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Episode43 Oh my dead -屍闘-

GAaaaaaaaッ!!


 棍棒と呼ぶにはあまりにも粗い造りの丸太を振り回す“洞巨人(トロール)

 遮二無二振り回されるそれをかいくぐり、四体の“動屍人リビングデッド”達が一斉に突撃銃(アサルトライフル)を構える。


標準合わせ(ターゲット・ロック)斉射(ファイア)!」


「チームZ」の一人がそう号令を発すると“洞巨人(トロール)”を取り囲んでいた“動屍人(リビングデッド)”たちが一斉に発砲する。


Gyaaaaaaa!!


 全身に被弾した“洞巨人(トロール)”が苦鳴を上げる。


打ち方止め(ストップ)!」


 ひとしきり発砲した後、再度号令を受けたチームZの面々が斉射を止める。

 立ち込める硝煙が、“洞巨人(トロール)”の姿を覆い隠す。


「…仕留めた?」

「6.8mm口径弾でフルボッコだよ?」

「普通ならミンチ」

「うぇ、マズそう」


 突撃銃(アサルトライフル)は、短機関銃(サブマシンガン)小銃(ライフル)の中間の威力の弾を発射する、短く取り回しが効く小型の銃だ。

 また、単射と連射の切り替え射撃が可能な銃器でもある。

 彼女達が使用する6.8mm口径弾は、7.62mmよりも口径は小さいが範囲、精度および致死性は7.62mmを上回っており、耐久性や携行性も高い。

 加えて、錬金術(アルケミー)に造詣の深いメアリー(透明人間(インビジブル))によって強化された弾丸は、人間たちが使用するそれをはるかに凌駕する。

 並みの怪物なら瞬殺できるはずだ。

 しかし…


GOooooo…!!


 硝煙をかき分け、巨大な丸太が振るわれた。

 凄まじい風鳴り音が巻き起こり、地を揺るがす。

 咄嗟に身をかわすチームZの面々だったが、一人が巻き込まれた。

 鈍い衝撃音が響き渡り、巻き込まれた隊員が人形のように跳ね飛ばされる。

 それだけでなく、あまりの威力で身体が空中で破裂し、周囲に血の花が咲き乱れた。

 無残な最期を遂げた隊員の屍を踏み潰し“洞巨人(トロール)”が姿を現す。

 全身に浴びた弾丸のせいで、肉体の一部はボロボロだ。

 が、持ち前の再生能力がその傷を徐々に塞いでいた。

 チームZの面々が呆けたようになる。

 それを見ていた頼都(らいと)鬼火南瓜ジャック・オー・ランタン)が脇から補足した。


「言い忘れていたが、連中は妖精郷に棲む純粋な“洞巨人(トロール)”だ。現世(こっち)にいる半端者とは別物だぞ」


「うっそ、マジで」

「アレ食らって生きてるなんて、妖精郷チート過ぎん?」

「早く言ってよ、もう」


 途端にブーブー言い始める“動屍人リビングデッド”たち。

 そのうちの一人が、ハッと何かに気付いた風に言った。


「待って。それより大事なことがある」


 それに残る二人が顔を見合わせた。


「『ロの三番』が使えなくなった」


 深刻な顔でそういう一人に、残る二人がポンと手を打つ。

 ちなみに「ロの三番」とは、先程“洞巨人(トロール)”の一撃を受けてグズグズになった“動屍人リビングデッド”のコードネームである。


「…ということは?」

「まさか?」

「嘘でしょ?」


 固まる三人。


「「「ノルマ増えるじゃん!」」」


「お前らな…」


 軽く頭を押さえる頼都。


「くたばった仲間に弔いの気持ちくらいねぇのか?」


 すると、三人は顔を見合わせると、そろって敬礼をした。


「各員『ロの三番』に黙とう!」


 グシャッ!!!


 その隙だらけの三人に飛んできた“洞巨人(トロール)”の棍棒が、一人の顔面をもろに直撃する。


「「ハの五番ッ!!!」」


 顔面が潰れたトマトのようになって痙攣(けいれん)する仲間を見て、残った二人が叫ぶ。


「貴様、よくもやったな!」

「これで残業確定じゃないか!」


 先程までのぬぼ~っとした雰囲気はどこへやら。

 怒りを剥き出しにした二人の“動屍人リビングデッド”たちが、アイコンタクトを交わして“洞巨人(トロール)”の左右に展開する。


「『イの十番』!とりあえず、奴の注意を引きつけろ!」

「やだ!」

「何で!?」

「何か『ニの六番(アンタ)』の方が活躍しそうな予感がする!」

「はぁ!?」

「とーせ、隊長(キャプテン)が見てるから、イイとこ見せてボーナスはずんでもうらおうって腹でしょ!」

「んなわけ…(あるけど)」

「とにかくあたしが前に出る!」


 そう言うとイの十番と呼ばれた“動屍人リビングデッド”が“洞巨人(トロール)”に向けて突進する。


「くたばれ!」


 突撃銃(アサルトライフル)を連射モードに切り替えるイの十番。

 雨あられと弾丸を浴びせられた“洞巨人(トロール)”の身体が再びボロボロになっていく。

 が、それでも即死には至らず、大きく棍棒を振りかぶる“洞巨人(トロール)


GUgaaaaaaaッ!


 驚異的な再生能力を盾に、“洞巨人(トロール)”が渾身の一撃で棍棒を振り下ろす。

 凄まじい土煙が上がる中、イの十番は銃を乱射しながら振り下ろされた“洞巨人(トロール)”の腕に飛び乗った。

 そのまま腕から肩へと駆け上がる。


「丈夫なお肌でうらやましいけど内側はどうかな…っと!」


 腰に携えていた手榴弾のピンを引き抜くイの十番。

 同時に“洞巨人(トロール)”の顔面に蹴りを入れながら、開かれた上顎と下顎に足を掛け、強引にこじ開ける。


「ほーら、あまーい手榴弾(パイナップル)だ。よく味わいな!」


 そう言いながら、イの十番は手にした手榴弾を“洞巨人(トロール)”の口腔に放り込んだ。


GUga…ッ!?


「よし、脱出!とうっ!」


 目を白黒させる“洞巨人(トロール)”を尻目に、飛び降りて離脱しようとするイの一番。

 しかし、空中でその身体を“洞巨人(トロール)”の両腕が捕らえた。


「うげっ!?」


 奇妙な悲鳴を上げるイの一番を持ち上げ“洞巨人(トロール)”が大きく口を開く。

 イの一番を頭から貪り食らおうというのだろう。

 それを察したイの一番は、ゲンナリとしながら笑った。


「…Oh(ああ) my(死ん) dead(だわ)


 ちゅどーーーーーーーーん!!!


 起爆時間に達した手榴弾が炸裂し“洞巨人(トロール)”の上半身が派手に吹き飛ぶ。

 無論、イの一番も木っ端微塵だ。

 戦友の冗談みたいな最期に、一人だけ残されたニの六番は、頼都に振り返った。


「…自爆の場合も敬礼とかしといた方がいいんすかね?」


 頼都は溜息を吐いて言った。


「任せる」

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