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プロローグ3

「私は、ここの土地の生まれです、ここは、百年前まで、帝国とは一切無縁の田舎の国家でした………しかし、帝国は拡大政策を取り、私の祖国は奪われ、今日では第三帝国領となっています。」

「存じ上げております。」

「私が今回の戦争を仕掛けたのは単純な理由です、私は祖国を復活させ、そして、そこを世界初の民主主義国家へ、生まれ変わらせたいのです。」


民主主義の話は聞いていました、国の主権は国の大部分を占める国民に存在し、国民の多数決で支配者を決める、今までの専制政治とはまるで異なる国家形態。


しかし、議会制の国が増える中ですら今のところそれを実現させた国家は一つも存在しない、それは国の締付け、取締があまりにも厳しかったから。


「だがら、私は自分の祖国に目をつけた、帝国の端の端、ここであれば取締の目もくぐり抜けることができる、そうして民主主義国家を生みだすのが、いまの俺の目標かな。」

「なるほど、真意は伝わりました、ところで、アミルハ教の人間の保護とは、一体どういうことでしょうか。」

「アミルハ教の人間、正確には牧師等の教会に務めているような人間だが、国内で少々困ったことになっていてな、我々は、もともとイベルリ教の国だったんだ、今回の反乱が成功したあとは宗教をイベルリ教に戻すべきである、という意見がメンバーの間でかなり根強くなっているんだよ。」

「………。」

「別に俺はそこのところはどういう結末であろうと構わない、だけど、すでに暴走した人間がアミルハ教の人間の弾圧を始めているんだよ、だから、これ以上話がこじれる前に君たちに先に保護を頼みたいと言うのが、今回の会合を設けた理由だ。」

「私は、そのことについて異論はありません、しかし、第三帝国領内のすべての人間の保護となると、とてつもない労力がいります、ただでさえ、ここのインフラはとても悪いようですし………なにより、できることなら教皇様の判断を仰ぎたいのですが………。」

「いやぁ、それは我々の落ち度でしたよ、なにせあまり多くの情報を発信することが難しいものでして、ドタバタしているなかそこまで伝えることができず………。」

「………わかりました、ところで、アミルハ教の人間と、一度話すことは可能でしょうか。」

「えぇ、構いません、今日にでも車の手配をしましょう。」



城から先は、とても道路がしっかり整備されていて、車での移動が十分可能な状態でした。


だんだん民家が見えるようになり、ついに私は山の向こうの街にたどり着きました。


「………おい、あれは聖女様ではないか。」

「本当だ、連れのものがアミルハ教の旗を掲げておられる………。」


そうまわりがざわつく中、人混みをかき分けて一人の女性が歩いてきます。


「話は聞いております、ようこそおこしくださいました………。」



「………ここの兵隊も、帝国軍と同じ軍装なのですね。」

そう、私服のものが大半だが、チラホラと正規軍の鎧に身を包む者たちが立っている、彼らは腕に腕章をつける以外は、帝国軍と何も変わらない出で立ちなのだ、きっと、あれがリッテン・シュリーベルトの旧連隊のメンバーなのだろう。


「えぇ、そうですね………。」

「………。」

「この教会は、ちょうど百年前にできたんです、そう、帝国がここを征服してからね………リッテンくんとは、知り合いなんです、ほら、反乱軍指揮官の。」

「ええ、存じています、彼とは、昨日会いましたから。」

「元気でしたか?彼………彼は、今でこそああだけれど、もともと熱心なアルミハ教の人間だったんですよ?でも、大人になるにつれて、彼はいろいろ変化していったんです、体を鍛えて、勉強を頑張って、とても子供とは思えない行動力で、あっという間に有名な大学にはいって、そのまま軍に………聖女様、私悩みがあるんです、彼は、いま私のことをどう思っているのでしょうか。」

「それは、どういうことでしょうか。」

「時々私不安になるんです、彼はいま、私達をここから追い出そうとしている、勿論、それが彼の意思ではないし、そんなことは有り得ないと、思っています、でも、それでも、もしかしたら彼は、私達の事を心の中で憎んでいるかもしれない、アルミハの教えを憎んでいるかも知れないって。」

「安心してください、彼は、そんなふうには見えませんでしたよ。」

「でも………。」

「ねぇ?人は信じることですよ、それがあなたと親しい人ならなおさらです、もう一回、かれの事を思い出して見てください、彼に疑うようなことが今までありましたか?あなたはいま心の中で不安に思っているけれど、理性では正しいと思っているのでしょう?なら気になさらない事です、私が保証しますよ?」

「そうですか………あら、関係ない話をしてしまいました、ここにいるアルミハ教の司祭、修道士は5万人ほどいます、どうか、我々を頼みます。」



「………そうか、ありがとう。」

「ええ、我らがアルミハ教徒の人間を穏便に保護させていただくということで動きます、次からは使節をどうして話しますので、そのつもりでお願いします。」

「ありがとう………。」

「………。」


いっしゅん、この人間は教会の女性司祭をどう思っているのか、聞こうと思いましたが、こんな公の席では言うことができず、結局細かい事を話し合いながら日が1日1日過ぎていきました………。



「聖女様、どうかよろしくお願いします!」

「はい。」

「護衛は変わらず我々帝国軍が務めさせていただきます。」


………見れば、並んでいる人の中にはこちら側のアルミハ教徒の代表としてでしょうか、あの女性司祭も来ていたようで、静かに佇んでいます。


「………サーラ様、もう行かないと。」

「ああ、そうでした………。」


………私達が城門の方へ向かおうというその時でした。


「………どけぇっ!!」


パァンッ!!


そう銃声が甲高くなり響き、その銃弾はリッテンさんの方を貫きました。


「くあっ。」


そう言って倒れ込むのを見て、周りはざわつきます。


「馬鹿なっ………ぐぁぁっ!!?」


パァン、パァン。


銃声は四方八方から鳴り響き、どこからか煙が立ち昇っていくのが見えました。


「隊長をお守りしろぉ!!」

「襲撃者はどこのどいつだ!!」

「聖女様、こいつはやばいぞ、早く逃げましょう!!」

「くそがぁ、なんで俺達が帰らないうちにおっぱじめちゃうんですかぁ!!」


ハインツ中尉に手を引っ張られ、壁の脇に隠れます。


そこから見ると、どうやら撃ってきたのは旧連隊のメンバーではなく、私服に腕章をつけただけの志願兵たちのようでした。


「聖女様、行きましょう!!」


私達は城の中を駆け抜けてい来ますが、敵味方が同じ服で入り乱れていて、誰を撃っていいのかも私達はわかりません。


「撃てぇっ!!撃てぇっ!!」


目の前で銃を構えた男達を二人さっとライフルで殴り倒した護衛の人たちが先行していきます。


「サーラ殿!!城門から出るなぁっ、こっちに来てください!!」

「行きましょう!!」

「わっかりましたぁっ!!」


声をかけてくれたのはリッテンさんでした、手招きされるがままに中に入った私達は、そのまま階段を降りていきます。


「ここから先は非常用の地下通路だ、ここに駐屯する帝国軍の中でも、佐官クラスでなければ知らされていない代物だ。」

「なるほどな。」

「このようなことになって本当に申し訳なく思う、私のミスだ、まさか志願兵の中にこれほど良からぬ人間が混じっているとは思わなかったのだ………!!?」


暗い通路はまだまだ続き、終わりは見えてきません、それでも私達は走っていき………。


パァンッ。


「下がって!!」


リッテンさんの脇を銃弾がすり抜けます。


「なっ………。」

「おっと、動くな!」


カチャ、とリボルバーを引く音が聞こえた。


「………何だ貴様は。」


その男は異様でした、黒いマントに、フード、まるで死神のような服装でした。


「………名乗る必要もない、ただ命を差し出せば、それでいいのだ。」

「そんな馬鹿な話があるかよっ!!」


ハインツが発射した弾丸は、男に当たる直前で弾かれたのがわかりました。


「結界!!魔法使いかっ!!」

「リボルバーなどは、使うまでもないのだがなぁっ!!」


パパパン!!高速で発射された弾丸が私達の方に飛んで来ますが、リッテンさんが剣を抜きすべて弾きます。


「仕方ない、通路の脇の扉へっさあ早く!!」

「させるかぁっ!!」



扉を入るとすぐに外に出ましたが、未だに城内でした。


すでにほうぼうで銃声が響き、死体がそこかしこに倒れています。


「っ…………。」


虐殺。


無論、これは一方的なものではありません、本当は、戦いと表現したほうがいいのかもしれませんが、私には、虐殺と表現するしかありませんでした。


ざっくり頭を切り落とされた死体を避けつつ私達は更に歩きます。


「ここにも、あの黒フードのお仲間かよっ!!」


ハインツ中尉とその部下の人達は、素人の私から見ても本当に優秀な方々でした、黒フードの人達は銃を構えて撃ってきますが、彼らは巧妙に撃たれる合間に撃ち返し、どんどん数を減らしていきました。


「ワァオォォォォォンンンン!!!」

「なんだぁっ!?」

「!!!ハルッ!!!こっち!!こっちよ!!!」


次の瞬間、銀色の巨大な狼が、城の中に降り立ちます。


「乗って!!!」

「聖女様!!ええい、クリス、お前も乗っとけよっ!!」

「うわっ!!冗談じゃないっすよ!?」


だが、ハインツ中尉の剛力で無理矢理の乗せられたクリスさんは、狼が走り出したため振り落とされないようにするのが精一杯でした。


「ここは任せておいてくださいっ!!!俺達はお気になさらずっ!!」

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