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松永さんの家


 あの後、俺と美月は松永さんを家に送り届けたのだが、そこで彼女の祖父母さんたちに呼び止められ、彼女の自宅にお邪魔していた。


 「これ、粗茶ですが」


 「あ、どうも」


 「ありがとうございます!」


 泣き疲れて眠そうな松永さんを自室に送り届けた後、俺と美月はリビングに通された。

 松永さんのお祖母さんは温かいお茶と共に煎餅を出してくれて、俺達は恐縮しながらも、断るのも失礼なのでありがたくいただくことにした。


 あっ、あと口調は興奮が冷めて戻りました。自分で決めたロールプレイも守れないなんてよもやよもやだ、穴があったら入りたい!!(炎柱)


 「まずはお礼を言わせてくれ、本当にありがとう…!!!」


 そう言って頭を下げるお祖父さんに、俺達は慌てて顔を上げるように言う。


 「か、顔を上げて下さい!ただ私は真昼ちゃんの話を聞いただけなんです!」


 「ん、私もそう」


 そう俺が乗っかると、何か言いたげに美月は俺のことをジト目で見ていた。何か言いたいことでもあるんですか???(すっとぼけ)


 「それだとしても、だよ。それが私達には出来なかったんだ。だから、私達の代わりにあの子の悩みを聞いてくれた君たちには頭が上がらないよ」


 松永さんのお祖父さんは俺達の言葉を聞いても頭を上げようとしなかったが、お祖母さんがお祖父さんの肩を叩くことでやっとのこさ顔を上げてくれた。そして、改めて俺達に感謝を告げると、松永さんについて語りだした。


 「あの子は私達の愛娘が残してくれた宝物でね……、小さな頃から蝶よ花よと可愛がって育ててきたんだ。だからこそ、真昼も私達に負い目があったのかなぁ。何を聞いても大丈夫の一点張りで、真昼の力になることができんかった。それが、悔しくて、情けなくてなぁ……」



 お祖父さんは血が出んばかりに拳を握り込み、唇を噛んで涙をこらえた。辛いのは自分じゃなくて真昼自身なんだと言わんばかりに涙をこらえるその姿は、俺達の目には立派な父親の姿に見えた。



 「黒川さん、桜井さん私からも本当にありがとう。真昼だけじゃなく、この人も、そして私も助けてくれて」


 そう言って涙を流すお祖母ちゃんは家族を愛す母親の姿そのものだった。



 「ここだけの話、私達引っ越そうと思うんです。真昼をこんな目に合わせた奴らのことは勿論許せないんですが、どうやらあちら側に大きな権力が付いてるのか、訴えも揉み消されてしまいました」


 お祖母ちゃんが言うには、紛失した私物のことに対して学校側に訴えたが、『そんな事実はなかった』とだけ言われて取り合って貰えなかったらしい。


 これには俺も前世の俺がひょっこり出てきそうになるが、彼らの前なので流石に堪える。



 「この家は娘との思い出が詰まった家ですが、あの子に比べたら安いもんです」


 そう言って、お祖母ちゃんは諦めたように笑う。


 「そ、それで良いんですか?」


 「えぇ、良いんです。形あるものはいつか別れが来るものです。それが来たというだけですから……」


 「………」


 そう言うお祖母ちゃんの顔には、言葉とは裏腹に隠しきれないやりきれなさが見えた。


 「長く話しすぎましたね、もう夜も遅いですしお話はここまでと致しましょう。あなた達と出会えて良かったわ」


 そう言って、俺達を見送ろうとするお祖母ちゃんと何も言わずに目を瞑るお祖父ちゃん。


 本当はもっと怒り狂ってもいいのに、自分の孫のことを第一に考えて、思い出が詰まった家すら捨てても良いとする献身。


 その姿を見て、俺は「あぁ、やっぱり松永さんの血筋なんだなぁ」と思って少し笑ってしまった。



 「?どうしたんですか、いきなり笑って」


 不思議そうにお祖母ちゃんは俺に問う。


 俺はその質問に対し、姿勢を正して言った。



 

 「ねぇ、お祖母ちゃん、お祖父ちゃん、復讐できるって言ったら、どうする?」



 そう俺が言うと、2人は驚いたような顔をして、俺の顔を見た。



 「復讐って……」


 「学校に言ったって解決しなかったんだぞ。そんなことできるはずが……」


 「出来る」


 その言葉で彼らは押し黙った。


 「私には、それをできる考えがある」


 「でも、問題の解決ならばともかく、復讐だなんて……」


 そうお祖母ちゃんは言うが、俺は言い返す。


 「こんなことをする奴が、反省なんてする?私は、そうは思わない。なら、出来ないように叩けば良い」


 そう言うと、お祖父ちゃんは動揺しながらも反論する。


 「復讐なんて何も生まない。復讐した後に残るのは虚しさだけだ。だから、復讐までする必要なんか…」


 「お孫さんが、もう一度いじめられても?」


 「……!」


 そう聞き返すと、お祖父ちゃんは何も言えずに、下を向いた。


 「なぁなぁで済ませたら、奴らはきっと繰り返す。だから、そうさせないようにしっかり叩くべき。それに、復讐って言っても、何も命を取るわけじゃない」


 「でも……」


 これだけ言っても、まだ納得しない2人に俺は、漫画の言葉を借りることにした。


 「『復讐とは自分の運命への決着をつけるためにある』」


 「!!」


 「あなた達は、決着をつけなくてはならない。でないと、二度と前に進めなくなる」


 そう俺が言うと、2人は少しの間沈黙し、そして答えた。


 「本当に、策はあるのか…?」


 「ある」


 「ならばっ…………!」


 お祖父ちゃんは、溜まったものを絞り出すように心の底から言う。



 「私達に、復讐するチャンスをくれ!!!」


 「っ!その言葉が聞きたかった」


 

 心を偽る優しい人達に、やっと本心を言わせることが出来た。こんなに嬉しいことはない。


 だが、本当にやるべきことは今からだぞ、俺。気ぃ、引き締めろよ!



 「私達はまず、何をすれば良いんですか…?」


 そう言って、覚悟が決まったように聞いてくるお祖母ちゃんに、俺は命令を下す。




 「取り敢えず、お孫さんとちゃんと話し合って」


 「…!!」


 何が来るのかと身構えていたお祖母ちゃんは、予想外の言葉に呆気に取られていた。


 「まずは、お互い本音を語りあうのが大事。お邪魔な私達は、ここで帰る。だから、ちゃんと話し合って。ね?」


 「「……はい!」」


 そう言って返事する2人に頷いた俺は、もてなしてくれたことのお礼を2人に言ってから、美月を連れて松永さんの家を後にした。







 「ね、ねぇ!さっきは私、口を挟めなかったから聞くんだけど、考えってどんなものなの?」


 松永さん宅では聞きに徹していた美月が、当たり前の疑問であるそれを聞いてきた。


 「だって、後ろに大きな権力があるんだよ?本当に私達に何かできるの?」


 美月が不安そうに聞いてくるが、問題はない。何故ならば―――



 「大丈夫、こっちには雪がいる」


     


  ―――こっちには、更に大きな権力を持っているからだ!



 あ、おいお前の力じゃないんかいって目をするな、無理に決まっているだろう。俺はただの美少女だぞ?




 

 

雪ちゃんはお嬢様です(迫真)!!


 ポイントくれめんすー・ω・


追記:ミスで今日投稿してしまったので、明日の更新は(多分)ないです。

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