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詐欺師をムリヤリ勇者にしてもロクなことにはなりませんよ?  作者: 桂英地
一章 詐欺師をムリヤリ勇者にしてもロクなことにはならない。
9/107

~合間の話~ 後日談、というか事後の話

 

「んふっ♪んふふっ♪」

「……クランプス様、今日はいつもより気持ち悪いですね」

「もー貧乳(クロケル)ちゃんったら♪目ん玉くり抜いちゃうぞ?」

 

書類を持ってきた小娘がいつも通りの毒を吐いても、今日の私は怒らないよ?

膨大な量の始末書だってなんのその。

 

そんな私にクロケルはさらに引いた表情を浮かべていた。

 

「今回ばかりはその椅子、私のものになると思ってたんですけどねー」

「うん、それを本人の前で言えるんだからスゴいわよねー、アナタ」

 

アッシュを、あの《物騙り(ブックメーカー)》を精査もなく解き放ってしまったという失態。

天界の存亡に関わりかねない大失態。

 

本来なら左遷は確実だった。

いや、それどころか解雇も、最悪は神権の剥奪すらあり得ただろう。

そんな私を救ったのは、他ならぬアッシュの入れ知恵だった。

 

『貴女からのお願い、という形なら、一度だけ天界(そちら)のために働くよ』

 

神の法に縛られず、神の権能すら凌駕する力。

 

それは確かに恐ろしい脅威だが、裏を返せば天界にとって『喉から手が出る程欲しい力』にもなりうる。

アッシュはそれを見抜いていたのだろう。

 

もしもの時、彼に頼めるのは私だけ。

私の名において彼に施した封印を解けるのも、私だけ。

 

彼に教えてもらった通りそれらの事実を交渉材料にして私は、私の立場を勝ち取ったのだ。

 

堕天(ホームレス)すら覚悟していた私に与えられた処分は、戒告(小言)と大量の始末書と減俸で済んだ。

本当に、彼にはもう頭が上がらない。

 

まぁ恐らく、というか十中八九、彼には彼の思惑があって私に知恵を貸してくれたのだろうと思う。

 

でも……でもねっ!

その中にはほんのちょっぴりだけでも私に対する優しさがあると思うの!

それを思うだけで私は……

 

「……んふっ♪んふふっ♪」

「……やらかした事考えたら軽めの処分で済んで嬉しいのは分かるんですけど……なーんか喜び方に『女』を感じる気がするんですよねー?」

 

ギクリッ!

 

「な、なんのことかしら?」

「なんというか、こう……ダメなホストにハマる女の匂いというか……」

 

コイツッ!?妙なスキルでも持ってるのっ!?

 

冷や汗が顔に出ないように脇を締め、咳払いをして私は手を振る。

犬を追い払うように。

 

「さ、さぁ。いつまでも無駄話してたらダメよ。仕事、仕事」

「うーん……はーい、分かりましたー」

 

釈然としない表情のままクロケルは部屋を出ていく。

 

ホッと胸を撫でおろしてから、私はまた膨大な始末書と向かい合った。

 

んふっ♪

これが済んだら、可愛い下着でも探そっかなー♪


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