第一話 はじまり、はじまり
「ここまで来れば大丈夫だろ…。」
路地裏へ息を切らした金のネックレスなどを着けた二人のギャングが銀のジュラルミンケースを持ち、街の方から走ってきた。
ここはミロンタウン。大きさは中くらいな街だが何かと犯罪が起きやすく今も銀行強盗をこの二人が行ってきたばかりだ。
「警察もここまで追ってこないだろ。さてと…。」
二人はジュラルミンケースを近くにあったゴミ箱の上に置きケースを開けて中身を確認した。
「兄貴!やりましたね!」
「ああ!最高だぜ!」
ジュラルミンケースの中には大量の札束が詰まれており二人は興奮を押さえきれない。
「早くこの街から出て、豪華に暮らすぞ!」
二人がケースを閉じて逃げようとすると、路地の出口に一人の人影が立っていた。
「そんなお金を持ってどーすんだ?お前ら泥棒だろ。」
人影が前に歩いてくると電灯に照らされて現れたのは細身のマッチョで上にはハワイアンシャツを着て短パンを履いた黒髪の十代後半くらいの青年だった。
「どけ!さもないと撃つぞ!!」
「やれるもんならやってみな!!」
子分が青年に発砲すると青年は銃弾をすんなり避けて泥棒たちに向かって走ってくる。泥棒達は次々と発砲するもすばしっこい青年に全く銃弾が当たらず残弾が0になってしまった。
「やばいぞ!!」
「俺に見つかった時からお前達はやられるって決まってるんだよ!」
青年の右腕が硬く黒く変化した。まるで鋼鉄のようだ。
「まさか!あいつが!鉄腕のヒロか!!」
青年が泥棒の兄貴分の鳩尾に狙いを定めた。
「鉄腕技!岩砕き!!」
ヒロは右手に全ての力を込めて思い切り拳を放った。
ヒロの拳は兄貴分の鳩尾に鉄腕がクリーンヒットし数百メートル先の壁までぶっ飛び激突した。壁は砕け砂ぼこりが立ち込めギャングの兄貴分は白目を向き口から涎をだらだらと垂らして気絶していた。
「お前はどうすんだ?兄貴分はダウンしちまったぞ。」
ヒロは弟分に睨みを利かして問いただした。
「じ…自首します…。」
子分はビビったのか膝から崩れ落ち、小便を漏らして唖然としていた。するとパトカーのサイレンが静かな夜を切り裂くように鳴り響いた。
「やべ!見つかったらまずい!!」
ヒロはすぐに走りだし路地裏を脱出して家路についた。