LinK26
もう一度だけ、一目でいいから。会いたかった。
私には美しく聡明な妻と向日葵のように笑う愛おしい娘がいた。
幸せだった。
研究も上手くいっていた、はずだった。
ざぁざぁと降りしきる雨の音。
ざわざわと集まる人だかり。
そこで見たのはーー……
娘を庇うように倒れた妻と腕の中の娘。
その時、ふと思ったのだ。
いずれ消えてなくなるものを作って何になる。
幸せは一瞬で消え去ったのだ。
それならば一層の事……
「まだ生きてます!!助かるかもしれない!」
それならばー……
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「あぁ…また会えるなんて嬉しいなぁ…」
「っ!私は!あなたの娘じゃ、ない!目を醒ましてください!三浦さん!!」
「さぁ、家に帰ろう……母さんが待ってる……」
「行かせるかっ!!」
ひゅっと、風を切る音がした。
「山吹さん…!?」
「山吹っ……!?」
「ここからは私も加勢する!」
「はいっ!」
「おう!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「どこにいるんだろ……」
こつこつと二人分歩く音が響く。薄暗い。廊下。
「っ……!主、何か聞こえます、」
ドアの隙間から覗いて見たのは……
人間と機械の融合実験。
その中に彼女はいた。
「ナツ、行こう、助けなきゃ、」
「しかし主、策は…、」
「そんなの無いよ、」
「なっ…、」
「本当はね、怖いよ、死ぬかもしれないし、痛い思いもするかもしれないし、でも、お兄ちゃんはそんな中で戦ってる。それにね、私、なおちゃんと、ナツ、貴方がいれば怖くないよ、」
真っ直ぐな少女の眼差し。
迷いはなかった。
「行くよ、」
「はっ、」
「なおちゃん!!」
「美月……!?何で来たの!!」
「なおちゃんが助けてって言ったから!助けに来たんだよ!」
「侵入者、取り押さえます」
「美月逃げてっ……!」
襲いかかろうとした影は手前で倒れた。
「ナツ!!」
「主には触れさせん!!」
まるで踴っているかのように紅い髪がなびいて。
ほぼほぼアンドロイドは倒したようだ。
だが、
「このっ……!」
「主っ……!」
「美月っ……!」
1体だけ、美月に襲いかかろうとした。瞬間。
「てやあああっ!」
めきょ、ごきょ、ぐきゃ。
この場に似つかわしくない可愛らしい声と裏腹にえげつない音がした。
二人はただただ呆然としていた。
「うーん、ナツみたいに格好良く出来なかったや、でも、なおちゃんが無事だし、逃げよう!」
いつものぽやぽやとした少女ではなく、しっかりした少女が、目の前にいた。
∴深夜二時のメリーゴーラウンド