2話
私はカメに負けて以来、ずっと突進の対策を考えながら過ごしていた。いまなら倒せる!そう思い私は水辺の周りの場所で大声を上げた。
その時、水中から巨大なカメが現れた。激しい音とともにあたり一面に水しぶきが飛び散り、辺りをびしょびしょに濡らした。その巨大なカメは全身が緑色で、背中にいくつものサトウキビが生えている。
早速その緑色のカメは、突進を仕掛けてきた。巨大な体が襲ってくる。あまりのスピードに占いを使う余裕がない。私はその右足を抑えて突進を止める。以前の戦闘では、持ちこたえきれずに、そのまま力負けしてしまった。けれど今は、あの時よりも力をつけた。そして突進の対策も考えてきた。
カメの力は以前と同じくすさまじいものだった。私は今まで様々なモンスターと戦ってきたが、これほどまでのパワーを持つものはいなかった。
以前よりも上がった私のパワーでも持ちこたえ続けるのは困難で、10秒も持たずにつぶれそうになってきた。力を入れ続けるも、とても抑えきれそうにない。
そこで私は、相手の力を利用する作戦に出た。横に力を加え、カメを転倒させようとしたのである。
残った力を横に向けて放つが、なかなか倒れない。しかし、次第に私を押す力が弱まってきて、力の流れが横へと向いてきた。
ところが、再び私を押しつぶす力が加わってきた。カメはまだ力を残していたのである。このままでは押しつぶされてしまう。私はそう思い、さらなる横への力を加えた。
少しだけ押し返せたが、また押されてしまった。それでもめげずに、横への力を加え続け、ようやくカメを転倒させることに成功した。背中のサトウキビが、音を立てて取れていく。
カメはとても体が大きく体重も重いので、起き上がることは困難だ。そう思った私は、勝利を確信した。
だがしかし、倒されたはずの巨体がとてつもないスピードで回転し始めた。一瞬戸惑った私だが、すぐに攻撃を警戒した。巨体はその場でダイナミックに回転していて、激しい音を立てている。
すると、回転の勢いが少し緩んだ後、回転のエネルギーによりカメが立ち上がり、再び突進してきて私に襲い掛かった。
再び受け止めの態勢に入った私だが、前のやり取りで力を使い果たしてしまっていたようで、持ちこたえられずに、力尽きてしまった。そしてそのまま眠りについてしまった。
目が覚めると、体中の疲労、特に両腕の疲労を感じた。そっか、あの戦いで負けたんだっけ。悔しさを感じるとともに今自分がベッドの中で横になっていることに気づいた。
しばらく横になりながら先ほどの戦いについて考えながらごろごろしていると、声をかけられた。
「アハハ! 目が覚めたんだ」
「クリス、ここはあなたの家なの?」
声をかけてきたのは私の知り合いのクリスである。彼女はよくいろいろな場所で資源を採取していて、戦闘中の私とよく遭遇する。
よく私の助太刀をしようとしてくれるが、すぐにやられてしまう。それでも毎回来てくれるのである程度は親しくなっていった。
「そだよー水場のところで倒れていたからここまで運んできたんだよ~」
「そっか、ありがとね!」
「うーん、なんか元気ないね。どうしたの?」
「カメのモンスターにやられちゃって、全然歯が立たなくって、私じゃ相手にならなくって」
「そっか。じゃあもっと強くなってまた挑めばいいよ。勝てない敵がいても諦めずに、強くなって勝利する、それがプリアでしょ!」
「うん、そうだよね! また強くなって勝てばいいんだよね!悩んでいても仕方ないや!」
悩んでる暇があれば強くならなきゃ!そう思っていると、大事なことを思い出した。
「そうだ! 4月30日に占いの館100周年パーティーがあるんだけれど、是非クリスも来てよ」
「パーティ! いいねそれ! 楽しそう」
「4月30日12時から午後6時まで皆でゲームをしたり御馳走を食べたりすごく楽しいと思うよ」
「楽しみ!」
クリスは笑顔で笑っていて、パーティのことを本当に楽しみにしているようだった。クリスを見ていると私までパーティが楽しみになってくる。早くパーティやりたいなと思っていると、ケーキの材料を早く集めなければいけないことを思い出した。
材料を集めたいけれど、今は体中が痛い。明日から頑張ろう!今日は早く寝よ。そう思い私はベッドから降りた。
「それじゃあ私は帰るね。ここまで運んできてくれて本当にありがとう。じゃあね!」
「じゃねー」
家から出ると大きな噴水が視線の奥に移った。あたりはだいぶ暗くなっていて、静かさを感じる。暗くなった道から家へと向かった。
家に帰ると、モウラとお母さんは見えなかった。すでに自分の部屋で眠っているのだろう。用意さてている夕食を食べ、風呂に入って着替えてすぐに寝てしまった。
「じゃあいってきます」
「いってらっしゃいー」
朝食をすました私は準備をすまして冒険に向かった。お母さんは起きていたが、モウラはまだ眠っているようだった。早く寝て遅く起きるのがモウラの癖だ。
外に出ると、心地の良い暖かい風が吹いているのを感じた。心が落ち着くのと同時に、冒険への意欲も出てくる。いい気持ちになりながら、東の畑へと進んだ。
東への畑の道は大きな一本道となっていて、横を見渡せば草や花が生え茂っていて、モンスターもちらほらと見える。
景色を楽しみながら、道を進んでいくと、畑が見えてきた。進んでいくうちに、左右に大きな畑が見えてくるようになった。
ジャガイモの畑やニンジンの畑、スイカの畑など、様々な作物の畑にとても広いスペースが使われている。しばらく見て回っていると小麦粉の畑を発見したので、私は早速小麦の収穫に取り掛かった。
腰を下ろし小麦を収穫する作業は、予想よりもつらいもので、疲労を感じる。少しずつカバンに小麦を詰めていく。私の他にも何人かの人が収穫作業を行っていて、なんとクリスも小麦を収穫していて、私に声をかけてきた。
「あっプリアだ。おはよう~。一緒に収穫しよ!」
「おはよう、クリス。一緒にやろう!」
二人で収穫作業を行う。クリスの方は手馴れているのか、私よりも早く収穫作業を行っている。
「クリス、手際がいいね。収穫作業に慣れてるんだね!」
「まーね。家の手伝いで偶に収穫しているから。プリアも料理のために収穫してたりするの?」
「うーん。私は野菜や果物をよく収穫するんだけど小麦を収穫する機会はあまりないな。小麦粉を使った料理はあまり作らないからね。これを機に今度小麦粉を使った料理を作ってみようかな」
「小麦粉を使った料理、パンとかケーキとかかな?」
「そうそう! パンとケーキ。それから、小麦粉を使ったスープとかも作ろうと思ってるの」
「スープに小麦粉、なかなかおもしろいね!未知のスープができそうね」
私たちは小麦を収穫しながら料理の話で盛り上がっていた。そういえば家族以外とこんなに長く話し合ったことは今まであまりなかったな。クリスをパーティに呼んだことによってクリスとの距離が縮まったのかも。パーティが終わった後もクリスと親しくなれたらいいな。
収穫作業はとってもつらい。休憩の代わりにモンスターを倒すことにした。畑と畑の間に少しだけ広めのスペースがある。そこで私はモンスターを声を出して呼び出す。
すると、白い翼をもつやや大きめの鳥のモンスターが、戦いを挑むかのように私の前に立ちふさがった。