第14話 冒険者
俺達は数分ほど歩き、市場へと到着した。
この街は今までの街と比べて、中華風な感じだ。今までの街で西洋風のドレスも見てきたがやっぱりチャイナドレスはいいな…!俺は、道を歩くチャイナドレスを着た女の人を眺める。
いかんいかん、チャイナドレスを眺めに来たんじゃない!物資調達をしなくては!
俺達は、この市場で生活必需品や、食料を買って、宿を探すことにした。
「うーんいい感じの宿がないな…」
宿探しはかなり難航していた。安い宿は大抵埋まってしまっていて、空いているのはお高い宿のみ。
結局、俺達は一時間ほど歩き回る羽目になった。幸い、裏路地の方にボロくて古臭いが安くて部屋の空いている宿を見つけた。
かなりの格安だったので一人一部屋を使えることになった。
ここで、この格安宿の内見といこう。俺は、二階にある自室へと向かった。
まずは部屋の扉、ガタついていて今にも取れそうだ。床もギシギシといっていて、今にも落ちてしまいそうだ。俺がドアノブに手をかけて回した瞬間、無情にもドアノブは取れてしまった。
まぁ泊まっているのは俺達だけだしまぁいいだろう。
次に室内だ。部屋は三畳ほどの広さで、ベッドが殆どを占めている。トイレ、風呂は共有だ。もちろん、ベッドは最後に洗ったのなんて三年は前なんじゃないかってぐらい汚い。
ベッドには先客が居るみたいだ。立派な巣を作っている蜘蛛さんだ。隣にはネズミの糞がある。
俺は、回れ右をして部屋を出た。アカとイリルも同時に部屋から出てきた。話し合うまでもなく、ここの宿はやめることにした。
結局、仕方ないのでちょっとお高いお宿にすることにした。貯金はゼロになったが、冒険者になって今から稼いでくればいい。
冒険者…?そういえば俺らってもう冒険者になれるんじゃないか?
「そういえば、そろそろ二ヶ月が経つよな。俺とアカってもう冒険者になれるんじゃないか?」
塾長から貰った五十万とちょこちょこ襲撃にくる北部連合の奴らからパクった金があったから金に困ってなかったんだよな。すっかり忘れてた。
「た…」
「確かに!この街に冒険者ギルドがあるから行ってみよう!」
俺に答えようとしたアカを無理矢理遮ってイリルがそう突っ込んでくる。
ということなんで俺達は冒険者ギルドに向かう事にした。
「おぉ…ここが冒険者ギルドか…」
どうやらこの街の冒険者ギルドは他のところと比べてかなり大きい方らしい。そして、かなり豪華だ。どのくらいかと言うと、中国の時代劇で出てくる王様の部屋みたいな感じだ。お高そうなソファーやトラの剥製のつもりだろうか、なんかの動物の剥製も敷いてある。
俺とアカは、無事に冒険者登録を済ませ、現在パーティー名を決める会議をしている。
「さてどうしたものか。なんかいい案ある人、挙手」
アカがそう言うが誰も手を挙げない。全員、自分のネーミングセンスが終わっていると言うことを自覚しているからだ。
「はい」
俺は手を挙げた。
「はいアルマくん」
「もう『未定』にしましょう」
ネーミングセンスが無くて決められないのならもう未定でいいだろ。
「うん、もうそれでいいか。一周回ってかっこいい。出してくるわ」
アカはそう言って書類のパーティー名の欄に『未定』と書き、カウンターへと向かった。
本当にこれでよかったのか?そんな思いはするがパーティー名なんていつでも変えられるからまぁいいだろう。
俺たちはとりあえず、今のランク帯で受けられる任務を選び、街の外へと出ることにした。




