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輪廻血戦 Golden Blood  作者: kisaragi
桜の花の五芒星
97/111

知識と運と運命と因果と宿命による五芒星(前編)

 これはある程度、想定していた出来事だ。


 けれど実際に直面すると辛いものがある。


 上杉の権限は今もっとも下げられた状況。


 これは最早、上杉は散り散りになり更に魂送師と狩師が散り散り。バラバラな状況なのだ。


 そして愁一は刀飾と共に世界行脚を開始した。


 と、なると出会った順番に回るのが筋だ。


 当然上杉からになるのだがそれが簡単な訳は無く彼は早々にとんずら。後に回した方が厄介だと思うが仕方ない。


 それで順番が狂った。


 午前中の試合開始時間を見て鏡一狼は溜め息を吐く。


「本当、儘ならない世の中だ」

「……名人?」

「いや、失礼」


 今日の試合は普段通りに勝ったのだが……相手が別の門下生のプロで相手がなんと小学生だったのだ。


 それぐらいならば、まだ時々そういうケースもある。


 それ故か今日は京都の棋院では無く東京の棋院が試合会場だ。


 この状況は良くある。

 鏡一狼は訛りが少ない。それに東京にも一つマンションを持っている。

 移動はあまり苦ではない。それに最近は試合以外は東京での仕事も多いことが理由なのだが。


 澄んだその日。

 可愛らしい、ランドセルを背負った女の子が親の敵か、という鋭い目で挑んで来た。


 彼女は人気があるらしくギャラリーも多いと聞いていたから鏡一狼は袴の礼装で勝負を受けた。


 彼女は確か四段。


 悪くはないが……少し焦りが隠せていない。

 確か関西、大阪の女の子だ。可愛いおかっぱにぴょん、と今風らしく横に髪が束ねられている。


 解説が五月蝿そうなのは気の毒だ。


 こうなるとインタビューはその子に一定放火。


 この一手が……という囲碁の話ならまだいい。


 好きな男の子、休日の過ごし方、趣味。


 今回は些かしつこ過ぎる。


 都内での試合、言ってしまえばお披露目会となるからだろうか。


 様子を見るに彼女はまだペースが掴めていない。むしろインタビュアーによって乱されている。

 元々、中押しで押し切ろうかと思ったが流石にそれは可哀想か……鏡一狼は一瞬悩む。


 その時、少女は叫んだ。


「趣味は麻雀や!!」


 パチンッと白石が置かれる。



「へぇー……それは……小学生が!?」


「奇遇だね。僕も麻雀は好きだよ」


 鏡一狼は解説のナレーターの言葉をぶった切って彼女を見つめる。この状況でまだ目は死んでいない。大したものだ。


 受けて立とう。


「噂で聞いたんやけど。名人って麻雀もそこそこ強いん?」

「うん、そうだね」

「ウチが勝ったらオフで勝負や!!」

「いいよ」


 きっとそれはオフでも一局試合をして欲しい、という意味だ。大した子だ。


 黒石を置く。


 また際どい所に彼女の石は置かれた。意外にも古い立ち回りだ。

 おそらく小学生、と馬鹿にされないように古い詰碁集をしこたま読んだのだろう。


「……獅子若戦よくも……!!」

「勝ち気だね。そこは好し」


 その一手は攻撃の一手。


 元々、中押しで押し切ろうとした時の一手。大したものだ。

 風格は流石プロ。


 手加減はご無用、ということか。


 パチンッと扇子を閉じて決めの一手を指した。



 結果は中押し勝ち。


 けれど彼女にはなんの痛手にもならないだろう。


 名人相手に良くやった。とインタビュアーは絶賛している。


 全く見る目が無い。


 このインタビュアーを雇ったのは誰だ……と思えば芸能人がアナウンサーに転職したという良くあるタイプだ。


 こちらから指名して天塚にしてもらえば良かった。彼は今や囲碁専門の解説者なのである。


 むしろ少女相手に手加減しなかったこちらが愚かだと世間では謳われるのだろう。


 涙を流し、それでもインタビューに笑顔で答える。


 最近の若い子は強い。


「……と、思わないかい?」


 廊下にある椅子に腰掛け様子を伺う。


 どうやら認知不可の結界が貼ってあるらしい。また面倒なモノを。良くやることだ。


「分かった。良いよ。話なら聞くからさ。その結界、解いてよ」


 コンコン、と扇子で透明な壁を叩く。


 何やら、ごそごそ聞こえる。


 こちらは一通り状況は理解しているのに。

 鏡一狼は扇子を開き、一気にその結界を切断した。


 すると、どさどさと落ちてくる愁一と刀飾。相変わらず元気そうだ。


「やあ、久し振り」


 廊下でごちゃごちゃしている二人に笑顔で鏡一狼は挨拶した。


「あ、……久し振りで、ございます……」


「ちょーっと!! だから、私は嫌だって!!」


「ふーん。そちらは変わらず、という感じでは無さそうだ」

「……っう」


 屈んで見つめると気まずそうに逸らされる。


 そんな様子の欠片もない愁一は立ち上がり膝をぽんぽん、と叩いていた。


「だから普通に行こう、って言ったじゃん。どうせバレちゃうんだから」


「それでも嫌なものはイヤ!!」


 彼女は起き上がる気もなく。肩肘を付いてまた不機嫌そうだ。


「というか良く引っ張って来れたねぇ」

「もう、輸送よ! 輸送。これだから本当にもう!!」


 愁一と鏡一狼は華麗に彼女をスルーした。


「ごめん……突然」

「いや、分かっていたから突然ではないよ」

「え……」

「千明がお昼、作って持って来たから食べよう。場所はこちらで用意するよ」

「君は本当に分かっていてくれるから助かるよ」


「それを……助かる、で済ます訳? バカじゃないの? もう馬鹿でしょ」

「はいはい、行くよ~!」

「……遠足の引率みたい……」


 思わず、くすくすと笑ってしまったら二人に同時に微妙な表情をされた。


 だって仕方がない。


 鏡一狼の出で立ちは特に普通の袴なのだけれど。


 ブラックスーツの青年と女子高生。




 基因の近くのカフェを貸し切りとは、また随分大袈裟だろう。


 しかし仕方がない。相手は今やサムライ社長と名高い獅道愁一と刀飾だ。


 このカフェはビルの一階で二階には色々な娯楽施設もある。


 先に伝えていた千明は忙しいそうに重箱に詰め込んだ様々な料理を円形の渋い光沢を放つ木のテーブルの上に並べている。

 疼くのか愁一も手伝っている。


「へぇー。これが噂の刀飾……」


 その作業を一通り終えると千明はポカンと夜弥を見上げた。


「何」


「そうそう。衰退したって噂の刀飾だよ!」

「ちょっと! わざとらしく嫌な感じに言い換えないで!!」

「『よや』なんて変な名前」

「千明君もそう思うよね!」


「貴方たち~!」


「つーか、この人……良く鏡一狼さんの前に出て来ますよ。馬鹿でしょ」


 それを堂々と言える彼も中々だ。

 愁一と刀飾、鏡一狼と千明が向かい合うように座る。


 全体的に飴色のクラシックな喫茶店に相応しくジャズが流れる。


 照明は仄かなオレンジ色。


 しかしその場は硬直している。誰もが黙り、等々イライラしながら夜弥は大袈裟な音と共に立ち上がる。


「それはそう……なんだけど、ちょっと話してみない? 謝るか……は、ともかく悪いことはしないからさ」

「えー……」

「構わないけれど。俺、知ってるんだよね。刀飾の力が落ちてるって。だから相当好き勝手言うし、やるけど?」


「……帰る」


「あー!! ちょっと待って!!」


 愁一は必死に逃げようとする夜弥を引き留める。


「離して!!」

「今、行ったら逃げるも同然、だけど良いの? 鏡一狼君なら絶対分かると思うし……絶対に追跡されないと保証は出来ないなぁ」

「……だから嫌だったのよ」


 本当に渋々、彼女は席に戻る。

 そんなに態度を出さなくても分かるのに。鏡一狼は蠱惑な表情で微笑む。

 夜弥は心底、嫌ですという態度で腕を君み渋い表情をした。


 そして夜弥は強引にメニューを取り、どんどん勝手に注文していく。


 まるで鏡一狼との間に壁を作るように。


 そんな様子を千明は呆れた表情で見ていた。愁一は勿体ないなー、と見ていた。


「千明君のご飯は美味しいのに」


 愁一は早速と美味しそうに千明が作った肉じゃがを箸で取り皿に取り、もぐもぐ咀嚼している。


 少しだけ夜弥はそれを羨ましそうに見ていた。


「で、この四人で今度は何をするのよ? まさか囲碁? それとも殺し合い?」


 そしてそうなれば彼女は場を切り替える肩肘を立て、分かりやすくこちらのマウントを取ろうとしているのが丸分かりだ。



 そんな様子を見ていた千明がこそっと俺に呟いた。


「なんか、イメージと違うんだけど……。確かに偉そうだけどさ」

「彼女は言わば引き籠りなのさ。千年以上も」

「あー、世間知らずなのか」

「その通り。自身が刀飾だと疑わず、ただのその辺の少女が核に生っただけとも知らず」

「ちょっと……そこ! 勝手にこそこそしない!!」


 そんな彼女を無視して鏡一狼は眼鏡を外し、翡翠色の瞳で夜弥を睨んだ。



「俺の知っている事実は全て話させて貰うよ」


 彼女は渋い顔で黙る。


「え、真実?? それなら……聞いたけど?」


 全てを話した訳ではない。


「彼女は君の持つ無名の刀の核であり写しなのさ」


 鏡一狼は愁一も夜弥も無視して勝手に話し出す。

 こういう時の鏡一狼はそこそこ怒っている、と千明は長年の経験で分かり大人しく運ばれたお茶を飲んだ。


「ちょっと何で知ってるの!? ……流石、桜小路……って訳ね……」


 鏡一狼は手に顎を乗せて語る。


「むしろ刀飾は知らなかったのか。物質としての本体が愁一が持つ刀。これは君が転生を繰り返す度に俺は君の核を管理をしていてね。それで君に、あの時に力と刀を渡せたんだ」


 それで鏡一狼は愁一の血統解放が出来たのだ。


 刀と力。


 両方を渡すべき者か選定する必要もあった。


「君が……転生直後に刀飾に狙われた理由って……」

「お察しの通り。その刀はまだ完全ではない。半分なんだ」

「……半分?」

「そう。もう半分は彼女が持つ写し、なんだけれど。厄介なことにこれは刀飾の術でほぼ彼女と同化していてね。ほら、彼女が持つ、色違い」

「ああ!! だから突然、あの時もあの時も出て来たりしたのかぁ」

「しかしそちらを先に心配するとは君らしい」


 その頃、千明と夜弥はアイスティーを挟んで喧嘩している。


「……ちょーっと!! 勝手にレモンとミント入れて混ぜないで!!」


「アンタがなんもしねーからだろうが!!」


 そんな言い争いを鏡一狼と愁一は横目で眺める。


「それは一緒にした方が良いの?」

「さあ? ただ、その刀さえあれば指輪も世界も簡単に粉砕できるだろう。けれど……君は人ではなくなる。これが俺が知っている真実だ」


「……ありがとう」


「いえいえ。これは最早、地球論か人類論かの決戦だ。もし地球を爆発する事になったら呼んでね?」


 鏡一狼はそんな冗談と共に軽くウインクする。


 そんな姿に夜弥も千明もピシリと固まる。


「うん、うーん。俺も……もう……ちょっと考えるけど、そうならないようにはしたいかな」

「君ならそう言うと思ったよ」


 鏡一狼は綺麗な笑顔で微笑む。

 一方、夜弥は対照的な表情で溜め息を吐いた。


「全く、ぜーんぶ話しちゃうんだから」

「それが俺の一種の呪いだから」


「今回はこれでお開きで良いかしら?」


「まさか」


 笑顔の鏡一狼に周囲は再び固まる。


「何か、勝負していいんだよね? 合戦だもんねぇ?」




「うっ、うん。けど、俺……囲碁分からないしなぁ」


 鏡一狼は足を組み言った。


「まさか。俺もそこまで鬼じゃない。今回は四人いるし、ずっと麻雀にしようって心から決めていたんだ」


 その言葉を聞いて全員が叫ぶ。


『麻雀!?』


「いや、俺も麻雀はルール知らないっす」

「俺も……あれ君は?」

「昔ちょっとだけ」


 少し気まずそうに夜弥は答える。


「うん。人数も、経験者二人、初心者二人も調度良い」


「でも、それって卓が必要だよね?」

「ご心配無かれ。基因近くの喫茶店は大体、碁の集会所と地下の麻雀は必須アイテムなのさ!!」


『なにそれーー!!』


 三人は再び同時に叫ぶ。


「気分転換、気分転換。ボードゲームの集会所なら大体賭け事も兼用さ」


 夜弥はと言うと、彼女からは何故か何処か余裕さえ感じる。


「ふーん。貴方が運ゲーを選ぶなんてね」


『運ゲー!?』


 二人は鏡一狼の絶望的な運の悪さを知って叫ぶ。


「その通り。詳しくは下で説明するよ。ルームサービスも出るから。あ、一応外見だけは未成年もいるから金品は賭けなし。禁煙厳守ね」


「了解っす!」


「麻雀かぁ……確か四角いのを並べるんだよね~」

「圧倒的不安」


 こうして彼らは地下一階。秘密の、大人のフロアに通される。


 そこは中華風の作りになっていて装飾も豪華絢爛。そして中央には麻雀の卓がある。


「ふあー、すご」

「って、愁一ならカジノの経験ぐらいあるんじゃないか?」

「ちょーっと付き合いでね。眺めてただけだよ。絶対向かないもん」


 一同。確かに愁一には向かなそうだ、と思った。


 鏡一狼は面白そうに麻雀の解説を開始した。


「簡単に説明するよ。使用する牌は花牌を除くと34種136枚あるんだ。ゲーム開始前に各プレイヤーに均等の点棒が配られる。今回は棒は使わない。一応、1,000点の持ち点は使用するからリーチの時なんかに使ったら良いと思うよ」

「これだね?」


 愁一はいくつかある花牌を手に取った。千明は棒を珍しそうに眺めている。

 頷いて鏡一狼は解説を続ける。


「麻雀は牌(ハイ/パイ)を14枚揃えて完成形を作るゲームだよ。一番最初に完成させた人の勝ちです。

 揃え方には決まりがありこれが麻雀を楽しくする大きな要素となるんだ」


「ねぇ、その解説長い……」


「まあ、まあ。麻雀は通常、半荘ハンチャンを単位として競技が行われる。半荘は大きく前半と後半に区分され前半を東場トンバ後半を南場ナンバと言う。東場・南場はそれぞれ4つの局からなるんだ。東1局から開始され、東4局が終了した後は南入ナンニュウと言って南1局に入り、南4局の終了をもって1試合とする。簡単に例えるなら、麻雀は1試合8ラウンドで争われる、と言うことになる。

 もっと簡単に言うと麻雀ゲームの大きな流れはね。

 1、席決め

 2、親決め

 3、洗牌シーパイ壁牌(ピーパイ作り

 4、配牌ハイパイ

 5、対局開始

 6、点棒の授受

 7、親の移動

 8、終局シュウキョクとなるよ」


「ほえー」


 愁一と千明は分かっていないであろう表情でぽかーんとしている。


「麻雀は一試合を半荘ハンチャンというゲーム単位で行い先述の通り何度も勝負を重ねる。一回の勝負をキョクと言い、この局を複数回繰り返して半荘ハンチャンが完了するんだ。各局キョクでは勝者と敗者で毎回点数のやり取りが行われるよ。半荘終了時に一番点数の多い人が最終的な勝者=一位となる。

 ここで重要なのは今回は点棒を使わず純粋に和了(ロン)、先に役を作った者が勝ちとするよ。ただ、それだけじゃつまらないから作った役によってポイントも入れよう。これでどうかな?」

「良いんじゃない? つまり棒がない麻雀ね」

「その通り。先に簡単な役を作って上がってしまうもよし。逆転狙いで難しいけれど強い役を作ってよし」


 今度は他二人は聞いているフリでうんうん、と頷いている。


「こほん。今回は初心者もいるし、少し詳しく解説するよ」


『はーい!!』


「それぞれの局においてプレイヤーのうち1名が親(親番)という役割を担当し残る3人は子と呼ばれる。親の正式名称は荘家チャンチャであり子の正式名称は散家サンチャと呼ぶんだ。

 親は東家トンチャとも呼ばれ、他のプレイヤーを親から見て反時計回りに南家ナンチャ西家シャーチャ北家ペーチャと呼ぶ。なお、実際の方位とは逆まわりになっている。これは中国において方位の順序は東南西北とされており、その順がプレイヤーから見て「左遷」とならないようにしたものであると考えられているかららしいよ。ゲーム開始時の親を起家チーチャと呼ぶ。ひとつの局が終了すると、それまで南家であったプレイヤーが次の局の親(東家)となる(連荘の場合は例外で、前局の親が次局でも親になる)」


 そこまで大人しく鏡一狼の解説を聞いていた愁一は手を挙げた。


「はい! 牌をじゃらじゃらするのは誰がやるの?」

「それは親かな。普通は座席や親は賽子で決めるんだけれど」

「俺、やりたい!!」

「ずっりー! 俺もやりたいと思っていたのに!!」

「じゃあ、一緒にやろう!」


 彼らは楽しそうに牌を混ぜ始める。


「ねぇ、あんなんで良い訳」

「今回は特殊ルール、簡易版だからね」


 特殊ルール、という言葉に刀飾はピクリと反応する。


「あ、俺は役は分からないや」

「俺もあんまり」


 二人は楽しそうに牌をじゃらじゃらしながら言った。


「そう思って。ちゃんとルールブックも用意したから」


 鏡一狼は数冊の本を全員に渡した。

 混ぜるだけ混ぜたが配牌は出来ないので彼らがその本を読んでいる間に鏡一狼は配牌を終わらせる。


「簡単に言うとね、麻雀の上がりは和了形(ホーラもしくはロン)って言うんだ。特定の3枚の牌の組み合わせ(面子)を4組と同一牌2枚の組合わせ(雀頭)をそろえた形(4面子1雀頭)。ただし七対子と国士無双という例外がある。これは名前は有名だよね。また流し満貫が和了と認められる場合があるね」

「もう貴方の話、誰も聞いてないわよ」

「ありゃりゃ」


 しかし鏡一狼はめげずに続ける。


「ここで、簡単な用語解説~!」

「ねぇ、それは必要? 誰も聞いていないけど?」


「必要だよ!」

「もー、勝手にしなさい!!」


 夜弥は興味無さそうに好き勝手に注文したメニューが運ばれるのを待っていた。

 鏡一狼は完全に彼女を無視して解説を開始する。

 二人ももぐもぐと千明の作った食事を食べながら聞いていた。


「麻雀のルールに副露(フーロ)というルールがあります。一般的には、「鳴き」と呼ばれているね。ポン、チー、カンは聞き覚えがあるかな?」


「あー、あるような……」


「条件を満たすことにより他のプレーヤーが打牌した(捨てた)牌を自分のものに出来る副露について教えるよ!


 メリット

 手を早く進められる。

 面子を揃えるチャンスが広がる。


 デメリット

 狙いがバレやすい。

 守りが弱くなる。

 リーチ、一発、裏ドラなどが無くなる。



 ポン

 麻雀のルールに副露(フーロ)というルールがあります。一般的には、「鳴き」と呼ばれている。

 ポン、チー、カンは聞き覚えがあるだろう。

 条件を満たすことにより他のプレーヤーが打牌した(捨てた)牌を自分のものに出来る副露について。


 副露(フーロ) / 鳴き

 ポン、チー、カンの総称を副露(フーロ)と言う。一般的には、「鳴き」と言うんだ。

 副露のメリットとデメリットはざっくり言うと下記の通り。


 メリット

 手を早く進められる。

 面子を揃えるチャンスが広がる。


 デメリット

 狙いがバレやすい。

 守りが弱くなる。

 リーチ、一発、裏ドラなどが無くなる。

 メリットよりもデメリットの方が多い。

 しかし、まずアガるという事を考えると手を早く進められると言うメリットは非常に大きい。

 一概に副露がダメだとは言えない。

 副露をする場面、しない場面、適切な判断を下すには経験が必要になる。



 チー

 チーは、手牌の塔子(ターツ)順子(シュンツ)にする副露だね。


 搭子=数牌の連番2枚組


 一萬二萬一索二索一筒二筒

 順子=数牌の連番3枚組


 一萬二萬三萬一索二索三索一筒二筒三筒

 チーをする前

 一萬二萬三萬七萬八萬五筒五筒三索五索七索北中中

 チーをした後

 一萬二萬三萬五筒五筒三索五索七索中中九萬七萬八萬


 チーができる5つの条件

 1.同じ種類の牌

 2.立直リーチをしていない

 3.手牌に 搭子ターツがある

 4.最新の捨て牌のみ

 5.上家からのみ


 ※ポンと異なり、チーは上家からしか出来ないんだ。


 チーの手順

 1.チーの対象牌が打牌される

 2.チーをするプレーヤーは「チー」と発声する

 3.手牌からチーの対象の牌を晒す

 4.河から打牌された牌を持ってきて晒す

 5.打牌をする

 牌の晒し方

 チーもポンと同様に牌を晒します。チーをした牌(上家が捨てた牌)を一番左に横向きにして置きます。チーは必ず上家からするので晒し方は常に同じなんだ。


 カン

 (カン)暗刻(アンコ)槓子(カンツ)にする副露です。カンも良く使われる言葉だよね。


 刻子=同じ牌の3枚組

 一萬一萬一萬東東東中中中


 槓子=同じ牌の4枚組

 一萬一萬一萬一萬東東東東中中中中


 カンをする前

 一萬二萬三萬七萬八萬五筒五筒五筒三索五索七索中中


 カンをした後

 一萬二萬三萬七萬八萬三索五索七索中中五筒五筒五筒五筒


 カンは3種類

 カンは大きく暗槓(アンカン)明槓(ミンカン)の2種類に分けられるよ。

 更に明槓には大明槓(ダイミンカン)小明槓(ショウミンカン)の2種類があるので計3種類となるんだ。それぞれ成立条件や手順が微妙に異なる。


 暗槓(アンカン)

 大明槓(ダイミンカン)

 小明槓(ショウミンカン) / 別名:加槓(カカン)等がある」

「……誰も聞いていないけど?」


 もう一度刀飾は言った。

 愁一と千明は本に夢中だ。


「ありゃりゃ」


「じゃあ、リーチ!! について教えて欲しいっす!」

「分かる~! 言いたくなるよねー!」


「よろしい。リーチとは。リーチとは麻雀で最も基本的な役です。役というのは上述した4メンツ1ジャントウの組み合わせ+(プラス)ある決められたルールに従って牌を揃えることで成立するアガるための条件だよ。リーチはその役を最も簡単に成立させる方法なんだ。リーチは1翻という点数が付くよ。

 リーチするには。

 リーチをするにはテンパイの状態で現在自分がテンパイであることをリーチの掛け声と共に宣言します。

 さらに手持ちの1,000点を供託用としてその場に出します。

 これがリーチの方法。

 テンパイであればいつでもリーチすることが出来ます。


 リーチするには。

 リーチをするにはテンパイの状態で現在自分がテンパイであることをリーチの掛け声と共に宣言する。さらに手持ちの1,000点を供託用としてその場に出すんだ。これがリーチの方法。テンパイであればいつでもリーチすることが出来きるよ。ではリーチまでの流れを説明するよ」


 鏡一狼は実際に牌を並べながら解説する。


[ 手牌の13枚 ]『ノーテン状態』

 東東東一筒二筒九筒一索一索二索六索二萬七萬九萬

 ↓

[ 手牌の13枚 ]『聴牌(テンパイ) → 後1枚でアガれる状態)』


 東東東メンツメンツメンツメンツアタマ

 ↓

[ リーチをする! リーチ時は捨て牌を横にして出しリーチと宣言する。 ]


 北南發9索1萬8萬

 南7筒

 ↓

[ リーチ宣言と同時に1,000点を供託用として卓上に出します。]

 以上が簡単な流れだよ」


「そっちで色々勝手に決めたのだから、私から始めて良いわよね? もう始めて良いわよね?」


「どうぞ」


 こうしてゆるい麻雀勝負が始まった。


 最初は当然、愁一も千明も手が覚束ないが意外にも夜弥はサクサクと進めている。


 鏡一狼は癖で扇子を開いたり閉じたりしていた。ずれていないのに眼鏡の位置を直してしまうのも癖だ。


「珍しいわね。貴方が運ゲーを選ぶなんて」


 珍しく夜弥の方から鏡一狼に話しかける。


「今回の目的だからさ」

「目的?」


 夜弥は牌を山から取る。


「俺の運の悪さの克服」


 その言葉に千明は飲みかけていた紅茶を噎せた。


「それは私が原因でしょう?」

「そうかな? それは単なる押し付けだ。これは俺の因果率の問題なのさ」


 そんな会話をしながら鏡一狼は愁一と千明を観察していた。


 様子を見るに彼らは見覚えのある役を作っている。

 本来なら棒を使わないなら簡単な役を作ってさっさと上がれば良いのだ。


 しかし、そこは彼らの性格が出ている。

 なるべく見覚えがあり、しかも点数が高い役を作ろうとしているのが分かる。


 それも一種の誘導だ。

 だから最初に点数の話をしたのだ。必要ないのであればしなければ良い。


 鏡一狼は実は無謀にもこの麻雀勝負を挑んだ訳ではない。


 既に夜弥との結界勝負は始まっている。


 彼女は色々な術を使って国士無双を作る気でいるのだ。その負けん気の強さからそんなことは簡単に分かる。



 鏡一狼は元からこの勝負、全うに受ける気など無い。


 千明はどうやら清一色チンイツの役を作っている。

 愁一は対々トイトイ)だろう。


 清一色と書いてチンイーソーと読むが、チンイツと省略して呼ぶことも多い。その清一色は麻雀のアガり役の中の唯一の6翻役になる。


 清一色は唯一の6翻の役であり役満以下の役では最も高得点の役だ。だから難易度もとても高く上級者向けのでもある。

 清一色 (チンイーソー) 通称:チンイツ


 一萬一萬一萬二萬二萬二萬四萬五萬六萬六萬七萬八萬九萬九萬

 数牌のどれか1種類で揃える。


 萬子、筒子、索子のどれか1種類で面子とアタマを作る。

 このように、萬子、筒子、索子のどれか一種類の数牌のみで構成される。

 そして、このような役を染め手や一色手と呼ばれ数牌のどれか一色で染めるのでアガった形は美しくもあり爽快感がある役だ。


 メンチン/タテチンとも呼ぶ。


 メンチンは門前(メンゼン)でのチンイツの事。

 鳴いたらチンイツ、門前ならメンチンと言う訳だ。

 タテチンも意味は同じ。

 牌が全て立っている(すなわち門前)なのでタテチンなのだ。


 ムリチン/無理染め

 枚数の足りない状態から無理矢理清一色を狙う事をムリチンと呼ぶ。

 同じように無理して染めようとするので無理染めと呼ぶ場合もあるけれど同じ意味。


 染め手の下位役、上位役。

 3種類の数牌の内、1種類しか使用しない役を染め手と呼ぶ。1種類(1色)に染めるという意味だ。

 清一色以外の染め手は下位役に混一色(ホンイーソー)九蓮宝燈チューレンポウトウがある。九蓮宝燈はアガったら運を使い果たして死ぬとまで言われるほどの超レア役で混一色(ホンイーソー)は頻繁に出現する役なのだ。


 メリット

 高得点役・清一色

 清一色はメンゼンで6翻、鳴いても5翻、かなりの高得点の役。そう。役満以下の役ではもはや別格の役なのだ。

 6翻の役は清一色のみで、その次に高い得点の翻は4翻役の小三元ショウサンゲン混老頭ホンロウトウの2つ。


 その割に出現率が特別低いわけではない。半荘の間に2回出現する事もさほど珍しくないのだ。


 デメリット

 捨て牌が偏りで狙いがバレる。

 例えば萬子で清一色を目指していくと当然のように萬子を切ることは少なくなる。

 テンパイに近づけば、そして終盤に近づくほど。

 捨て牌には索子、筒子、字牌がほとんどで、不自然なくらいに萬子が捨てられていない状況に。


 清一色は多面待ちになるケースが多くなるのでツモでアガれる可能性が高いのも事実だ。

 しかし清一色を狙っているのは高い確率でバレてしまうと思った方が良い。

 つまりロンでアガるのが難しいという事だ。


 待ちが分かりにくくなる。

 一種類の数牌で揃える為に多面待ちになるケースが多くなる。


 コンピューターゲームであればテンパイした状態でアガリ牌が何か教えてくれる。

 ロン出来る状況であればロンの表示が出てツモれば和了ホーラだったりアガりといった表示が出るので見逃すことがない。

 しかし実際に雀荘や仲間内で麻雀を打つ場合。

 当たり前だが誰も教えてはくれない。


 多面待ちをしっかり把握出来ないと当りの牌を見逃してフリテンになってしまう事もある。


 場合によっては6面待ち(当り牌が6種類)なんて事もあるので、うっかり見逃さないように注意が必要だ。


 麻雀の経験が浅い人はそれならどうやって清一色でアガればいいんだ! と思うだろう。

 清一色でアガれるチャンスはある。


 配牌時に同一種牌が7枚以上、字牌が3枚以上程度揃ったら

 ホンイツを経由、チンイツ着。鳴きは上手に2回まで。

 配牌時。

 配牌時にこのような同一種類の数牌で偏ったとする。


 一筒二筒二筒三筒六筒六筒八筒三萬八萬九索西北發


 配牌時に同一種牌が7枚以上、字牌が3枚以上程度揃った状態。


 目安ではあるが清一色に向かうのなら、これくらいの偏りは欲しい。

 しかし清一色では字牌は使わない。

 何故字牌があった方が良いのか?


 ホンイツ経由、チンイツ着。

 字牌が欲しい理由は一つ。ホンイツが狙えるからだ。

 ホンイツの正式名称は混一色(ホンイーソー)と言い清一色の下位役にあたる。

 ホンイツの成立条件は一種類の数牌と字牌を使って手牌を完成させること。

 4面子1雀頭の完成形は14枚。

 配牌時の数牌の偏りが7枚だった場合。

 全体の半分に。

 残りの7枚を集めるのはなかなか骨が折れるのだ。

 清一色は極端に出現率の低い役ではないが流石にタンヤオやピンフのようにサクサク完成する訳ではない。


 一直線に清一色を目指すのではなくホンイツというワンクッションを挟んだ方がより安心だという訳だ。


 もちろん最初から10枚も牌の偏りがあれば一直線に清一色を目指すのもありだ。


 なかなかそういう配牌に恵まれることは少ないが千明の場合は侮れない。

 何せ彼は運は良いのだ。


 鳴きは上手に2回まで。

 清一色は6翻、喰い下がり5翻の役。

 鳴いてしまうと跳満から満貫へ降格する。


 とは言え門前(メンゼン)で清一色をアガるのはなかなか大変だ。

 ある程度鳴くのを前提に考えている可能性もある。


 因みにドラが1枚でもあれば鳴いても跳満になるので門前を崩す際の判断材料の一つにもなる。


 清一色に限ったことではないがあまり鳴き過ぎすぎるのはよろしくない。


 鳴くという事は手牌の一部を公開するという事なので狙いがバレ易いですし防御力も下がる。

 特に清一色は狙いがバレやすいので鳴きは1回。多くて2回ほどが基準だ。

 状況に応じて鳴くしかないので、こうすれば大丈夫という戦略は無いのだが……ちょっとした工夫で多少は狙いを隠すことが出来る。


 例えば、いきなりの順子をチーしたとしよう。


 が、ある事で喰いタンの可能性が無くなります。


 またチーなのでトイトイの可能性も消える。


 こうなると一番警戒されるのは清一色やホンイツなどの染め手。


 後は三色同順、チャンタ系、役牌の後付けあたり。


 なんだ絞り切れないじゃないかと思うだろうが更に捨て牌の情報を加えると染め手の狙いがバレるのは時間の問題だ。


 どう鳴いても完璧に狙いを隠す事は出来ない。

 色々な可能性がある鳴き方を意識して少しでも警戒度が上がるのを遅く出来ると良い。


 清一色のテンパイが多面待ちになるケースが多いのは清一色の良いところだ。

 清一色は狙いがバレ易い為にロンでアガるのは難しい。

 しかし多面待ちになればツモの可能性が高まりまる。


 しかし多面待ちでも両面や三面程度なら良いが……それ以上の多面待ちになると、待ちを見落としてしまう言うリスクが高まる。


 特に千明はほぼ初心者だ。


 常に何待ちになるかを確認しながら手を進める事が重要になるが、周囲も彼がどの役を作ろうとしているのか慎重に判断しなければならない。



 多面待ちを攻略して見事アガりを見逃さずにアガれたとしてもそれだけでホッとすることは出来ない。


 麻雀には役の複合というものがある。


 5面待ち、6面待ちともなれば、アガる牌によって複合する役が変わることもあるから注意が必要なのだ。


 テンパイ


 一萬二萬二萬三萬三萬四萬五萬五萬五萬六萬七萬八萬九萬

 待ち


 一萬四萬六萬七萬九萬


 これは先ほど問題に出た5面待ちだがアガる牌によって複合する役が異なり翻数が大きく変わる。


 複合無し

 一萬二萬三萬二萬三萬四萬五萬五萬五萬六萬七萬八萬九萬九萬


 上記はでアガっているが、しかし雀頭が変わるだけで一緒なのだ。

 この形は役の複合が無く清一色だけですので6翻です。


 ピンフ(1翻)との複合

 一萬二萬三萬二萬三萬四萬五萬五萬五萬六萬七萬七萬八萬九萬


 でアガった場合、全て順子で両面待ちになるのでピンフ(1翻)が追加され計7翻になる。


 アガった際に自分で役の申告が出来なければ、それはそのまま無かった事にされても文句は言えない。


 ここで挙げた以外にタンヤオやチャンタなどとの複合もある。

 後から対局相手に『清一色の時に複合見逃してたな(笑)』等と言われないよう絶対に見逃さないようにするのが基本だ。


 鳴いても5翻になる最も高い一般役。


 早ければ一面子落としてでも狙う価値あり。


 同じ種類の数牌が多い時に狙うのが基本だが手が悪い時に無理矢理染めてしまうのも有効。


 自然と字牌を残していくので中張牌が多く残っている手より受けやすく攻め返しやすい手バラで仕掛けて相手にプレッシャーを与えられることも大きな利点になる。


 見込みはあるが馬鹿正直な千明には少々苦しい手だ。



 愁一は対々和。

 また際どい手だが悪くない手だ。

 対々和 (トイトイ) 通称:トイトイホーとも。


 一萬一萬一萬七筒七筒七筒全ての面子を刻子に西西西七索七索七索鳴いても良い。

 4つの面子を全て刻子で揃える。


 ※全て暗刻で揃えた場合は四暗刻(スーアンコウ)[役満]になります。

 トイトイは刻子系の2翻役(喰い下がり無し)は無い。


 難易度が比較的低いので初心者には活用しやすい。

 ただ難易度が低いと言っても、やはりアガる為には注意したい点がいくつかある。

 対々(トイトイ)をアガる為の三か条。


 その1 仕掛けのタイミングを見極める

 その2 鳴きは2回まで

 その3 ドラや複合で攻撃力を上げる




 愁一らしい悪くない手だ。

 ほとんど分からない、とは言っていた……がおそらく経験はあるのだろう。

 しかも彼は世界中を転々としている。

 本場、中国で学んだ可能性も高い。


 この麻雀が始まる前の頭脳戦も麻雀の醍醐味だ。


 鏡一狼は最初に先に上がれば勝ちだ、とさらりと言った。

 だから勝ち点にそこまで拘る必要はない。

 一応、リーチ用に用意した棒はあるにはあるがこれで逆転出来るかが今回の勝負の醍醐味になる。


 もちろん加算はするがそれよりは、それなりに作りやすい役を作ってしまえば良いのだ。


 しかし意外にも経験者は多いのかそれぞれ中々悪くない役を作ろうとしている。


 それは単なる矜持なのだろう。


 どうせなら強い役で一番に上がりたいという。



 何故、分かるのか。


 鏡一狼は既に開始直前から当然、色々仕込んでいる。


 まず麻雀牌は当然高級品でただ絵柄が描かれているのではなく彫りがある。

 鏡一狼は麻雀の歴もそこそこ長いので絵柄を触ればどの牌なのか分かるのだ。


 そして全員に渡した本。


 これには解説だけではなく役も載っている。

 当然、鏡一狼は全暗記だ。


 つまり誰がどのページを開いているのかで大まかにどの役を作ろうとしているのかが分かるのだ。

 意外にも厄介なのは千明の清一色だ。


 先述の通り様々な似た複合がある。早上がりを狙い違う役を作ろうとしている可能性もあるのだ。


 そんな鏡一狼が作ろうとしている役は七星無凭チーシンウーシー十三不塔シーサンプーターと似た麻雀ではローカル役の一つで他の似た役も牌はバラバラであることがほとんどである。


 ただ、この役なら他の四人の必要な牌を集めることが可能だ。


 更に。一番厄介な夜弥が狙うであろう牌は既にこちらにある。


 必ず刀飾は奪いに来るだろう。どんな手をつかってでも。


 そう。これはただの麻雀ではない。


 たった一つの牌の奪い合いなのだ。

 既にそれに気が付いている夜弥は鏡一狼を睨む。


「だから貴方って嫌いなのよ」

「それはありがとう。嫌いな人に嫌われるなんて最高だね」


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