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朔月の宵。天の浮き橋にて立つ
出会った瞬間は敵同士。
お互いに鮮明に映る色は真紅。
白き羽織を纏い持つは黒き長刀。
戦う理由は『自分が死にたくないから』。
何度も、何度も敵を倒し。何度も何度も死んだ。
だから刀を持つ。
だから敵に立ち向かう。
けれど彼の願いは飛んだ記憶と共に反転する。
何故、戦うのか。
『死にたくないから』
では、刀を置けばいい。
その望みは普通に生きて死ぬこと。
誰かの因果など関係なくとも。
一人の男の人生は常に戦場である。
死の間際。死にたくないと願い死ねる人生は何と幸せだろうと思う。
だからあの一滴は。
あの一滴の黄金の血は必要ないのだ。
When I'd like to live, you struggle, and what is bad? Shallow breathing. The smell of the death which smells. I don't say good-bye. Because this is a will.