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輪廻血戦 Golden Blood  作者: kisaragi
第九章 The Reverse Month
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第三夜 杯

 

 その時、一瞬だが妙なものを感じた。

 閃光のような、地響きにも似た感覚だった。


「……名人?」


 それは、試合の真っ最中の出来事だった。鏡一狼は石を置き、悩む振りをして扇子を開いて口元に当てる。



『何か、来たな』



 探ること数日。


 場所は分かったが、正体が分からなかった。来たのは二つ。一つ目を追うように二つ目が来たのだ。


 桜小路鏡一狼は高校を卒業して、囲碁の名人になった。名前は結局、変わらず桜小路鏡一狼としてあのマンションで気ままに生きている。


 若い名人ということでメディアに出ることも時々あった。


 時々、陰陽師としても働く。主に建築の土地柄を見たり、突然悪霊に巻き込まれた一般市民を助けたり、妖怪と何かを仲介したり、そんなことをプラマイゼロのバランスでやっていた。


 千明は随分、犬神でいることに慣れ、自分の力の使い方を極めているが、それでも感情的になると耳と尻尾が出た。


 そんな日々に、そのどれでもない珍しい休日に鏡一狼は千明にあることを頼んだ。

 彼はせっせと朝食を作っている。


「君の鼻で上杉英治を探せないかな?」

「出来なくはないっすけど、俺、その人のことあんま知らねぇからな」

「うん、微量な霊力の残りならあるんだけど」


 鏡一狼はリビングで詰碁をしながら千明に話しかける。


「国内にいるなら追跡可能です」

「お願いしていいかな?」

「了解っす」


 味噌汁の鍋に火をかけて、蓋をする。



 安らかな午前中、千明は一通りの家事を終えてエプロンを外し、鏡一狼と向き合うようにリビングに座った。


「で、その物は?」


 鏡一狼はポケットから三角の金属片で付いたネクタイピンを千明に渡す。千明はそれをしばらく眺めて、鏡一狼の持つ星型のネクタイピンと同じ機能を持つ物だと判断する。

「どこから、これを?」

「愁一から一時的に預かった。彼でも上杉の拠点の中心は分からないそうだ。日本にいることは間違いない」

「これ鏡一狼さんのとは違う意味でヤバそうなヤツですね」

「うん。彼が今、警察官で東京にいて、ケイ嬢と結婚しているのは間違いない。しかし探っても会えそうにはないんだ」

「おやま」

「それでは後々に困る。おそらく我々は今後、連携して何かをすることもあるだろうしね」

「じゃあ何で逃げられるんですか?」

「うーん。実は俺も上杉英治についてはさほど詳しくはない。愁一曰く、基本は関わらずにいたいそうだ。何故だかは愁一にも分からない」

「獅道先輩は?」

「とりあえず彼を恨んでもいないし殺す気もないと伝えてあるから好きにさせるべきかな、と言っていた」

「それにしたって一応パートナーならもう少し……」

「俺もそう思う」

「分かりました。探してみましょう」

「ああ。お節介であることは百も承知だが、俺も俺個人で少し知りたいことがあるんだ」

「はい」

 千明は頷いて再び瞳を開く。


 瞳は黄金色に輝き、ぴこんと耳と尻尾が出た。

 ネクタイピンから出る微量な霊力を感じて索敵に入る。


「確かに都内に数点、同じ霊力を感じます。一つは職場。一つは家でしょうか。それが拠点でしょう。正確な地点は分かりますが本人が何処にいるかまでは分かりません」

「千明の鼻でも分からないのか」

「まあ、一日だけで行動した場所だけなら数ヶ所ありますし。パターンは分かりますがそこのどこかまでは判断しかねます。そこは流石、術者。地獄の番人ですね」


 千明は索敵を終了する。


「どれか、可能性の高い場所に絞って行くのがいいかと」

「なるほど。了解した。ではとりあえず、一番濃い所に行ってみようか」

「分かりました。お運びしますよ」

「ああ、頼むよ」

 千明は犬神の足で高速で移動することが可能だ。


 鏡一狼なら運び慣れているし、完全に犬化しなくても国内ならば運べる。



 とん、と数分後に到着したのは都内のどこかのマンションの一室の前だった。


 濃い緑色の扉と金色のドアノブ。それぐらいしか特徴はない。部屋番号だけ分かっても仕方ないのだ。


「こういう所だろうとは思ったが」

「インターホン、押してみます?」

「そうだね」


 普通にインターホンを押すと、トタトタと音がするので住人はいるらしい。わざわざ、インターホンで確認せずに来たのかドアが直ぐに開いた。


「……」


 現れたのは金髪美女だった。鏡一狼は扉の開き方の時点で上杉英治ではないと理解していたが、ふむ、嫁の方が出たな、と思った。


「……」


 金髪美女、ケイはそのまま扉を閉めようとしている。

 千明は慌ててその扉の間に足を入れた。


「いやいや、何、勝手に無かったことにしてんだ!」

「ウチは訪問セールスの類いは一切禁止です! それは犯罪ですよ!」

「セールスじゃねぇよ!」


 面白かったので、鏡一狼はその金髪美女、ケイと千明のやり取りを傍観していたら、どうやら彼女はこちらに気が付いた。


「あら、貴方……」

「見覚えがあるなら助かるよ」

「何ですか? 今更、英治に文句でも?」

「いいや。聞きたいことがあるんだ。ただそれだけさ」

「……構いませんが」

「ただ単に、記憶を持たない術者として純粋に尋ねたいことが幾つかあるんだ」

「それは貴方の深い過去までは英治にも分かりません」

「そういうことではないよ。とりあえず、文句でも、怒りでも敵意でもない」

「……分かりました。どうぞ。今は仕事でいませんけど」


 彼女は訪問者を招くことにした。


 確かに青年は随分穏やかな様子でこちらに対して何かしらの敵意があるようには見えなかった。

「中々、いい部屋ではないか」

「そうですか? 必要な物しかないですよ」

「ちゃんと片付いているし」

「そりゃあ私は常に家にいて家事をするということを選択しましたから当然です」

「そうかい」


 どうやらケイに感心はほとんどないのか、さらりと返事をされる。お茶でも淹れようとケトルをセットする。


「何か希望はありますか?」

「普通のお茶で構わないよ。コーヒーや紅茶は千明なら飲むだろう」

「偏食だとは伺いましたが、何か茶菓子もお持ちしますよ」

「おや、知っていたのか。普通に菓子類は食べるからさほど気は使わなくていい」

「そうですか。ではそのように。今日はそれほど遅くはならないとは思いますが」

「それは良かった。忙しい職務だろうから」

 鏡一狼はお茶を飲みながら、話すべきことを思案していた。


 実は前々から英治には会っておきたかったのだが、気が付いたらこんなに時が経っていた。それぐらい本来上司と呼ぶべき存在である英治に対して依存していないということだ。それは鏡一狼だけではなく、他の多くの魂送師に適応される。


 それは良いことなのだろう。基本概念さえ変わらなければ。しかし、何故、彼は離れることを選んだのか。


 それは一つ、気になる所だった。


「貴方は随分、穏やかになりましたね。私で分かることならお答えしますよ」

「まぁね。お陰様で好きにやらせて貰っているよ」

「それは一つ、英治が貴方を信頼しているからでしょう」

「……彼が?」


 ケイはダイニングの正面に座って頷いた。


「そうです。本来なら彼は貴方と組んだ愁一に殺される気でいたぐらいです。結果、目論みは外れてしまいました」

「それは無理だったろう。愁一は思った以上に温厚な性格をしている。俺が出会った時もそうだった」

「それがもう一つの目的だったのですが……」

「もう一つ?」

「愁一さんを素の姿に戻すこと。これは成功と言って良いでしょう」


「俺はあんま関係無さそうだし、茶菓子でも食べてます」


 と、千明はテーブルの上に置かれた煎餅類を吟味する。

 興味のない話ではないが、千明が何かを言うべき内容でもない。


「そうしていていいよ。しかし……そう考えると、上杉英治は随分愁一に罪悪感を感じていたんだな」

「それもありますが、それだけではありません」

「……そうなのか?」

「ええ。彼は千年以上生きて消耗しているのです。精神的に」

「……なるほど。愁一の力なら上杉英治でも殺せるかもしれないな」

「彼は他の魂送師の記憶をリセットする、という方法を選びました。希に記憶を持つものもいますが、やはり精神的な負担は大きいようです」

「月臣のことだね?」


 ケイは首肯く。


「そして貴方の記憶はない。知識として、貴方に脈々と受け継がれはしましたが。それは記憶ではありません。記録です。……と、英治が言っていました」

「ああ。俺は今まで、俺が築いたもの全てを一族が伝承していた。だから、俺は俺でいることが出来る。それは感謝しているよ」

「貴方は上杉を除けば次に優秀な魂送師です。月臣も肩を並べるので比較は出来ませんが」

「彼との力の範囲は近いからね。俺は星。彼は月。月を惑星と捉えるなら星になる。結果、彼は月の光を。俺は物理的な惑星そのものという範囲になったが。だから俺の本来の支配下に陰陽はない。陰陽師なのにね。だから廃れたのだろう。前に月臣とそんな話をしてね」

「仲が良いのですか?」

「悪くはないよ。俺、君、月臣は同世代だ。現代で見れば」

「ああ! そういえば、そうでした。時々忘れてしまいます。それぐらい皆さん個性的になりましたね」

「そうだろうな。上杉は形は管理者であるがほとんど干渉していない」


「その理由が知りたいのですね?」


「そうだよ」


 鏡一狼は首肯く。そう。別に自分自身の事が知りたかったのではない。ただどうしても気になっている事があるのだ。


「それは私にも分かりません。私も彼と出会った頃の記憶は失ってしまいました」

「それでも、またこうして出会い、恋し、一緒にいるのだから素晴らしい美談じゃないか」

「運命と言わない所が貴方らしいですね」

「そんな簡単なものじゃないだろう」


 その時、ガチャリという音が玄関から聞こえた。ただ会話していただけだが案外時間が経っていたらしい。予測通り、上杉英治がひょっこり顔を覗かせ、そのまま去ろうとした。


「ちょっと! 逃げないで下さいよ!」

「いやいや、どう考えても嫌だ!」


 ケイがその腕を掴んで引っ張る。おそらくだが、英治はここに来るまでに鏡一狼がいるということを知っていたのだろう。


「そう逃げなくとも。君に用があるんだ」

「その用が怖いんですけど、名人」

「そう。では、今ここで言ってしまおうか。別にケイ嬢に聞かれてもこちらは構わないが」


「アンタ……」


 英治の瞳が細まる。


「何、何ですか?」

「……ケイ、悪いけど外してくれ」

「貴方、そうやってまた!」

「……今回ばかりは、頼む」


 珍しく英治は素直に頭を下げた。

 様子から察するに、緊迫した話なのだろう。


「……仕方ないですね。貴方、そういう時は本当に知られたくない内容なのでしょう。隣の部屋にいます」


 ケイはそう言ってパタンと扉を閉めた。英治は鏡一狼と向き合う。


「で、何の用ですか?」

「そう怖い顔をしなくても」


 千明はただ何となく聞いていただけだったが、もしやこれは思った以上に緊迫した状態らしい。鏡一狼の瞳は英治を捉えてそして言った。


「君の強制遮断力が弱まっている原因が知りたい」

「強制遮断力……?」


 聞き慣れない言葉に千明は首を傾げる。


「彼が持つ、魂送師の起源とも呼べる力だ。それはこの世界を構成していると共に、他の世界を遮断する力」


「……何故、それを知っている」

「君がケイ嬢に教えたんだろう? 俺の一族の記録に残っていた。だから知っている」

「……あの、意味が分かりませんが?」


 千明の言葉に鏡一狼は微笑み、腕を組む。


「簡単に言うと、この世界以外にあり得る全ての可能性を遮断する力だ。ファンタジーはファンタジーであり、存在する世界はこの世界以外にあり得ないということだ」

「それって普通じゃないんすか?」

「可能性だけなら本当は無限にあるのさ。この世界以外の世界。違う世界線、というのは」


 分かったような。分からないような。という顔をしている千明を見て鏡一狼は続ける。


「実際はあった様だ。しかし、それは本来ならば絶対に知られてはならないものだ。その鍵が開いた。今までずっと閉ざされていたのだから、そこに何者かの意図があったかどうかが問題だ。様子を見ても愁一から聞いた話を吟味しても上杉が態々そんなことをするとは考え難い」


「……お見事。良くこの短期間でそこまで探れましたね」

「これでも一応術者だ」


 鏡一狼の言葉を聞いて英治は諦めて椅子に座った。


 確かに愁一は言っていた。『もしかしたら鏡一狼君って今まで会った魂送師の中で一番賢い人かも。月臣君も確かに賢いんだけど……何て言うか彼は必要性だけど鏡一狼君は才能性を感じるな』という彼の言葉を思い出した。


「つまり全てを知った上で俺に問いたい事があると」

「ああ」


 英治は溜息を吐く。そんな男が知りたいこと、だって。それは考えただけで無駄だと分かる。


「……面倒っすけど。答えられるなら答えますよ」


 仕方なく英治は頭を掻きながらそう言った。


「君も随分、柔軟になった。ケイ嬢のおかげだろうか?」

「おかげっつうか、せいつうか……」

「まぁ君自身が協力的なら助かるよ。で、どうして君の遮断力が弱まっているんだ?」

「それは一つ。獅道先輩の力が強くなったからです」

「ふむ」

「獅道先輩の力、あの刀の力の起源は遮断力です。その根本は俺にあります。使い方が違うだけです。その目の前にいる異端を斬るか」

「しかしそれは想定内だろう。獅道愁一が獅道愁一であることを取り戻せばいずれ起こることだ」

「……それは」


 英治は口つぐむ。


「俺が知りたいのは、君に外部アクセスがあったかどうか、ということだ」


「……なんか、もう本当に知られたくない内容なんすけど」


 そして項垂れる。


「諦めろ。俺は大筋理解している。今回の漂流物は偶然来た者ではない。君の力が弱まっているから鍵が壊せたのさ」

「そこまで理解しているんですね。じゃあ、遠慮なく言えば可能性はあります。まだ検討中の段階ですが、上杉全員のプログラムをスキャンしても今のところ欠陥はありません。既にそのスキャン機能すら破壊されているとなると内部感知は不可能です」


「どーいうお話で?」


「上杉の力が弱まっているから、外から何者かが進入して来たんだ」

「外から……外って」

「そう。異世界の人間だ」

「異世界!!」


 聞いて千明は瞳を輝かせる。ファンタジーだと思っていた異世界の姿が浮かぶ。


「その異世界人は多分だが処理可能だ。大変だとは思うが」

「えー、処理しちゃうんすか?」

「今まで存在しなかったものを容認するのは面倒だぞ」

「……その通りっすね」


 英治は同意する。


「内部感知が不可能となれば、君に何かしら問題が起こらないと何も分からないな。そこまで来るとほぼ危機的状況だろう」

「鏡一狼さんがどうにか出来ないんですか?」

「無理だな。俺の索敵機能はそこまで優秀ではない。本来存在するべきかどうか分からない微々たる欠損の調査が可能な程には。しかも上杉は一人ではない」

「鏡一狼さん自体の力って結構大雑把っすよね」

「そうだよ。何かを圧縮、解凍する。星を爆発させる。落とす。とても大雑把さ。繊細作業には不向きだ」

「えーと? 狩師にはいないんですか?」

「居なくはないが……負担が大き過ぎるだろう。君と同じく最近自分が人間ではないと知った者だ」

「へぇー」

「……何か、アンタと話してると神様と話してる気分になるぜ」

「それめっちゃ分かる」


「和んでいる場合ではないんだがな」


「その問いに対して結論を言うとそこまで焦ることはありません」

「ほう」

「確かに、俺の強制遮断力は弱まっています。何か問題が起こることもあるでしょう。しかし同時に獅道先輩の力は強くなっている。想定内ではあったが自己を取り戻した先輩の力は俺から流れているものだけではない。先輩自身の力もある。今はまだそれで対処出来るかと」

「それが上杉の解答か」

「ええ。内部感情を全て弾いて検証した結果です。そこに上杉の意思はない」

「自殺行為ではないと君は同時に認めるんだな?」

「そうです。俺は獅道先輩に許され、そして死を認められた。数千年と数十年先か。考えれば微々たる差ではありません。それぐらいの余生を過ごすのも悪くはないと最近は思ってましたから」

「そうか……」

「貴方の問の答えはこれで良いでしょうか?」

「おおむね」

「……おおむね」


「二つの可能性は否定された。しかし同時に俺が最も知りたい可能性が残っている」

「それは……」

「刀飾が君に進入している、という可能性だ」


 その言葉に英治は瞳を見開いた。


「刀飾……?」

「可能性はゼロではない。何故なら一度、上杉の内部に刀飾の末端が進入しているからだ。何時だか分かるか?」


 問われ、英治は速急に考えた。


 そして一つの可能性を見出だす。


「まさか……兄貴が刀飾の手下を調査した時か」

「その時が一番可能性が高い。上杉から見れば刀飾の調査、だったのだろうが?」


「はい! 良く分からないです!」


「素直で宜しい。千明にも分かるように言うと、上杉の長男、上杉尋也は一度刀飾の末端を調査するために脳内部に進入している」

「確か音波? を操るとか?」

「そうだ。その一部に刀飾の本体さえあれば逆進入された可能性は否定出来ない。刀飾は何せ術には詳しい。それぐらいの下準備はしていて当然だ」

「良くそこまで……」

「俺が重度の刀飾不信者で良かったな」


 鏡一狼は微笑み言った。


「じゃあ、その兄ちゃんだけ調べれば?」

「そう簡単には行くまい。既に対象を変えている可能性の方が高い。もう何ヵ月と経っているんだぞ?」

「あくまで貴方はその可能性を追及すると」


「そうだ。それが俺の役割だ。だからそれまで……」

「それまで……?」

「出来る限り君の側にいるから。愁一にはどうにか説明しておくんだな」


「……はぁあああ!?!?」


「因みに、尋也さんには鳩里先生が、寧斗さんには月臣が、公貴さんには朝倉さんが……と言った具合に全員にそれぞれ監視がいるから」


「ええぇえ……その、チェンジで!」


 それならせめてこの男だけは勘弁して欲しかった。


「無理だ。上杉の能力と同等の力と頭脳を持つ者に限られている」

「……マジかよ。大体、勘弁してくれよ……上杉なんかにハッキングしてどうするって……」

「どうやら思考まで鈍っているらしいな。考えうる可能性は一つ。君達魂送師の永遠性。そして我々の血統。それら全てを手中に納める事が刀飾の本懐だ」

「……なん、」

「そしてそれが可能な瞬間が一度だけある。それがマリリン・セグシオン・フォンベルンの結婚式だ。君も、義輝さんも結婚式は行わなかったからな」

「ちょっと待って下さい、……」

「結婚式? そういや、聞いたことあるな……何か裏祝日みたいになるって誰かが言っていたような……」

「そうだよ。その日だけは全魂送師はあの国に集合する。そして扉が開くのさ」


「扉?」


「詳しくは知らないが。誰か一人の願いを叶えるとか、そんな話だったな」

「あー……もう嫌だ。帰りたい」

「ここは君の家だろう」

「大丈夫ですかー? この人、こんなもんじゃないですよ?」


 と、千明にまで心配されて英治は等々思考することを止めた。


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