第15話 アカの本音
「イリル!右だ!」
冒険者登録を完了させた俺達は依頼を達成させるため、街の外へと来ていた。
「了解!」
イリルはそう言って詠唱を始めた。
杖の先に魔力が集まり始め、詠唱を終えたイリルは魔法打った。
「ハイドロス・フィナーレ!」
イリルの杖の先から水属性の攻撃魔法が放たれた。
攻撃は目の前にいる魔物へと一直線に向かい、命中した。
依頼を終えた俺達は、宿へと戻っていた。
「いやーほんといい宿だなここ」
もちろんお高いお宿なので、一人一部屋な訳がなく三人一部屋だ。でも、部屋は区切られ、ほぼ一人一部屋だ。
部屋は高いだけあってかなり豪華だ。朝食もしっかり付いてくる。この街の貴族御用達一流ホテルだ。もう、こんなところしか空いてなかったんだ…
野宿でもいいが久しぶりに風呂に行きたかったからこんないいお宿に…
一泊三人で十五万は高かったな…
まぁたまにはこんな贅沢もいいか…
この街の手前であった襲撃者が二十万も持ってたからないや、良かった良かった。
え?窃盗罪だって?俺達はバトルに勝ったんだ。だから報酬を相手から貰うのは当たり前だろ?
ポケ◯ンだってそうじゃないか。短パンはいた小僧からですら金むしり取るじゃん。
それと変わらんだろ。
「見て見てアルマ!上質なワインだよ!」
イリルが置いてあったワインを指さしてそう言う。
あ、そうだ。この世界には未成年飲酒法など存在しないのだ。何歳からでも酒は飲める。もし、成長に害があったら自己責任。そんな感じだ。
「酒を飲む前に風呂に入るぞ」
アカがそう言って、部屋にある浴場へとイリルを放り込む。
さすがお高い宿と言ったところか。この街の風呂は宿か自宅でしか入れないのだ。
もっとも、綺麗な水は飲み水として使うため希少だし、水を出すなどの生成系魔法は第六魔道士以上しか使えないので家でも入ることはそうそうないらしい。
ここも高級宿といったところだろうか、風呂の水は使いたい放題。飲み水は飲み放題。
でも俺の魔法で出せるから意味ないんだけどな。
イリルが居なくなった後の部屋で、俺達はじっとしていると、アカが口を開いた。
「俺、イリルのことが好きだわ」
俺は飲んでいた水の入ったコップを落とした。…アカがイリルのことが好き…だと?
でも、アカにそんな素振りはなかったはず…
でも、そもそもアカは怒りと呆れ以外の感情をあまり表に出さないタイプの人間だ。俺が気づいていないだけでそんなことがあったのか…?
「でも、旅の間はパーティー内に亀裂が入る可能性があるからこの気持ちはイリルに伝えない。旅が終わったら打ち明けようと思う」
アカは続けてそういう。状況が未だに掴めていない俺は、ベットに座って、固まっている。
「そう…なのか…うん、応援してる」
俺はよくわからん感情が入り混じる。イリルは仲間で親友だ。もちろんアカもだ。そんな二人が恋仲になるなんてなんとも不思議な気分だ。いや、こんなこと俺が考えることでもないか。
これは二人の問題だ。旅の間はこの仲間同士の関係だが、旅が終わったときには変わっている可能性もある。その時は素直に祝福してやろう。
ここで一つの疑問が出てくる。俺はイリルのことが異性として好きなのか。と言う問題だ。
確かにイリルのことは好きだ。それが友達としてなのかどうなのか、俺にはわからない。前世でもこんな経験、なかったからな。
でも、俺はこんな不確かな気持ちだ。それなら純粋に愛しているアカの方が俺よりもイリルと結ばれるべきだ。
「ありがとう。アルマ」
アカはそう微笑んだ。俺の気持ちは、初めて仲良くなった女の子だったから浮かれていただけなのかもしれないな…
その後、気まずさからなのか長い沈黙が続いた。
イリルが浴場から出てきて、アカが入っていった。
イリルは、旅の思い出などをアカが出てくるまでずっと語り続けた。出てくるまで、ではなく出てきても語り続けていたか。
こうして、俺達の一日が終わった。




