LinK6
少しずつ、忘れていく。
私の名前も。
誕生日も。
私は色んな世界で生き、死に、また生き、死ぬ。
何回死んだか分かりません。
ただわかるのは私は、ひとりだったこと。
加賀くんがいなくなった日、私がいなくなれば良かったって、何度も、思いました。
何度死んでも私はきっとまた生き返る。
加賀くんは戻らない。
加賀くんは優しいひとでした。
こんなわたしにも話しかけてくれました。
(零菜さんってクールだから、きっと戦況を冷静に見れるよ!でーも!もっと皆と話そうぜ!)
この世界は、きっと、優しい人が、いなくなる、
なんで、加賀くんが、
いつかの記憶で、誰かが言った。
「その人が死ぬのも生きるのも、そういう運命だったんだよ」
なら、私が代われば、運命は変わったのでしょうか。
誰にも分からない。けど、宮本くんに殴られた頬より、加賀くんに対して、酷いことを、思った、気がした。
日曜日。
ショッピングモールの前で待ち合わせをしました。
四ノ宮陽向さんと、藤原萌美さんと。
「おーい!零菜ちゃーん!」
「またせちゃってごめんね、」
2人は私服だが、私は制服しか持ってないから制服だ。
「よし!行こう!」
「はわわ待って〜!」
今日はでーとの日です。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「「きょだい…ぱふぇ…」」
「そ!ショッピングモールの中にあるんだけどさ、3人で行かない?」
60分で食べきれば半額よ!
と、藤原さんは明るい声で、いってくれた。
四ノ宮さんも、一緒に行こうと、誘ってくれた。
胸が、ぽかぽかとあたたかかった。
その日の帰り道、しゃがみ込んでる女性を助けました。
買い物袋の中には沢山の食材が入っていました。
「ありがとうね、って、零菜ちゃん?」
「亜希、さん?」
亜希さんの旦那さんはお医者様で、最近、旦那さんの両親と一緒に住みはじめたらしい?旦那さんのお母さんが代々続く駄菓子屋さんを経営してて、私が縁あって、そこで働かせてもらっているのだ。
「良かったらお茶でも飲んでいって、」
お家の近くまで行くと、宮本くんがいました。
亜希さんは私達を家にあげて、お茶を出してくれました。
でも、謝るタイミングが分からず視線を下げていると、ふいに、彼が話しだしました。
「…さっきは、悪かった。なぐるなんて、最低だよな、俺」
「いえ、私も、酷いことを、言いましたから。すみませんでした、」
「俺さ、アンダーロイドの友達亡くしてさ、勝手に重ねてたんだよな、」
大事なものは失ってきた。
これ以上大事なものは失いたくないと。
「二人とも、ご飯食べていくでしょ?悪いんだけど手伝ってくれない?」
亜希さんのおなかはおおきくて、もう少しで生まれるらしい。
すると宮本くんが亜希さんのお腹をぽんと、触った。
「元気に、生まれてこいよ」
亜希さんは私にも触らせてくれた。
あたたかくて、やわらかい。命に、触れた瞬間、胸がいっぱいになって。目頭があつくなった。
「生まれたら抱っこ、してあげてね、」
亜希さんは優しく笑って、私の頭を撫でてくれました。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
パフェを待ってる途中、色んな話をしました。
四ノ宮さんは、あまり苗字で呼ばれるのが好きじゃないらしく、ヒナって呼んでねと、藤原さんはメグって呼んでと、言われました。
メグさんは二言目には拓人、拓人、で。少し拓人さんの印象が変わりました。
パフェははじめて食べました。
甘くて、冷たくて、すぐお腹がいっぱいになりましたが、体中が、幸せで満たされていくようでした。
食べ終わったあとに、ぷりくらを撮ろうと言われました。
プリントされた写真の中には、私がいました。
メグさんとヒナさんは、またこよーね!と言ってくれました。
私の中で、また1つ何かが増えたのと同時に何かが消えました。
帰り道、携帯が鳴りました。
アンダーロイドが暴走していること、学校の近くにいる生徒は至急援護に向かってほしいとの連絡でした。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「なんだよこいつ…!」
戦っている生徒が、傷つけていくたび、アンダーロイドは何度も再生しました。
近づいて、胸にあるコアを破壊しないと、倒せない。
ただ、薄いけど、バリアのような何かに守られていました。
生身の人間だと近づくのも精一杯です。が、
「わたしが、あのコアを破壊します。」
「何言ってんだ!」
「そんな事したら、零菜ちゃんが…!」
私は、生まれて、こなければ、良かったのです。
だから、死ぬことなんて怖くない、はずなのに。
「一度撃って、バリアのようなものを破壊してください、私はそれが壊れた瞬間を狙います」
「やめろ!」
「他に方法はないんです!大丈夫です。私は、人間じゃありませんから」
「違う!お前は人間だ!」
「そうよ!零菜ちゃんは人間よ!」
少しずつ、だけど、忘れていく。
同じように私に生きてと、言ってくれた人の顔すら覚えていない。
私は、この世界で生きては。いけない。
私は、必要な人間じゃ、ないから。
「泉ちゃん先生と亜希さんの赤ん坊抱くんだろ!」
「私は、」
本当は、
「お前が大事なんだよ!だから行くな!零菜!」
本当の名前は、
誰かが撃った。
その瞬間、上空まであげて、爆発させた。
爆発する瞬間、私は、目を閉じた。
「思い出しました。私の、本当の名前はー…」
おぎゃぁ!おぎゃぁ!と
赤ん坊の泣く声がする。
「亜希…!ありがとう…!」
「ふふ、やーねぇ、お父さんカッコイイ顔が台無しよ」
「亜希さん、お疲れ様、1人産むのも大変なのに双子だなんて、」
「ありがとうございます、大変でしたけど、幸せですよ、お義母さん」
「…名前は決めてるのか?」
「もちろん!男の子なら、智。さとしだよ。」
「女の子は?」
「決めてませんが、私の亜希と泉さんから一文字ずつとって、そして、沢山の人からあいされるように、愛。あいはどうでしょう」
「いい名前ね」
父と母の腕の中で、こどもたちは、祝福された。
∴あいをしらなかった。あいされたかった。あいをしった。