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Window Story  作者: 高槻 あま
貴方も素敵よ
2/5

屋敷探索と謎の声




自分の部屋からこの謎の廊下へやって来て、どれくらい歩いただろうか。


窓枠を跨ぎ廊下に足がついて後ろを振り向くともう私の部屋は無かった。

つまり、語弊はあるかもしれないけれど閉じ込められてしまったみたいだ。


前に進むしか道はないみたい。


出口を失って焦ったけど、でもわくわくもする。

気分は美女と野獣のベルって感じだ。



私の部屋から見えた突き当りの壁までは一本道で部屋は無かったけれど、

突き当りを右に曲がれて、曲がってみるといくつか扉があった。


これまた豪華な扉。


恐る恐る開けてみると多分、なんの変哲もない洋室。


「ダンディでハードボイルドなおじ様が椅子に座って葉巻をふかしてそう。ふふ」


骨董品やら豪華な装飾品があるし、この家の持ち主はやはりお金持ちなんだろう。


部屋自体は変わった所はないと思うけれど、

洋室の窓から見える風景は私にとっては異様だった。



「この景色って本来、私の部屋から見えるものだよね」


山、道路、寂れた個人店。

おまけに数は少ないけど車も走っていて、ジョギングしているおじさんや

犬の散歩をしているおばさんもいる。


時計が置かれてないから分からないけれど

時間はおそらく普通に進んでいる。


「異世界ではないけれど、現実世界と云う訳でもないのかな。」


なんせ、私の部屋から見える景色がこの屋敷から見えるのは普通とは思えない。


時間が現実世界と同じように進んでいるのだとしたら

はやく戻らないとまずいことになっちゃう。


お母さんが心配するだろうし。



「次の部屋、行こう」



部屋を出て、またレッドカーペットの廊下を進む。



2部屋目、3部屋目...6部屋目。

普通の部屋から寝室、色々な部屋があった。



「ここも同じだ」


だけれど、どの部屋から見える景色も同じだった。

部屋の位置関係なく、1部屋目の窓から見える景色と同じ。



「世界がっていうより、この屋敷がおかしい説あるな。」



6部屋目を出て廊下を進むと下りの階段があった。

無駄に横に広くて高そうな、つやつやの木で出来た手すりの階段。


窓から見えた景色的に上の階だとは思ってたけど、上り階段はなかったしここは二階なのかな。



下に見えるのはホール?と言えばいいのだろうか。

何もない空間がただただ広がっていた。

しかし、まだ先はあるようで扉がいくつか見える。


大きなシャンデリアがついていて、十分に明るいのに人気がないからか寂しく感じる。



「広すぎない?この屋敷..。屋敷の時点で広いのか。

それに進むにつれてギシギシ音がするし..老朽化?それより、少し疲れちゃった」


はぁ..


「まだ二階は全部見終ってないから下りられないよな~。

とりあえず、一階は保留にしよ」


階段を通り過ぎて、奥へと足を進める。

やはり歩くたびに少しギシっと音がする。




え?


ぽつぽつとレッドカーペットの廊下を歩いていた足を止めて耳を澄ませる。



誰かの話し声?



ちょうどあと数歩で曲がり角、という所で声が聞こえた。



少しくぐもった声だからどこかの部屋の中から聞こえているのだろう。

耳を澄ませても何を話しているのか分からない。

でも、確かに誰かが話している。



女の人と、男の人?



「嘘でしょ...」



困った事になった...この家には家主が居るのか。


そりゃ、そうだよ。

今更だけど電気ついてるんだもん、人いるよ..



これだから、私は駄目なんだよなぁ。

好奇心というか冒険心というかメルヘンというかさぁあ。

不思議の国のアリスに感化されて調子に乗って..


「この前も散歩してて調子に乗って迷子になったんだっけ。」



体を竦めて壁によると、

漆喰の壁ならではの冷たさが右肩から伝わってきて上がった体の熱を冷ましてくれた。



「いやいやいや。

すぅー...はぁー、」


とにかく深呼吸して落ち着こう。



「すぅー、はぁ~..」

何度目かの深呼吸でやっと私の心は落ち着いた。



「まぁ、ここは逆に言えば現実世界でもあるけれど異世界でもあるかもなんだし

家主に見つかっても迷い込んじゃいましたって言えば、異世界小説の流れだと助けてくれるはず..」


無理にでもポジティブに考えないと足を進められないよ。

出口を見つけないと帰れないんだし。



足音を立てないように気を付けながら角を曲がる。


すると、左右にいくつかの扉と真正面に扉があった。

真正面の扉がさらにその先へと繋げるものでなければ、ここで二階の探索は終わる。



あんまり扉の開け閉めはしたくないな、音で存在がばれちゃうかもだし。

......いや、いっそうのこと声の主達に助けを求めてみるのもいいのかも。


私はこの屋敷から出たいわけだし。


好奇心に駆られて入っちゃったけど、決して荒らしたりとか盗みを働こうとかそんな気持ちは..。


言い訳は置いといて、声の主達を見つけることにしよう。




足音を立てないように一室一室、扉に近づいて耳を立てる。


ここじゃない。

そう遠くはなさそうなんだけどな。


4つ目の扉。


ここだ。

ここの部屋から聞こえる!



何を話しているんだろう。やっぱり、思った通り男性と女性の声だ。


『はぁ、何時になったら君の姿を映すことが出来るんだろうね。

早く君を見たいよ』



ん?

映す?見たい?


恋人同士なのかな。


『それは私も同じよ。私も早く貴方の姿が見たいわ』


やっぱり、思った通り男性と女性の声だ。


会話からして、この人達はお互いの事が見えていないってこと?

同じ部屋に居るのにお互いが見えないなんてどんな状況なんだろう。


目が不自由な方同士の恋人?


だとしたら、この屋敷にはこの2人以外にも人がいるのかな。



「ふぅ~」


よし! 行くか。



コンコン__


『お!誰か来たみたいだぜ、ハニー』


『ええ、そうね!お客様なんて珍しいから嬉しいわ~』



ふふ、悪い人達ではなさそうでよかった。


「失礼します」



ガチャ___


扉を開けるとなんとも賑やかで優しい声が私を出迎えてくれた。

中は執務机があってローテーブルにダブルソファが2つ。そして様々な家具が置かれていた。

これまでに見た部屋と同じような部屋だ。



『やぁあ~、いらっしゃい。おお!!これまた可愛らしいお嬢さんだ!』


『いらっしゃいませ、可愛いらしいお嬢さん。

ふふ、お客様というだけでも嬉しいのにそのお客様が女の子なんて今日は良い日ね』


『そうだな、ハニ~』


『ふふ。

あら、どうかしたかしら?可愛らしいお嬢さん?』



...。


はっ!


「すいませんっ!あはは、大丈夫です!何でもないです」


『そうかっ!なら、良かった!』


『お嬢さん、宜しければソファに座って休んでくださいな。

ごめんなさいね、本当はお茶や菓子をお出ししてゆっくりお話し出来たらいいんだけれど..』


「い、いえ!っ、そんな、大丈夫です。

お気遣いありがとうございます。」



得体の知れない私を当然のように受け入れてくれて

優しい方達だと思う。思うんだけど..


「ソ、ソファ、有難く座らせていただきますねっ、」


私は部屋に置かれているダブルソファに腰をかけた。


これは触れてもいいことなのだろうか...?

聞いた瞬間に豹変したりしないよね..?


「あ、あの~。」


私は一つの疑問を胸に恐る恐る声をかける。


『どうかしたかい?お嬢さん』


「お聞きしたい事が、ありまして」


『ええ、どうぞ。なんでも!聞いてちょうだいな』


「ありがとうございます。それでは、遠慮なく。」






「先ほどから、お2人の姿が見えないのですが

どちらにいらっしゃるんでしょうか..」













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