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いつも朝、早いね
わたしは女優だ。この世界で勝手に決めつけられた設定とあらかじめ用意されたセリフを淡々と吐く、立派な女優だ。青いブラウスはベストを着ない方がかわいいけれど、わざわざ校則のベストを脱ぎ捨ててブラウス一枚で廊下を歩く勇気はない。紺色の靴下だって、丈のチョイスは時代によって変わるらしいけれど、入学したときからずっと指定のものを履いている。目立たず、無難に。けれど、不快感を与えない好い加減の地味さで、毎日を生き抜く。それが女子高生のわたしにとってのベストアンサー。
朝の教室の空気は独特で、いつ世界の序列が変わるかわからない。だから、誰かが空気を作る前に、最初からそこにいる。おはよう、と声をかけられて振り向く側でいることが一日の安心感をつくる。
最近、席替えをした。後ろの席のもみじとは仲がよくて、もしもわたしが教室の空気を凍り付かせるような失敗をしたとしても、一番最初に大きな声で笑ってくれる、心強い味方のような存在だ。
読んでくれてありがとうございます。