」
イリルが魔法を放つ用の杖を本当の杖にして、よろよろと歩いている。
「イリル、体力無さすぎだろ」
俺がイリルにそういうと、「仕方ないじゃん!」といい、勝手に芝生へシートを敷き、居座り始めた。
ほんとこれのどこがよかったんだか。
仕方ないので俺達はここで昼食を取ることにした。




