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4話



 モンスターを警戒しながら道を進んでいくと、いろんな種類の牛のモンスターを見つけたのでそれらを倒して牛乳を入手した。用は済んだし中央広場へ戻ろう。



 中央広場へ戻る途中、オオカミのようなモンスターが私たちの前に現れた。



「あのモンスターはいったい何なのかな?」



 クリスが聞いてきたので、私はそれに答える。



「あれは西ウルフ。西の草原に出てくるモンスターで、人の前に現れてはじっとしているよ。ただし、攻撃すると反撃してくるの。かと言って無視して進むと、追いかけてきてかみついてくるんだよ。ここはわたしにまかせて」



「タロットよ、道を切り開け!」





 タロットに書かれていたのは雪だるまの絵。オオカミの体は雪に包まれてしまう。さらに空から雪玉が降ってくることによって、見事な雪だるまが完成する。



 



「帰ったらお昼にしようか」


「そうしよう」




 中央広場についた私たちは、早速昼食を食べに、中央レストランへと向かった。そのレストランは、とっても大きく、席がたくさんある。特に空いているというわけではないが、部屋が大きく音が吸収されているようでとても静かな場所になっている。



「あーソオーナだ。おごってよ~」



 レストランの入り口から見える席でソオーナが食事をしていた。幸福そうな表情で肉に食らいついている。彼女のテーブルにはたくさんの肉の塊、野菜のサラダ、トマトのスープ、チーズがたっぷり乗っかった食パンなどの大量の料理がのっかっていた。とても一人で食べれる量ではない。なのでクリスはソオーナに昼食をたかった。



「おおー皆さん。一緒に食べましょう。お二人にはたくさん迷惑をかけてしまったのでお好きなだけ注文してください。けど、今このテーブルにある料理は渡しませんよ」



 口の中の肉を飲み込み、口の周りを吹いた後、彼女は私たちを招待した。私とクリスはソオーナのいるテーブルへと移った。



「このたくさんの料理、一人で食べきれるの?」



 私は気になったことをソオーナに質問した。大食いだといううわさは聞いていたけれど、あの量を一人で食べきれるとはとても思えない。



「いつもこれくらい食べますよ。たくさん運動した後はたくさん食べたくなるのです。はい、メニュー」



 私は鶏肉のトマト煮を、クリスは豚肉サラダを注文。料理が来た。手短に自己紹介をすますと、みんなは料理を夢中になって食べて、会話することもなく完食してしまった。



「トマトの酸味とお肉のうまみ、こんなに相性がいいんだ。これは参考になるかも」


「うーん。サラダおいしかったー」


「このお店の料理は安くておいしいんです」



 30分ほど料理について語り合った後、戦闘の話題へと入った。



「わたしはねー戦闘になると真っ先にやられちゃうなー」


「クリスさんには踏ん張りの力が足りないのかもしれませんね。もう少し足の力が必要かもしれません」


「踏ん張りの力かぁ。これから頑張らなきゃ」


「でもクリスの短剣さばきは見事なんだよね。しかも攻撃時以外は見事な動きで敵の攻撃をきっちりかわすし」


「うだれ弱さを克服すれば騎士団長レベルになれる器ですよ。短剣の技術、機敏性、とっさの判断力、奇襲力、高いレベルでまとまっています」


「あなたそんなに強かったの?」


「私はすっごく強いんだよ。弱点さえなければ」


 クリスは頬を緩めながら自信満々に自分が強いことを伝えてきた。私も負けてられないな。もっと強くならないと。



「そしてプリアさん。あなたは私のライバルです。今度は一対一で真剣勝負をしましょう」



「4月30日12時から午後6時まで私の住む占いの館100周年パーティがあるの。ぜひあなたにも参加してもらいたいな。ケーキと御馳走を食べた後で2~3時間後に戦いましょう」



「パーティ、ですか!絶対に行きたいです。!!楽しんじゃいますよ。ケーキはどのお店のものにするんですか?」



 パーティのことを伝えたら彼女の表情が大きく変わった。もとから明るい表情だったが、パーティに誘われたとたんに大きな笑顔を作り出したのだ。太陽のような笑顔がとてもまぶしい。



「ケーキは自作だよ。私、こう見えても料理にはまっているの。様々な発想でいろいろな料理を作るの。材料の新しい可能性を見つけて今までにない料理を生み出したりとか。モンスターを倒すようになったのも新しい材料を手に入れたいという気持ちからなんだ」



「自作ケーキですか? 手作りのケーキは初めてなのですごく楽しみです。料理が趣味なんですね。モンスターを倒して得た材料を工夫して料理を作るのですか。なんだか楽しそうですね」


 笑顔で会話をしていたソオーナだったが、突然考え込み不思議そうな顔をした。



「あれ? でもケーキの材料はこの国に売ってないのですよ。モンスターを倒して入手するにしても砂糖だけは手に入りませんし。どのような方法でケーキを作るのですか」



「北の林のキビガメを倒してサトウキビをもらうよ」



「キビガメですか? 無理ですよあんな化け物を倒すなんて。人間のすることではないですよ。奴はどんなダメージも吸収して無効化してしまうとうわさされるほど丈夫です。しかもパワーとスピードがものすごく高くまともに戦うことはとてもできません」



 ダメージを吸収する力もあったんだ。ただでさえ強いのに。でも、絶対に倒せないことはないと思う。



「吸収できるダメージにはきっと限度があるはずだよ!」



「!!! その発想はありませんでした。では三人で一緒に倒しましょう」



「ソオーナさんも一緒に戦ってくれるんですねー」



 クリスが嬉しそうにソオーナに確認をとる。確かに彼女が手伝ってくれるとは思ってもみなかった。っていうかクリスも一緒に戦ってくれるんだ。でも3人なら勝てるかもしれない。









 北の林 例の水場にて



「それでは行きますよ」



ソオーナがカメに向かって戦いの始まりを宣言した。彼女が前衛で私たちが後ろでサポートする形でカメと対面している。



カメの突進がソオーナを襲う。けれど彼女は長剣によりカメを吹き飛ばし、倒れそうになってしまったカメに向かって突撃する。



 すごい。私があんなに苦戦したあの突進をたったの一撃で抑えて、攻撃のチャンスを生み出すなんて。このまま倒せちゃうんじゃないかな。




 ところが、カメはすぐに体勢を立て直し、ソオーナに一撃を入れようとする。長剣と巨大な手がぶつかり合い、お互いに遠くに吹き飛ばされてしまった。立ち直った二人はまた衝突を始める。



 自分も負けてられないなと思い私はタロットのカードを一枚引いた。地面の絵が描かれたカードを引いたようだ。



 ソオーナの長剣による攻撃をカメは手で受け止めようとした。だが足元が崩れてしまいうまく受け止められず、長剣の一撃をもらった。タロットがうまく効果を発揮したようだ。



 強力な一撃を食らったカメだが、あまりダメージを受けているようには見えない。ソオーナの言っていたようにダメージを吸収しているのかな?





 戦いから30分くらいたった。三人で協力して、何発かカメに攻撃を当てることができた。だが、カメはいまだに元気いっぱいでダメージを受けているようには思えない。


 一方こちらは致命的なダメージこそもらっていないものの、長時間の戦いにより疲労がたまり、動きにも影響が出始めてきて危ない場面が増えてきた。




「クリスさん! プリアさん! このままでは三人とも力尽きてしまいます。何とかしてください」



「わかったよ。ソオーナはもうちょっと時間を稼いでいて。クリスはソオーナの援護をお願い」



「はいはーい」




 二人がカメと激しい戦闘を行っている。だが、疲れにより二人の動きはあまりよくない。このままでは突破されてしまうのは時間の問題だろう。次で決めなきゃ。




「いでよ水晶玉。今までの疲労を光に変え今、解き放て」



 私は貯めていたエネルギーを一か所に集めた。すると目の前に鮮やかな青色の水晶玉が現れる。水晶玉は次第に光を帯びていき、それに従い体に元気が戻ってきた。私は二人に合図を送り、二人はカメから離れた。この一撃で決めてみせる。






「敵を貫け! 水晶光--!」







 水晶玉にたまっていた光が、カメに向かって一直線に突き抜ける。カメとの距離が離れていたものの、しっかりとした衝撃を感じる。



 カメは転倒し、しばらくの間動かなかった。また以前のように復活するのではないかと警戒したが、やがてカメからギブアップの鳴き声が響いた。私たちの勝ちだ。




「やったあー勝ったー」


「やりました」


「やったー」



 みんなで両手を上げながら喜んだ。絶対に勝てないといわれたキビガメに勝利したのだ。あまりのうれしさから3人で5分ほどジャンプを繰り返し行った。



 地面に散らばったサトウキビを回収しながら私たちは今回の戦いについて話し合う。



「ソオーナはやっぱりすごく強いな」



「プロの技って感じだよねー」



「私は最強ですから。それでも今回はものすごく戦いやすかったです。誰かと一緒に戦うのは久々ですがとっても楽しかったです」



「私もすっごく楽しかった。また今度三人で強いモンスターを倒しに行こう!」



「楽しそうだね~今度は私ももっと活躍するよ」



「クリスさんならきっと活躍できますよ。私の見込んだ人ですから」



「ありがとうソオーナ。きっと活躍して見せるから」



 私たちはサトウキビを回収し終え、広場に向かっていた。



「無事にすべての材料がそろったしこれから私はケーキを作るんだけど、良かったらみんなで一緒に作ろうよ」



「ケーキ作りは初めてなのですごく楽しみです。ぜひ手伝わせてください」



「ケーキ作りかー私も初めて。私も参加するよー」



「よーしじゃあみんなで作ろう」



 私たちは森林にある黄色い道を進んで私の家へと向かう。木々から発生した心地の良い香りを感じながらみんなで会話を楽しんだ。


 周りを見渡せば無数にある細い木のいくつかにリンゴがたくさんついている。私たちは少し寄り道をして一つずつ収穫し、それらをおいしくいただいた。


 リンゴを食べ終わるころにはもう広場に到着していた。もう夕方になっているようで空がオレンジ色になっており、広場の風景もオレンジ色に染まっている。オレンジ色の中私たちは占いの館へと進んでいった。



「おおーすごーい。立派な館だね」


「すごいです。中身がとても気になります」



 二人はどうやら館の外観に関心を持っているようだ。占いの館は普通の家よりも少し立派な外観を持つ建物になっている。黒を基本としたデザインに、いくつかの柱の存在を確認することができる。三つある三角の屋根が特徴的だ。おかげで遠くから見てもはっきりと見えるほど目立つ建物になっている。




「おじゃましまーす」

「お邪魔します」

「いらっしゃーい」



「うわぁすごい。あたり一面青紫色だ」


「まさに占い師の館って感じですね」


「でっかい水晶玉だ!すごい」


 二人は館の中のデザインを興味深く観察している。私は生まれてからずっとこの館に住んでいるのであまり気にしたことがなかったが、二人にとっては非日常体験のようだ。



 お母さんも妹も今は家にいないので、三人だけがこの館に集まっていることになる。早速三人でキッチンへと向かった。



「広いキッチンだねー」


「なんだか楽しそうですね」


 館の奥には大きなキッチンがあり、そこで私は日々料理を研究している。広いスペースには様々な料理道具が設置されていて見事なキッチンとなっている。



「早速ケーキを作ろうよ」


 私が提案すると、二人は腕をまくりケーキ作りに備えた。



 私は材料を取り出しながらケーキ作りの方法を考える。とりあえずまずはサトウキビから砂糖を取り出そう。



「これから砂糖を作るよ。まずは見本を見せるね」



 まずサトウキビを丁寧に水で洗った。水が冷たくて気持ちいい。すると、見る見るうちにサトウキビがきれいになっていく。



「すごいです。どんどんきれいになっていきます!」



 ソオーナの視線がサトウキビにくぎ付けになっている。クリスも興味深そうに見ている。



 サトウキビを洗い終えた後、しっかりと水切りをしてから3本袋へと入れる。



「それじゃあサトウキビを粉砕するよ」



 袋の外からサトウキビを片手でつかみ握りつぶした。激しい音を立てながらサトウキビが液体を出しつつ崩壊する。手ごたえがなくなるまで何度も何度も繰り返し行い、搾りかすを入れないようにしながら出てきた液体を鍋へと注ぐ。



「おおーすごーい。楽しそう!」



 クリスはワクワクとした様子でサトウキビの粉砕を眺めていた。



「いい修行になりそうですね!」



 ソオーナも飛び跳ねながら興奮していた。



「それじゃあ二人ともやってみて」



 二人はサトウキビを洗い、袋に入れ、ついに粉砕の時がやってきた。



「いよいよこの時がやってきました」



 ソオーナが目を光らせながら袋の中のサトウキビを見つめる。



「それでは粉砕します」




 ソオーナがサトウキビを握りつぶす。すると一瞬のうちに爆音とともにサトウキビが崩れ、大量の液体が放出された。たった5回握りつぶすだけで3本ものサトウキビを絞りつくしたのだ。



「ソオーナすごーい!」



 笑顔でクリスがソオーナを称賛している。確かにソオーナの力はすごいな。私も負けてられない!もっと強くならなきゃ。



「よーし。次は私の番だ」



 クリスがサトウキビを握りつぶした。



「おりゃぁぁ! せいやぁ! ぐぬぬ。あともうちょっと」



 必死にサトウキビを握るものの、なかなか汁が出ない。それでも諦めずに握り続ける。



「がんばれー」


「頑張ってください」



 私とソオーナはクリスを応援する。



「やったー。汁が出てきた!」



 クリスに握られていたサトウキビは次第に汁を出しながらつぶれていく。



「おめでとう! 意外と固いよねサトウキビは」



「かなり堅かったな~」



「予想よりもはるかに硬かったです。ところでこの液体をどのようにして砂糖にするのですか?」



「鍋で煮ていけばそのうち固形になるはずだよ。それじゃあ煮るね」




 鍋の中で茶色の液体があわと煙を出しながらブクブクと音を立てている。甘い香りが部屋中に漂ってきて、心が落ち着く。でも砂糖ってたしか白色だよね。このままじゃ茶色い砂糖になっちゃう。私はみんなに質問してみることにした。



「砂糖ってどうやったら白くなるのかな?」



 質問に答えたのはクリスだった。



「どこかで聞いた話なんだけど、砂糖を白くするには不純物とかいうのを取り除く必要があるんだって。」



「不純物かぁどうやって取り除こう」



「魔法でどうにかするってのはどうですか?」


 ソオーナが魔法を使うことを提案した。



 魔法かぁ。私はあまり魔法は得意じゃないんだよな。簡単な浄化魔法くらいしかできないし。でもやってみよう。私は試しに浄化魔法を使ってみることを二人に伝え、唱えてみることにした。




「おおらかなる天使よ! その神聖なる力により不純物を取り除いてください!」




 余ったサトウキビを右手に掲げて魔法の詠唱を行った。その瞬間鍋が光りだし青色の煙がキッチン中に広がり始めた。


「こ、これは」


「ど、どうなっちゃうんですか」

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